ベンチャー投資急増とビットコイン下落──クリプト業界成長への次の起爆剤

ベンチャー投資急増とビットコイン下落──クリプト業界成長への次の起爆剤

インフレがついに先週、消費者物価指数にあらわれた。アメリカで前年比5.4%と、FRB(米連邦準備制度理事会)の2%の目標をはるかに上回る高い水準。しかも13年ぶりの高水準でもあった。13年前というと、2008年。経済的には芳しい年ではなかった。予想外の点は、プロの投資家たちが気にかけていないように見えるところだ。

アメリカでの住宅ローンの利率や、社債のコストを設定する指標となる10年国債の利回りは最初、低下した。高いインフレ率や経済成長が見込まれれば、国債の利回りは低下するのではなく、上昇する傾向にある。10年国債の利回りはその後確かに上昇したが、低下という当初の反応は驚きのものであった。

そのような市場の状況を考慮しながら、企業からビットコイン(BTC)に対する関心が最近不足しているとされることについて、検討していきたいと思う。(ヒント:関心が不足していないのは明らかなのだ)

また、ステーブルコイン発行を手がけるサークル(Circle)が2021年第4四半期に上場することで、暗号資産に対して企業からの関心が改めて高まる可能性が高いと私が考える理由も説明したいと思う。

企業はクリプトを気にかけていない?

世界最大の資産運用会社、米ブラックロック(BlackRock)のCEO、ラリー・フィンク(Larry Fink)氏による、米テレビ局CNBCの番組内でのコメントが、話題となった。フィンク氏は暗号資産に対する「需要はきわめて小さい」として、次のように語った。「以前は暗号資産やビットコインについて質問されたことがあったが、ここ2週間の出張中、そのような質問は1度もなかった」

確かにフィンク氏は、退職投資と、公認投資顧問、年金基金、保険会社が長期的に、顧客のためにどのようにポートフォリオを構築するべきかについて語っていた。ヘッジファンド、ベンチャーキャピタル企業、大手企業による投資戦略について話していた訳ではない。

そのため、暗号資産に対する企業の関心全般が小さいとフィンク氏が示唆していた訳ではないと私は考えているが、同氏のコメントから導き出される「企業は暗号資産を気にかけていない」という誤った結論を掘り下げでみたいと思う。

ビットコイン価格が史上最高値の6万4888.99ドルから下落を始めて以来、そして、フィンク氏のコメントのように、スマートなマネーは暗号資産分野から出て行ってしまったと示唆する裏付けの乏しい話が出回り始めて以来、人々は私にこの点に関して質問をしているのだ。

直接投資とVCファンド

第2四半期(4-6月期)には、第1四半期(1-3月期)ほど、企業が積極的にビットコインを買ってバランスシートで保有しようという勢いは見られなかった。その代わりに、ベンチャーキャピタルファンドや直接投資を通じて、大量の資金が暗号資産企業へと注ぎ込まれた。

2021年上半期には、2020年全体を通じたよりも多くの投資が、ブロックチェーンに特化した企業に対して行われた。すべての業界を通じた、世界的なベンチャーキャピタルによる資金提供は今年すでに、過去最大規模となっているが、暗号資産やブロックチェーン関連のスタートアップに対する投資の割合も、2020年下半期の0.89%から2021年上半期には5.97%へと増加している。

世界的なベンチャーキャピタルからの資金提供における
暗号資産・ブロックチェーン関連企業への投資の割合
出典:Bloomberg、Coinbase

下記の図は、ここ4カ月における大規模な投資や資金調達のタイムラインを示したものだ。ベンチャーキャピタル企業も、今年第2四半期には記録的な額の資金を集めている。アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)は6月24日、これまでで最大級の暗号資産関連ファンドを生み出したと発表し、「Crypto Fund III」には22億ドルの資金が集まった。

2021年3月以降の暗号資産・ブロックチェーン関連企業に対する
ベンチャーキャピタルからの投資・資金調達
出典:CoinDesk Research

暗号資産企業に対するベンチャーキャピタルからの投資の活発さは、あらゆる企業が暗号資産に現在深く関心を持っていることを意味する訳ではない。ベンチャーキャピタルの投資は、次なるコインベースを探す一か八かの賭けなのだと、悲観的な人たちは言うだろう。

そこで、より幅広く企業からの暗号資産に対する関心を呼び起こすことになる話題の1つは、サークルによる上場だと私は考えている。

サークルは7月8日、特別買収目的会社(SPAC)であるConcord Acquisitionとの合併を通じて上場を計画中と発表。資本市場全体からすると、合併後の時価総額45億ドルは小さなものであるため、一見大したことのない話題だが、サークルが上場することによる波及効果は、アメリカにおけるステーブルコインにまつわる規制にさらなる明確さを与えることで、暗号資産市場に広範な影響をもたらす可能性がある。

規制遵守型ステーブルコインの出現

ステーブルコインとは、法定通貨の価値にペグされた暗号資産である。サークルは2018年、コインベースと共同でドルにペグされたステーブルコインUSDコイン(USDC)を生み出した。

USDCは、監査を受けた準備金に1対1で裏づけられており、ステーブルコインの技術ポリシーと金融規格を定めるメンバー制のコンソーシアム「センター(Center)」が管理している。ドル連動型ステーブルコインはUSDCだけではないが、テザー(USDT)に次いで、時価総額で最大級のものの1つである。

ドル連動型ステーブルコインの供給高
出典:Coin Metrics、CryptoCompare、CoinGecko

ステーブルコインは暗号資産市場の健全性にとって大切である。法定通貨と暗号資産の間の高いボラティリティや兌換性の問題を解決してくれるからだ。暗号資産取引所が銀行と関係を築くのが難しかった頃、ステーブルコインは市場の成長にとって不可欠な存在であった。

サークルの上場は、アメリカにおけるステーブルコインにまつわる規制の明確さと、その普及にとって極めて大切なステップになるかもしれない。サークルの共同創業者のジェレミー・アレール(Jeremy Allaire)氏は、サークル上場の狙いは、監査企業や米証券取引委員会(SEC)とともに「準備金に関する透明性を高める」ためだと語った。

アレール氏はさらに、「ステーブルコインのニュアンスや特徴に合わせるために、様々な銀行・決済関連の規制が調整」されるように、規制当局に喜んで協力するとも述べた。

準備金に関する透明性は、主要ドル連動型ステーブルコインのテザーにとって重大な問題となってきた。テザーはわずか数カ月前、8億5000万ドルにのぼる消費者と企業の資金を損失したことを隠蔽しようとした疑いをめぐって、ニューヨーク司法長官事務所との和解が成立したばかりだ。

USDTは、機関投資家たちにとって痛点となっている。投資家たちは政治家から嫌われることや、損失を出すことを好まない。USDTの透明性の欠如は、それら2つが起こる可能性を示唆していた。しかも同じきっかけで。(テザーの価値がゼロになることを想像してみて欲しい)

USDCの時価総額が上昇を続けてテザーを上回ると同時に、規制を遵守したステーブルコインとなれば、暗号資産の規制上のリスク、特にトレーディングや、暗号資産オフランプに関わるリスクを懸念していた機関投資家に、扉を開くことになるかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:Crypto Long & Short: Crypto Needs More Than VC Interest

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