暗号資産への逆風の時期を生き抜くコツ【オピニオン】

主要暗号資産(仮想通貨)の50%以上の値下がり、実験的な大型プロジェクトの破綻を受けて、暗号資産に対する世論は、予想通り180度転換した。数年おきに起こることだ。

暗号資産価格のバブルによって、新たに投機家たちの一団が引き寄せられ、その多くが、完全に理解できていないテクノロジーに悪い賭けをして痛手を負う。そうして世論は、反対の方に大きく揺り動く。

投資についてのライブストリーミングを行う「Davey Day Trader」がドージコインを語る時代から、マサチューセッツの外科医がLUNAで全財産を失う時代になったのだ。

メタやネットフリックスなどの優良テック株も、ここ1年でビットコイン(BTC)と同じくらい値下がりしているのは確かだが、その点は今は脇に置いておこう。

吹き荒れる批判

暗号資産への反発が起こっており、それは極めてお馴染みの形で表れている。ジョークのつもりでドージコインを作ったジャクソン・パーマー(Jackson Palmer)氏は、暗号資産業界に対して批判的な主張を展開。

反暗号資産的ブログを手掛けるモリー・ホワイト(Molly White)氏は、ワシントン・ポスト紙で特集を組まれている。暗号資産に対して懐疑的なポッドキャスト『Crypto Critic’s Corner』は突如、世界的に大人気のテック関連ポッドキャストの仲間入りを果たした。

おおむね建設的で辛辣なこれらの批判は、素晴らしい。しっかりとした情報に基づいた健全な批判の声が存在することは、真面目な新興テックセクターにとっては、マイナスではなくプラスだ。しかし、より一般的に広がる批判は、言い逃れや誤解を含め、懸念すべきバカげた言動も生み出すだろう。

米軍の機密文書を内部告発で漏洩させたチェルシー・マニング氏は、先日公開されたインタビューで、その典型例を示してくれた。Nymと呼ばれるプロジェクトにおける自らの取り組みを説明するにあたって、「暗号資産」と言う言葉を奇妙に避けて通ったのだ。

マニング氏は自らを「暗号資産懐疑派」と呼び、ブロックチェーンを使ってプライバシーを確保すると謳われている自らのプロジェクトは、暗号資産業界の一部ではない、と説明しようとした。

しかし、Nymにはトークンがあって、それがネットワークを維持する人たちのインセンティブとなっていて…と言うことは、暗号資産じゃないか!チェルシー・マニングが暗号資産の立ち上げに手を貸している。そのどこに問題があるのだろうか?

マニング氏は、プライバシーと民主主義を守るヒーローであり、いくつかの理由から、私たち皆が尊敬するべき人物だ。そんな人が、暗号資産スタートアップから報酬を受け取りつつ、暗号資産懐疑派だと芝居を打つ必要があると感じているのには、心が痛む。

Nymを支えているアイディアも、疑わしいもののように思える。市民を政府の監視から守ろうとしているのだとしたら、残念ながらブロックチェーンは、その出発点にはふさわしくないかもしれない。

怪しげなトークンプロジェクトを宣伝する著名なプライバシー支持者から、暗号資産は恥だと思われるということは、暗号資産は最悪の状況にある、ということだ。

分かりやすい悪役

独り善がりの懐疑派たちからの批判の声が、すぐに止むことはないだろう。その一因は、今回の市場の混迷には、LUNAとUST暴落によって破綻したテラの生みの親ドー・クォン氏という、明らかな悪役兼スケープゴートがいるからだ。

悪役でありスケープゴートだと私が言っているのは、彼が広範な市場の暴落を引き起こした人物として記憶されるのではなく、彼とその取り組みが、その暴落を可能にしたあらゆる失敗やトークンの買い集めに走った人たち、行き当たりばったりの人たち、詐欺師など、この業界の負の側面を体現していたために、人々の記憶に残るからだ。

以前であれば、そのような役割を引き受けたのはマウントゴックスの元CEOマルク・カルプレス(Mark Karperes)氏、あるいはクアドリガCX(QuadrigaCX)の創業者ジェラルド・コットン(Gerald Cotten)氏だったかもしれない。

しかし、暗号資産がかつてなく一般の人たちに知られるようになった後の今回は、ドー・クォン氏だ。この先数カ月、彼はあらゆるところで取り上げられるだろう。

エゴ、金の亡者、無謀さ、バカらしさの化身が「暗号資産」全体を象徴してしまうことは、業界にとって明らかなダメージとなるはずだ。そのことについては私たちは、他に彼がしたあらゆることに加えて、彼に怒りを覚えるべきなのだ。

