ビットコインのマイアミ・イベント、投資家が聞くべき議論とは【コラム】

2万人を超える参加者が先週、マイアミで開かれたビットコイン・マガジン主催の「ビットコイン・カンファレンス2022」に集まった。

登壇者のラインナップがあまりに見事で、見逃す訳にはいかず、私も参加した。価値があると思われた人なら誰でも、少なくとも15分の時間を与えられ、一段と優れた人には、より多くの時間が配分された。(例えば、たまたま私と同じ名字の開発者は、3つのパネルディスカッションに連続で登場していた)

登壇者の中には、お茶の間でもお馴染みの人たちもいた。テニス元世界女王のセリーナ・ウィリアムズ氏は、NFLプレイヤーのオデル・ベッカム・ジュニア氏やアーロン・ロジャース氏と共に登場。

アクティブなビットコインユーザーが数百万人、ビットコインをルーツに持つ派生アルトコイン業界に関心を持つ人たちがさらに数百万人いることを考えれば、メインストリームからの注目が集まるのも当然だ。そのため今回のカンファレンスは、かなり盛況であった。人気NFTシリーズ「Bored Ape Yacht Club」のパーカーを着た人も見かけたほどだ。

目を凝らして見ない限り、金融システムを一から作り直そうとする反体制的な サイファーパンク(暗号資産の広範な利用を推進する活動家)の集まりには見えなかった。

オープンソースのオアシス

オープンソース開発者たちが特によく登場していたステージが1つあった。その名も、オープン・ソース・ステージだ。カンファレンス参加初日にたまたまそのステージを見つけるまで、正直に言うと私はかなり憂鬱な気分であった。しかしこのステージに登壇した人たちが、自分がなぜビットコイン(BTC)が好きなのか、ビットコインが象徴するものは何なのかを、思い出させてくれた。

このステージでは、信念を持ち冷静かつ思慮深い開発者、オープンソース支持者、デザイナーたちが続々と登場し、これまでの道のり、現状、この先の展望をはっきりと語ってくれた。価格目標、エネルギー市場、ましてや「文化」に関する議論はまったくなかった。オープンソースのソフトウェアと、それが実現する自由についてのみが、語られていたのだ。

投資家(および気軽なユーザー)たちが、市場や価格目標、マイニング、インフラ、金銭的リターンを得るのに役立つその他の情報に大いに関心を持っているのは、私も分かっている。

そのような情報を求める参加者たちは、今回のカンファレンスでそれを得ることができたが、そのような情報は、他でも簡単に手に入るものだ。(少なくとも私が聞いた限りでは)そのような分野において、深く新しい議論はほとんど行われていなかった。

オープン・ソースのステージは特別だった。プロのサイファーパンクを自称するジェイムソン・ロップ(Jameson Lopp)氏は、決定性のアドレス生成抜きでアドレスを再利用するウォレットは、ユーザーにとってリスクとなり、その結果としてビットコインへの攻撃に当たるか、と疑問を呈した。

開発者のキース・ムカイ(Keith Mukai)氏は、ビットコインのアップグレード「タップルート(Taproot)」は、ビットコインが線路を走る電車から、電車を利用するか、「1マイルほど歩いで、バスに乗り、それから電車に乗って目的地を目指す」かを選べる「グーグル・トランジットタブ」へと変更するものだと、見事な説明を展開。

ライトニング・ネットワークを手がけるライトニング・ラボの共同創業者兼最高技術責任者、オラオルワ・オスントクン(Olaoluwa Osuntokun)氏は、タロイモのチップスを持ちながら、プロトコル「タロ(Taro)」の技術仕様を驚異的な速さで説明するプレゼンで、会場を沸かせた。

ビットコインのファンダメンタルズ

このようなカンファレンスの場で、真のデューデリジェンスが行われるのだ。開発者たちの話を聞くために議論の場に頻繁に足を運び、GitHubレポジトリを熟読することが、ビットコイン投資家にとっての、深く本当のファンダメンタルズ分析に当たる。

オープンソースの開発者たちは、すべてをGitHubやメーリングリストを通じて発表しているが、彼らの言葉が幅広く聞かれることはあまりない。インターネットの片隅に、追いやられてしまっているのだ。

彼らが一堂に会したことで、集団的なマインドの共有が行われ、正直言って圧倒され、安心させてくれるほどの、純粋なコーディングの才能が集まった。ビットコインの未来の細部は、このような開発者が握っているのだ。

ビットコインテクノロジーと、将来に何が可能になるかを真に理解するために行くのが、このオープン・ソース・ステージのような場だ。

効果的な投資家になりたければ、雑音の中から信号を聞き分けるようにと、言われる。ビットコイン、あるいはフリー・オープンソフトウェア(FOSS)から派生した資産に投資を検討している人なら誰でも、FOSSを可能にしているオープンソース開発者たちに注目し、彼らをサポートし、彼らとつながることから恩恵を受けられるはずだ。

ビットコイン関連のカンファレンスに参加することがあれば、オープンソース開発にまつわる議論に耳を傾ける時間を取るようにしよう。今回のステージは、200人以上が見守っていたはずだ。

おまけに、残りの1万9800人がウロウロとぶつかり合っていた、うだるような暑さの他の会場と比べると、エアコンも効いて、涼しい場であった。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:「ビットコイン・カンファレンス2022」のオープン・ソース・ステージ(CoinDesk)
|原文:While You Were Out Partying, I Studied Bitcoin Development