ビットコイン最高値を動かした“クジラ”──市場参入する新たなクジラの正体

ビットコインが11月末に最高値を更新した時、「クジラ」と呼ばれる大口保有者はどう価格に影響を及ぼしたのか?暗号資産(仮想通貨)取引所オーケーエックス(OKEx)が発表したデータは、一つの仮説を提示した。

データによると、ビットコインが上昇している間、クジラと機関投資家はわずかな下落局面を巧みに利用してビットコインを購入、価格が反発すればスピーディにある程度の利益確定売りに動いた。一方、大部分の個人投資家は、最高値を更新する直前の下落局面で、パニック売りを行い、その後の価格上昇を傍観した。

クジラと個人投資家は相反

OKExでの8月から11月の取引データは、11月のビットコイン高騰時、ビットコインを大量保有している投資家、いわゆる“クジラ”と(おそらく)機関投資家が、ビットコインを売却して利益を得ていたことを示している。

個人投資家などの小口投資家は11月、高値圏にもかかわらず、9月、10月と同じようにビットコインを買い続けた(OKExとブロックチェーンデータ会社Kaikoのレポート)。

保有高別のビットコインの購買行動(8〜11月)
出典:OKEx

注目すべきは、ビットコインが最高値に近づいた11月下旬、OKExのさまざまなユーザーの取引状況を見ると、“クジラ”や機関投資家が11月26日の下落局面でビットコインを購入していた一方、個人投資家などの小口投資家はビットコインをパニック売りしていたことだ。

保有高別のビットコインの購買行動(11月最終週)
出典:OKEx

レポートのデータは、大口保有者は「安く買い、高く売るビジネス」をしているが、個人投資家のようにビットコインを上昇局面で購入することには必ずしも興味がないことを示している。

「最終的には、クジラは市場を動かしてパニックに陥った個人投資家を振り落とし、比較的安価になったビットコインを購入するチャンスを利用しようとしている。個人投資家、そして個人投資家とクジラの中間にいるすべての投資家にとって、選択肢は2つだろう。流れに乗るか、流れに逆らうかだ」」とOKExはリリースで述べた。

別の見方

しかし、暗号資産分析企業クリプトクワント(CryptoQuant)のデータは、やや異なる見方を示している。2020年を通じて、“クジラ”が「下落局面を買う」機会を逃すことはほとんどなかった。

クリプトクワントの1つの結論は、大口投資家はビットコインの大きな価格下落を防いだきたのかもしれない。価格上昇を引き起こす代わりに、高値でビットコインを売却することで利益を得た可能性があるというものだ。

取引所へのステーブルコインの流入量とビットコイン価格(1月〜5月)
「btfd」は「buy the dip」の意味
出典:CryptoQuant
取引所へのステーブルコインの流入量とビットコイン価格(9月〜12月)
出典:CryptoQuant

新たな機関投資家が登場

2020年、暗号資産には2タイプの機関投資家が存在していたのかもしれない。1つは暗号資産ネイティブの機関投資家、もう1つはマイクロストラテジー(MicroStrategy)やマスミューチュアル(MassMutual)生命保険のような企業や伝統的な金融市場の機関投資家だ。

アナリストによると、後者は意図的にビットコインを売って、価格下落を引き起こす可能性は低いという。

伝統的な大手機関投資家は「こうしたことを示すような売りポジションは開示していない」と暗号資産(仮想通貨)分析企業、トレードブロック(TradeBlock)のジョン・トダロ(John Todaro)氏は述べ、マイクロストラテジーとグレースケール(Grayscale)を例にあげた。両社ともビットコインのセルサイドになったことはない。

トダロ氏によると、今年に見られたビットコインの価格上昇の大きな要因は、機関投資家の市場参入だが、直近の価格高騰の直接的な理由ではないという。機関投資家は、市場に与える影響を最小限に抑えるよう配慮し、取引所を使わず、店頭取引(OTC)でビットコインを取引することが多い。

店頭取引は「参加者の増加とともに市場が拡大し、売り手と買い手を直接マッチングし、市場への影響を小さくできるようになった」とトダロ氏は述べた。

一方、小規模な機関投資家やクジラは店頭取引を使っておらず、取引所を利用することが多いという。そのため、価格を大きく動かす大量注文をすることがあると、同氏は言う。

従来のクジラが小魚になる

さらに、より規模の大きな機関投資家が市場に参入するにつれ、小規模な機関投資家やクジラは、相対的により小規模な市場参加者になっているとトダロ氏は述べた。

同様に、伝統的な機関投資家は「ビットコインはデジタルゴールド」というストーリーに基づいてビットコインを購入しているため、市場に意図的に影響を与える可能性は低い」とビットワイズ・アセット・マネジメント(Bitwise Asset Management)のマシュー・ホーガン(Matthew Hougan)氏も述べた。

つまり、伝統的な機関投資家が、市場の下落局面でビットコインを売却する可能性は低い。

「彼らは売るべきものを持っていないから、下落局面でも売らない。マクロ環境および暗号資産が持っている大きな上昇の可能性を考えると、市場でポジションを確立する必要があると感じている」とホーガン氏は語った。

翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Data indicates bitcoin “whales” have been making profits throughout 2020.(Bryan Goff/Unsplash)
原文:Bitcoin Whales Buy Low, Sell High; Retail Investors Chase Rallies: Data