コインチェックの決算から見えてくる暗号資産事業の成長戦略

コインチェックの決算から見えてくる暗号資産事業の成長戦略

マネックスグループ傘下で暗号資産取引サービスとNFT事業などを手がけるコインチェックが、四半期ベースでは過去最高となる91億円の利益を計上した。

国内のクリプト業界をけん引するコインチェックは、これからどう成長ペースを維持していくのか?その戦略のカギは、決算報告書から見えてきそうだ。

マネックスは7月27日、4~6月期(2022年3月期の第1四半期)の決算を発表した。コインチェックが展開するクリプトアセット事業は同四半期、91億円のEBITDAを記録した。

EBITDA:Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortizationの略。税引前利益に支払利息と減価償却費を加えて算出される利益のこと。

アルトコインの需要をとらえる

コインチェックが取り扱う暗号資産は現在、16種類。国内では最も多い種類のコインを扱う取引所で、今後も積極的にコインの数を増やしていくことが予想される。今回の決算では、コインチェックの収益に占めるビットコイン(BTC)の割合が、過去1年間で著しく低下していることが分かる。

同時に、イーサリアム(ETH)などビットコイン以外のコイン、いわゆる「アルトコイン」の取引サービスから得られる収益の貢献度は上昇した。コインチェックにおけるBTCへの収益依存度は、4~6月期で12%。

例えば、北米市場を中心に拡大を続ける分散型金融サービス(DeFi=Decentralized Financeの略)は、金融仲介をディスラプトすることを目的に主にイーサリアムブロックチェーン上にスマートコントラクトを活用して構築されている。イーサリアムの成長性を見据えて、ETHを買い持とうとする投資家の動きは過去1年間でより強まった。

(画像:マネックスの決算報告書より)

依然として、ビットコインは時価総額では最大の暗号資産で、その規模は約7420億ドル(約81.7兆円)。一方、拡大を続けてきたイーサリアムの時価総額は現在、約2670億ドル。過去1年間、コインチェックにおける販売所売買代金は、ビットコインの価格に大きく影響してきたが、4~6月期ではBTC価格の下落インパクトを、拡充させたアルトコインの取引サービスによって緩和させ、収益の安定化を図っている。

(画像:マネックスの決算報告書より)

広告宣伝費と口座数の増加

2021年上半期に国内で目立ったのが、暗号資産取引所のテレビコマーシャルだろう。国内の取引所はテレビCMを中心に、広告宣伝を強化させた。マネックスの決算報告書でも、クリプトアセット事業が計上した広告宣伝費は前年同期から桁違いに増加していることがわかる。そして、その効果はコインチェックの口座数にあらわれている。

同報告書によると、4~6月期における本人確認済み口座の増加数は約15万口座で、前年4~6月期の増加幅(19700口座)と比べると、増加ペースは顕著に速まった。コインチェックが7月5日に開示した月次報告によると、本人確認済み口座数は6月末時点で、約135万口座となった。

(画像:マネックスのクリプトアセット事業における販売費と管理費/決算報告書より)

収益の源泉となるNFT

コインチェックが今後の収益基盤の一つとして注力しているのが、NFT関連事業とIEO事業だ。

NFT(非代替性トークン):ブロックチェーン上で発行される代替不可能なデジタルトークンで、アニメやゲーム、アートなどのコンテンツの固有性や保有を証明することができるもので、NFTを利用した事業は世界的に拡大している。

コインチェックは今年3月、NFTの発行と取引ができるNFTマーケットプレイス(ベータ版)の運営を開始した。すでに収益化を達成しており、今後はどれだけ多くの優れたNFT商品がコインチェックのマーケットプレイスに投入され、取引を活発化させるかが注目される。

(画像:マネックスの決算報告書より)

NFT事業では、国内で8800万人のユーザーを抱えるLINEや、GMOインターネットグループが同様にマーケットプレイスの本格運営に向けて準備を進めている。マーケットプレイス間の競争は今年下半期にも始まるだろう。

コインチェックはこれまで、独自のマーケットプレイスの開発に加えて、M&A(合併・買収)と他企業とのパートナーシップ戦略を交えてNFT事業の基盤を整備してきた。6月には、サイバーエージェント子会社で、IP(知的財産)マネタイズ事業やオンライン対戦ゲームのeスポーツ事業を手がけるCyberZと、NFT事業で協業していくと発表した。

日本初のIEOを手がけるコインチェック

IPOは発行体企業が株式を証券取引所に上場・公開して、資金の調達方法を多様化できるが、IEOは発行体がデジタルトークンを発行・販売して資金を調達できる新たな手法だ。

IPO(イニシャル・パブリック・オファリング)が新規株式公開と呼ばれるのに対して、IEO(イニシャル・イクスチェンジ・オファリング)ではトークンは暗号資産取引所に上場される。

日本では今月、ハッシュパレット(Hashpalette)が開発したNFTプラットフォームの「パレット(Palette)」が、コインチェックでIEOを開始した。国内では初となるIEOだ。

パレットは7月1日から2億3000万枚のトークン「Palette Token(PLT)」の売り出しをコインチェック上で開始。購入申し込み総額は同日の販売開始から6分で、調達目標の9億3150万円を突破した。

証券会社がIPOの引き受けを通じて手数料収入を稼ぐのに対して、コインチェックは企業やプロジェクトが行うIEOから手数料を得る。今後、国内においてIEOを通じた資金調達と事業拡大のケースが増えていけば、コインチェックはその知見を活かして、事業の多様化と拡大をさらに進めることができる。

そのためにも、1号案件となったパレットのIEOは注目に値する。計画では、7月29日にPLTがコインチェックに上場される。

|文・編集:佐藤茂
|写真:Shutterstock

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