Web3ユーザーは何百ものトークンに投資はしない【コラム】

現代の平均的ソーシャルメディアユーザーは、ティックトックにインスタグラム、フェイスブック、ツイッター、ディスコード、ユーチューブなど、複数のプラットフォームを利用する。

これらのプラットフォームのそれぞれにおいて、ユーザーとクリエーターがマーケットプレースを形成し、成功のために互いを必要としている。ウェブ2ソーシャルネットワークの強みは、人々が注ぎ込む時間とエネルギーという投資に依存している。

友達(やファンとなる可能性のある人たち)もインスタグラムを利用したいと思う場合にのみ、インスタグラムのアカウントを持つことから、莫大なメリットが得られる。

過去20年で、あらゆる業界において、ユーザーからクリエーターへの道が作られた。ユーザーはウェブ2において日々の生活を記録し、毎朝のルーティンから日々の低劣なコンテンツまで、あらゆるものがソーシャルプラットフォームによって商品化されている。

ユーザーは、コンテンツを生み出し、視聴者層を拡大するに伴って、クリエーターへとシフトしていく。とりわけティックトックは、誰もが一晩で有名になれるようにした。

プラットフォームはネットワーク効果から恩恵を受けており、時とともに、ユーザーへの流通経路という大切な要素を提供する。ソーシャルメディアは何十億人ものユーザーとそのデータを集め、私たちの関心と時間、お金からたっぷりと利益を上げている。

ウェブ3は、このような価値獲得は破綻しているという考えを基盤にしている。初期の投資家とチームだけがネットワーク効果から利益を上げる代わりに、新しい時代には、プラットフォームの成功に貢献したユーザーが利益を得るべきなのだ。そうすることで、ユーザーはネットワークの部分的オーナーとなる。

しかし、所有には重大な影響も伴う。子供の頃私たちは、自分の持ち物をしっかりと管理するように教わる。「自分の行動に責任を持て」と言われる。成長するにつれて、最初の車、最初の持ち家などを所有するにようになり、所有の重みには、長期的責任が伴うようになる。

個人が所有するものの中で、その成功が完全に自分の行動だけに依存しているものは、あまりない。自分の家や車、その他の高額なアイテムを、大きな責任を持って手入れするのだ。理論的には、これはエキサイティングな提案だ。

しかし現実は、もう少し複雑だ。

トークン保有者のタイプ

現在、市場には、3種類のトークン保有者が存在する。長期的投資家、短期的投機家、開発者だ。長期的投資家は、長期的な潜在性やビジョンを理由にプロジェクトに投資することを決意する。多くの場合、投資した資本を長期的に動かさずにいるので、エンドユーザーと同調することになる。

短期的投機家は、確信はないかもしれないが、暫定的に投資すべきチャンスがあると考えるユーザーである。彼らは感情や裁定取引のチャンス、サイロ化された市場情報などをもとに投資を行う。

3つ目は、開発者だ。自らプロジェクトを開発し、運転資本と時間を通じて投資を行うトークン保有者である。プロトコルのフルタイムの従業員の場合もあるし、アクティブなコミュニティメンバーや業界推進者などの場合もある。彼らの役割は、独特な価値提案を生み出す。彼らのコミットメントと、コミュニティに費やした努力は、直接に金融(および社会)資本へと関係するのだ。

もちろん、所有には責任が伴うという、負の側面もある。報酬を受けるには、プロジェクトにコミットし、最後まで見届ける必要があるのだ。

ユーザーは何百もの資産を保有できない

ウェブ2の場合は、限られたコストで、選んだプロジェクトに費やす努力から恩恵を受けることができた。ティックトックを受け身でスクロールしていきたい人も、動画コンテンツを毎週投稿したい人も、どちらも大歓迎だ。プラットフォームはあなたの努力に対する見返りとして報酬を与えるが、努力をしないからと言って拒否したりはしない。

ウェブ3の場合は、反対だ。積極的に参加しない新しいユーザーが増えるごとに、ネットワークの価値、そして直接的な金銭的インセンティブを損なう可能性がある。

トークンをステーキングしなければ、年率利回りを失う可能性があり、ネットワーク上でNFTを作らなければ、報酬を逃す可能性がある。より多くのユーザーをオンボーディングできれば、より安泰なのだ。

これは特徴であって、バグではない。

結果として、ユーザーは、ネットワーク全体へと貢献したいと感じるプロジェクトや、トークン保有者が増えるごとに労力が減っていくような規模をすでに達成したネットワークに資産を投資する可能性がはるかに高い。

多くの意味でこれは、初期のユーザーがネットワークをブートストラップし、初期の成長リスクを負いながら、将来的なユーザーのコストをサポートしていることを意味する。

本物のユーザーは、何百もの資産を保有する代わりに、「ダンバー数(人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の上限)」の資産版のようなものに達する時が来る。保有する資産が増えるごとに、それが自らの資産に与える影響が下がっていくような状況だ。

究極的には、ユーザーが何百もの資産を保有したがるという考えは、上手くいかないだろう。すべてにコミットするには十分な時間がないのだ。

すべてをトークン化するのも結構だが、結局のところ、人は保有した通りになっていくものだ。

キンジャル・シャー(Kinjal Shah)氏は、ブロックチェーン・キャピタル(Blockchain Capital)で投資家として活動し、暗号資産の未来を築く起業家たちと仕事をしている。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Sorbis / Shutterstock.com
|原文:Web 3 Users Won’t Own Hundreds of Assets