渋谷のクラブがメタバースに、DJアバターと楽曲をNFT化

渋谷のクラブがメタバースに、DJアバターと楽曲をNFT化

コロナ禍でナイトライフを思いきり楽しめない今、クラブDJの活動の場が激減している。一方、社会活動が抑制される中、メタバース(仮想空間)の創造を急ピッチに進める動きは世界中で広がる。

クラブとDJがメタバースに出現すると、熱気に溢れたクラブライフの楽しみ方はどう変わっていくのだろうか?

そんな近未来の遊び場と仕事場を作ろうしているのが、DJスクールやDJランキングのメディアを運営するDiscoverFeedだ。メタバースでクラブ音楽の版権や、DJのアバターが身につけるアイテムをNFTで販売する事業を開始した。

1月15日、東京・渋谷にあるクラブ「CLUB CAMELOT」のメタバースが、試験的にオープンし、イベントを開いた。仮想空間のクラブではトップDJが音楽を配信し、約1,000人のクラブファンが集まった。

DJの音源データをNFT

DiscoverFeedは今後、国内に限らず欧米の複数のクラブ運営者と協議を行い、クラブのメタバース化を広げていくという。人気DJが制作する楽曲の音源データ、動画、画像をNFTにすれば、多くのファンが購入することができ、コロナ禍で苦しむDJの制作活動を支援することができるようになる。

DJアバターに話しかければ、NFTの取引方法を教えてくれる仕組みを作りたいと、DiscoverFeedの代表を務める渋谷幸史氏は、coindesk JAPANの取材で話した。

完成された楽曲の著作権は、レーベルや作曲者が所有するが、制作プロセスの中で作られた音源データや動画などは、細分化して、販売することが可能だと、渋谷氏は言う。

クラブのメタバース作りには、米Matterportが開発したAI(人工知能)を搭載した3Dスキャニング技術を利用した。何台ものGoProカメラなどを利用する必要はなく、わずか数時間でクラブ内を歩きながら撮影すれば、リアルな空間とメタバース空間が融合する「デジタルツイン」のクラブを作り上げることが可能だ。

米MatterportとIPFSの技術を活用

Matterportは、建造物をオンライン化して、建物の設計・建設・管理ができる空間データプラットフォームを開発する企業で、ナスダック市場に上場している。時価総額は30億ドル(約3600億円)を超える。

「クラブのメタバースは、クラブである必要はない」と、渋谷氏は話す。歴史的建造物のメタバースを借りることで、これまでのリアルのクラブとは全く異なる建物の中に仮想のクラブを作ることができる。

仮想空間のクラブで販売するNFTの開発には、IPFS技術を専門とするNonEntropy Japanが主導した。IPFS(InterPlanetary File Systemの略)は、米Protocol Labsが開発した分散型のファイルストレージを構築する規格で、ファイルを一つのサーバーで管理する従来の方法とは異なり、ファイルを複数のデータチップに分割管理する手法だ。

グーグルやアマゾンを筆頭に、米国のビッグテックは過去20年でインターネット上のデータをめぐる覇権を強めてきたが、分散化された次世代インターネットのWeb3の必要性を求める声は、世界中で聞こえるようになってきた。

オープンソースのProtocol Labsが開発するブロックチェーンベースの分散型IPFSと、その上で流通するネイティブトークン(暗号資産)のファイルコイン(FIL)は、Web3の創造において注目を集めるプロトコルの一つだ。

メタバースを運用する日本企業

(イメージ画像/Shutterstock.com)

NonEntropy Japanは、IPFSを活用するビジネスソリューションを提供する数少ない日本企業で、IPFS規格に準じた価値あるデータの保存を行うストレージ・プロバイダーの役割を担っている。同社は今後、DiscoverFeedが運営するクラブのメタバース空間とNFTプラットフォームの運用を行う。

渋谷氏は、「リアルなクラブで、DJが流す生の楽曲が聞きながらフロアで過ごす時間は、世界中の多くのクラブファンを魅了することは確かだ」と話す。

しかし、「特にコロナ禍の今、歴史的建造物の中に出現した仮想空間のクラブは、多くのクラブファンのアバター達が国籍を問わずに出会える新しい場所となり、人気のDJ達が楽曲制作の一部をデジタルに販売できるマーケットプレイスにもなる」と、渋谷氏は続けた。

DiscoverFeedは現在、来月2月の本格サービス開始に向け、アバターの機能強化や、メタバース空間でレーザー光線や泡、紙吹雪を利用したエフェクト効果の開発を進めている。

リアルとバーチャルの融合は、世界中のあらゆる産業で起きている。クラブのデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいけば、1980年代~1990年代に人気を集めた渋谷、六本木、西麻布のクラブで感じた熱気は、どこか懐かしいものに感じるのかもしれない。

|取材・テキスト:佐藤茂
|画像:1月15日に「CLUB CAMELOT」のメタバースで開催されたイベント/DiscoverFeed・提供

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