厳しい時期となるだろう。どれくらい厳しく、どれくらい長く続くかは、誰にも分からない。私たちの多くにとっては、見覚えのある状況だ。細かな違いはあるが、暗号資産の逆行サイクルは、4、5回すでに繰り返されているのだから。

そのたびごとに、暗号資産はその月一番の熱狂の源から、非難の対象となり、同じような行動が出現してきた。しかしありがたいことに、逆光の時には、チャンスも生まれるのだ。

「暗号資産ではなくブロックチェーン」

企業はこれからも、投資家からお金を吸い上げることを楽しみ続けるだろう。例えば、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)の新しい45億ドル規模の暗号資産投資ファンドを考えてみて欲しい。暗号資産に対する世論は最悪だが、かなりの資金がいまだに提供されているのかもしれない。

暗号資産から甘い蜜を吸いたい人たちが、暗号資産関連の活動を控えめに見せようとする中、マニング氏のような、苦しい言い逃れが多く聞かれるようになるはずだ。

マニング氏の主張は、この業界でもお馴染みの言い逃れ「暗号資産ではなく、ブロックチェーン」に非常に近いものだ。これは意味をなさないコンセプトだ。金銭的価値を持つトークンは、少なくとも今のところ、分散型パブリックブロックチェーンに欠かせないものなのだから。

しかし、「暗号資産ではなく、ブロックチェーン」という表現は、金融面でのボラティリティ抜きにブロックチェーンテクノロジーのいいとこ取りをしたいという願望を示唆するものだ。

「暗号資産ではなく、ブロックチェーン」のスローガンは、過去の市場低迷において、大手企業内のブロックチェーン部門にとって、とりわけ魅力的だった。偶然ではないが、「エンタープライズブロックチェーン」の虚しい前提の上で運営を行う方法の1つは、しっかりとコントロールしたプライベートネットワークを使うものだ。

それは、長期的に限定的な可能性を持っていたかもしれないが、パブリックブロックチェーンの革新的な力とはほど遠いものだ。世論のシフトによって影響を受け、暗号資産のことはまったく理解していない人たちをだますための言葉の罠に過ぎないのだ。

冬を生き抜く

このような臆病な策略を無視することが、暗号資産の冬をうまく切り抜ける第一歩だ。もう1つおすすめなのは、何が起こったのかを理解しようとすること。

テラはなぜ破綻したのか?なぜソラナ(SOL)は80%値下がりしているのに、イーサ(ETH)の下げ幅はわずか58%なのか?これらにはしっかりとした理由があり、それらを今学んでおけば、暗号資産に関する世論が反対方向にシフトし、次なる衝動的買い手の一団が登場してきた時に、より準備が整っているだろう。

もう1つ、シンプルだが耳の痛いアドバイスは「デイトレーディングを止めること」だ。まだ下落傾向は続いており、市場がどこで底を打つのかは誰にも分からない。手元に残った資本を確保し、別のところに重点を移そう。具体的には、コミュニティに参加し、プロダクトを積極的に利用し、スキルを磨き、何か開発してみることもできるかもしれない。

デイドレーディングは好況時でも、単にいいカモにされてしまう負け戦だ。しかし弱気相場では、本当にプロに任せておくべきことなのだ。ギャンブル依存症と笑って済ませられた時期もあったかもしれないが、本当に一文無しになってしまっては、笑えない。

今の時を学びに費やすことは、最低限の自尊心だけでなく、本当の成功に向けた道なのだ。初心者の暗号資産投機家でさえ、暗号資産分野について多くを学んでおり、この業界の成長がここまできた時点では、そのように身につけた知識は、暗号資産の低迷を生き抜く時にも価値を持つ。業界の著名人たちもこの先、はるかにアクセスしやくなるはずなので、将来的なキャリアに向けた基盤を築くこともできるだろう。

しかし、暗号資産に対する逆風の時期を生き延びるための最も大切なアドバイスは、とてもシンプルなものだ。諦めずに業界に身を置き続けること。暗号資産の激しく循環的な性質は、最高に厄介なものであり、同時にチャンスでもある。うわべだけの投機家を定期的に追い出しながら、本当に献身的な人たちには、新しい入り口を提供してくれるのだから。

あなたが暗号資産企業に就職したばかりで、前職のゴールドマン・サックスに復職を願い出ようか悩んでいたとしても、好機をうかがう野心的な新規参入者だとしても、最も大きな間違いは、ボールから目を離してしまうこと。どちらに跳ねていくのか、分からないのだから。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:How to Make Money From the Crypto Backlash