「ビットコインはコモディティ」SEC委員長の考えは正しいか?

米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長は、ビットコイン(BTC)はコモディティであるという考え方を改めて繰り返した。委員長の解釈は前例を元にしたものでもあるが、さらには現実に根差したものであるとも願いたい。

ビットコインと、それ以外の暗号資産

「ビットコインなど、というより、ビットコインだけと言っていいだろう。私の前任者や他の人たちがコモディティだと言ったトークンについては、話す気はない」と、ゲンスラー委員長は27日、米テレビ局CNBCのインタビューで語った。

ゲンスラー委員長が前任者たちと異なるのは、イーサリアムも同じようにコモディティと定義することを渋っている点だ。委員長としてゲンスラー氏は長らく、暗号資産(仮想通貨)の大半は、SECの管轄下にあると主張している。

「暗号資産は、証券の重要な特性を備えている」とゲンスラー委員長は先日語り、プロジェクトを指示し、最も大きな利益を得るポジションにいる中央集権型の存在が、ほぼ常に存在すると指摘した。

2014年、開発者と投資家、イーサリアム財団といった組織が集まって、イーサリアムブロックチェーンが新規コイン公開(ICO)によって登場してきた時は、間違いなくそうだった。

しかし、2018年には、当時のSECで企業金融の責任者を務めたウィリアム・ヒンマン(William Hinman)氏が、イーサリアムは「十分に分散化」したため、コモディティと分類されるべきと主張。誰でもアクセス可能な開かれたネットワークであるイーサリアムは、多様な利害関係者を含むまでに成長していた。

ゲンスラー委員長の今回の発言は、当局がそれまで確立されていた方針を撤回するように見える場合によくある通り、市場にいくらかの混乱をもたらしたようだ。しかし、ビットコイナーの中には、ビットコインが「暗号資産」とは別個で、真に独立した存在である証と捉えた人たちもいるようだ。

例えば、大物ビットコイナーでソフトウェアエンジニアのジェームソン・ロップ(Jameson Lopp)氏は先日、大半の暗号資産は「分散化とは名ばかり」であり、未登録の証券に当たると発言した。

ビットコインへの積極的な投資で知られる米ソフトウェア会社マイクロストラテジーのマイケル・セイラーCEOは、「ひどく悪質な一連の」暗号資産が、規制当局によって根絶されるよう求めた。

セイラー氏の考えでは、政府による承認は、ビットコインが世界中の「政治家、機関、政府、機関投資家」によって「準備資産」として受け入れられるための足掛かりとなる。ビットコインは、その供給量に2100万枚という上限が設定されているため、インフレを続ける法定通貨の経済という「溶ける氷」に対して、価値が下がることのないブイのように機能することができるのだ。

ここ数カ月で、セイラー氏のような考え方は、ますます多くのビットコイナーたちに受け入れられている。一方、開発者ジェイコブ・フラネク(Jacob Franek)氏のような反対派は、ビットコインの価値提案が国家によって「承諾される」ことの矛盾を指摘している。

分散化という道のり

フラネク氏のこの主張は必ずしも正しくはない。これは、ニワトリが先か、卵が先かの議論ではないのだ。コモディティとして分類されるのは、ビットコインが極めて分散化されているという、ビットコインが実際に持つ重要な性質のおかげだからである。

ビットコインは、デジタル資産が支える分散型ネットワークである。単独の管理者や所有者は存在しない。有益なアプリを開発したり、コードベースを維持する他の人たちの取り組みから利益を受けることも含め、保有することで利益を得られると考えてBTCを買う人もいるが、金融資産が証券に該当するかを判断するのにSECが利用する「ハウィー(Howey)テスト」によって定義される証券とは異なり、利益が集まる組織は存在しない。

ビットコインの強みの1つは、政府による分類があまり意味を持たないほどに成長したという点だ。国民国家でさえも、ビットコインネットワークを閉鎖するのは極めて困難である。SECが証券と呼びたかったとしても、誰を相手に裁判を起こすというのだ?

だからと言ってセイラー氏が、証券規制当局をけしかけて、ビットコイン以外の暗号資産を攻撃させるのが正しいという訳ではない。ビットコインも暗号資産であり、多くの暗号資産が、その後に続く可能性は大いにある。

だからこそ、SECのへスター・パース(Hester Peirce)委員は、「セーフハーバールール」を提案した。この提案は、暗号資産スタートアップがSECの介入を恐れずに、資金調達のためにトークンセールスを実施できるようにするもので、ブロックチェーンプロジェクトは、創業者だけに縛られずに進化する時間も場所も手にすることができる。

ベイラー大学の研究によると、ビットコインの初期には、利害関係者は非常に限られた数しか存在していなかった。さらに、常に分散化していた訳ではなく、初期のマイナーは時に、簡単にネットワークを攻撃することも可能であった。

ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトは、自らの功績に対して報酬を受け取ることはなかったようだが、彼のハッシュは時を経ても健在で、ほとんどのネットワークはその初期には、少数の人たちのネットワークであることを思い起こさせてくれる。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:ゲーリー・ゲンスラーSEC委員長(CoinDesk)
|原文:SEC’s Gensler Reiterates Bitcoin Alone Is a Commodity. Is He Right?