【イベントレポート】暗号資産は2021年以降にどう変わるのか?──コインチェック、LINEグループ、クラーケンの代表が議論【btokyo ONLINE 2021】

約3,000人が参加した国内最大級のブロックチェーンカンファレンス「btokyo ONLINE 2021」(主催:N.Avenue、メディアパートナー:coindesk JAPAN)が2021年3月1・2日の2日間で開催。

2日目の「『暗号資産』市場の大変動──デジタル資産のフロンティアはどこへ向かうのか?」に、Kraken Japan代表の千野剛司氏、コインチェック株式会社 代表取締役社長の蓮尾聡氏、LVC株式会社 代表取締役社長CEOの林仁奎(イム インギュ)氏が登壇。モデレーターはcoindesk JAPAN編集長の佐藤茂氏が務めた。

なお、本セッションを含む同カンファレンスのアーカイブ動画の第三弾が公開中。申し込み登録により視聴は無料となる。

過去3年間における暗号資産市場の変化は?

本セッションは、モデレーターのcoindesk JAPANの佐藤氏が質問を登壇者へ投げかけながら、暗号資産についてのさまざまな議論が行われた。最初の話題は、過去3年間における暗号資産市場の変化だ。2017年12月に2万ドルまで上昇したビットコインの価格は2019年に4000ドルを下回る水準まで下落し、「暗号資産の冬の時代(クリプト・ウィンター)」と呼ばれた。しかし、2020年11月頃からビットコインの価格は再び6万ドルまで急騰し、現在に至る。

佐藤氏が2017年の相場と現在の相場で異なるのはどういった点かと聞くと、Kraken Japanの千野氏は「(暗号資産を中心とする投資ファンドを運用する米投資会社)グレイスケールといった運用会社だけではなく、北米では保険会社や、電気自動車のテスラといった一般の事業法人がビットコインを購入するといった報道があるほどに広がっている」と述べた。

Kraken Japan代表の千野剛司氏

続けて「アジアで1億7000万人、国内で8600万人のユーザーを抱えるLINE傘下のLVCは、暗号資産取引サービスBITMAX(ビット・マックス)を運営するが、国内投資家の動きは変わってきているか」と佐藤氏が聞くと、イム氏は「BITMAXはLINE内で気軽に接続できるサービスを提供しているため、投資未経験者が約48%、暗号資産取引の未経験者が60%、若い世代が全体の40%となっている」と自社のデータを紹介。規制環境の整備からレバレッジ取引が減り現物取引が増えており、投機から投資へと動いているのではないかと見解を述べた。

(写真右から)LVC株式会社 代表取締役社長CEOの林仁奎(イム インギュ)氏、coindesk JAPAN編集長の佐藤茂氏

次に、佐藤氏が「年齢別など投資家の特徴に変化はあるか」と聞くと、コインチェックの蓮尾氏は「実は3年経っても20代、30代の若い年齢層がメインの投資家になっていることは変わらない。半分は3年前に口座をつくって取引を始めた方で、もう半分がこの1年に口座を開設された方。ただ取引のボリュームはピーク時で3年前の4、5倍のスケールになった」と現状を解説した。

2021年以降、暗号資産はどう変わっていくのか?

セッションの中盤では、2021年以降の暗号資産がどう変わっていくのかが話題となった。近年、ジャック・ドーシーCEO率いるモバイル決済のスクエア、ビジネスデータの分析サービスを手がけるマイクロストラテジーなど上場企業がビットコインを購入、保有する動きがある。

佐藤氏が「北米の企業や機関投資家がビットコイン相場を形成するという流れは、今後強まっていくのか?」と聞くと、千野氏は「この流れは続くと思う。これまでは技術感度の高い個人投資家が投資をしていた。今は、たとえばものづくりをするテスラのような会社がビットコインを購入したのは、単に財務的なリスク分散のためだけではなく、ビットコインで自社製品の購入をできるようにサポートするということではないか」と述べた。

続けて、日本企業を含むアジア企業はどうかと佐藤氏が聞くと、蓮尾氏はコインチェックの親会社であるマネックスグループの上場株は価格が上がり、取引量も急増していることを例に挙げながら「機関投資家が押し上げているのではないか」「潜在的に(暗号資産領域に)投資したい投資家がいるように見える」と指摘した。

コインチェック株式会社 代表取締役社長の蓮尾聡氏

別の話題となり、アジア市場における暗号資産の動きについて意見を求められたイム氏は、「ブロックチェーン上のトランザクションは、シンガポールより日本が4倍ほど多い。ただ日本から海外へ送ることのほうが多いため、国内の暗号資産はどんどん減っていると見られる。シンガポールには37の取引所があるという話もあり、グローバルの暗号資産の拠点として、シンガポールでライセンスを得て信頼性を保証するというやり方をとる会社が増えるかもしれない」と見解を述べた。

NFT市場はどうなる?

NFT(ノン・ファンジブル・トークン)市場は急速に成長しており、プロスポーツ選手のカードから、仮想空間の土地、デジタル・スニーカーまで、コレクターが欲しがる多種多様でユニークな有形・無形のアイテムを表すデジタル資産が誕生している。佐藤氏がコインチェックにおいて上場されている暗号資産の種類が豊富であり、NFT市場の創設に触れながら「NFT市場の形成について、どう考えているのか?」と蓮尾氏に聞くと、次のように答えた。

「(コインチェックでは)現状は一部のサービスを開始しており、今後サービスを拡充するステップにある。国内最大級のブロックチェーンゲームである『クリプトスペルズ』や(Formula 1®公式の)「F1®デルタタイム(Delta Time)」など、ゲーム内で使われるアイテムが取引されている」「Hashpalette(ハッシュパレット)と共同でマンガやアニメ、スポーツや音楽などのNFTを発行し、ファンコミュニティを形成していくような取り組みを進める」「さらにデジタルアートの領域などの取り扱いに広げていきたい」

一方で、千野氏は現状は国内で取り扱える暗号資産が少なく、Krakenのグローバルと同じレベルに引き上げることが課題と述べながら、「Krakenにはグローバルに面白いプロジェクトがたくさんあるので、早く日本のお客様にも紹介したい。またアニメやマンガ、アートといったソフトカルチャーは日本の特殊性があるので、クリプトの世界と融合できたら面白いと個人的には思っている」とコメントした。

なお、本セッションを含む同カンファレンスのアーカイブ動画の第三弾が公開中。申し込み登録により視聴は無料となる。

|文・編集:久保田 大海
|画像:N.Avenue