イーロン・マスクのTV番組出演でドージコインは高騰するのか?

テレビでコメントされるだけで、ドージコイン(DOGE)は大いに一般の人々に認知される。しかし4月の「ドージデイ」が失敗に終わったことは、「イーロン効果」はすでに織り込み済みであるのかもしれない。

2021年のような予測不能な世界においてのみ、深夜のコメディー番組が市場を動かす力を持ち得る。ドージコインのファンたちは今週、テスラとスペースXの共同創業者、イーロン・マスク氏が米人気コメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』の司会を務めることで、ドージコインが再び値上がりすることを願っている。

数多くのファンがビリオネア起業家のマスク氏に、インターネット・ミーム(インターネット上で話題となり、拡散した画像などを示す)をモチーフとした暗号資産であるドージコインを、コメディに盛り込むように頼んだ。先週のツイートでマスク氏は、その可能性を強く示唆した。

「ドージパパ
 サタデー・ナイト・ライブ(SNL)5月8日」


マスク氏の出演回はアメリカ東部時間土曜日午後11時30分から放送予定だ。

ビットコインにとって一大事である理由

テレビで言及するだけで、柴犬をシンボルとしたドージコインは一般の視聴者に大いに知れ渡ることになる。46回目のシーズンを迎えた『サタデー・ナイト・ライブ』は、視聴者数で全米トップのコメディ番組となっており、18〜49歳のアメリカ人の4.1%が観ている。

マスク氏と音楽ゲストのマイリー・サイラスが出演する土曜日の放送回を観る人の中には、ドージコインを知らない人もたくさんいるだろう。(米NBAバスケットボールチーム「ダラス・マーベリックス」のオーナーであるマーク・キューバン(Mark Cuban)氏が先日、昼のTVトーク番組『エレンの部屋(The Ellen DeGeneres Show)』に出演してドージコインを宣伝するのを観なかった限り)

前述のマスク氏のツイートによってドージコインの値上がりが始まり、106%高の史上最高値、0.69ドルを記録した。今週新たに、eToroとGeminiの2つの取引所で上場されたことも、その値上がりを維持するのに一役買い、時価総額ではリップル(XRP)を上回り、第4位の暗号資産となった。

マスク氏のテレビ出演が期待に応えるものとなり、ドージコインは新たな高みへと到達するのだろうか?それとも、先月の期待外れに終わった「ドージデイ」のように、SNSが牽引する騒ぎは完全に失敗と終わるのか?

マスク氏がドージコイン好きな理由

マスク氏がドージコインに関わり始めたのは、2018年の9月、自らのツイートへのスパム攻撃を止めさせるように、ドージコインの生みの親ジャクソン・パーマー(Jackson Palmer)氏に公開ツイートで助けを求めた時までさかのぼる。

その7カ月後、エイプリルフールの投票でドージコインの新たな「CEO」に選出されたマスク氏は、「ドージは私にとってもお気に入りの暗号資産かもしれない。かなりクールだ」と応じ、これが初のドージコイン関連のツイートとなった。

それ以降マスク氏は、ドージコインに言及したり、それにまつわるミームを数え切れないほどたくさんツイートし、絶えずDOGE価格をより高い水準へと押し上げてきた。しかし、「イーロン効果」の影響を受けるのはドージコインの価格だけではない。今年グーグルで「ドージコイン」の検索回数が2度跳ね上がったのは、マスク氏がSNSでドージコインに言及した時期と一致した。

(画像:ドージコインのグーグル・トレンド結果

1度目に増加したのは、米人気掲示板レディット(Reddit)のコミュニティー「WallStreetBets(WSB)」による株取引騒ぎの最中であった。この騒ぎは必然的とも言えるように、ドージコインにも波及し、マスク氏が架空の雑誌『Dogue』の表紙を飾る犬の画像をツイートしたことによってさらに盛り上がった。2度目の増加は8月、マスク氏が「スペースXは実物のドージコインを本物の月へと送る」とツイートした頃であった。

ドージコイン vs. ビットコイン。そのリスクは?

その人気の高さ、高騰する価格、有名人からの支持に反して、ビットコイン(BTC)などの暗号資産を保有することと比べて、ドージコインの購入と保有には多くのリスクが伴う。

供給が無制限:ビットコインやその他の多くの暗号資産と異なり、ドージコインの供給量は定まっていない。つまり、価格はその希少性によって裏付けられておらず、その価値を維持するには、流通してくる新たなドージコインを買い手が常に買う必要がある。

発行スピードの速さ:ドージコインのブロック報酬は固定されており、マイニングに成功すると1分ごとに1万ドージコインを受け取ることができる。これに対しビットコインでは、マイナーは10分ごとに6.25ビットコインを受け取る。(ビットコインのマイニング報酬が半分になる次の半減期は、2024年になる見込みだ)これはつまり、ビットコインの全供給量(2140年頃に2100万でピークに達する予定)よりも多いドージコイン(2800万)が2日間で新たに流通するということだ。

技術的進展の少なさ:ドージコインの技術的進歩はボランティアの開発者たちによって支えられており、最近まで、コードのアップデートやリリースは比較的少なかった。2月に行われた最新のドージコイン・コア1.14.3のリリースの前に最後にアップデートがあったのは、2019年11月だ。

所有者の集中:IntoTheBlockのデータによれば、9つのウォレットがすべてのドージコインの合わせて40%を保有しており、その1つは28%を保有している。つまり、これら大口保有者が利益確定に走ればいつでも価格が急落する可能性がある。逆に彼らは、自らの大口ポジションを利用して、市場を操作することもできるのだ。対照的に、全供給量の1%以上を保有するアクティブビットコインウォレットは1つだけだ。

それでも、これらの欠点や、本質的にジョーク暗号資産であるという事実にも関わらず、ドージコインは市場にあるほぼすベてのデジタル資産をしのぎ、世界中の注目を集めている。ドージコインは月へ届くほど値上がりするだろうか?もうすでにそこまで行っているのかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Will Elon Musk’s ‘SNL’ Appearance Send Dogecoin to the Moon? Curb Your Enthusiasm