暗号資産業界は「信頼の幻想」を描き出した:ポール・クルーグマン氏

暗号資産(仮想通貨)市場は「技術的な専門用語と自由主義者的な言説」で投資家を誘惑し、「信頼の幻想」を手に入れて、機関投資家や個人投資家に自らを売り込んだ──ノーベル経済学賞を受賞した経済学者、ポール・クルーグマン(Paul Krugman)氏は7月11日、ニューヨーク・タイムズのコラムに記した。

業界は「マーケティングに驚くほど成功し、最先端かつ信頼できるというイメージを作り上げた」という。

また、個人間送金アプリのVenmo(ベンモ)がホームページでユーザーに「暗号資産の旅を始めよう」と呼びかけ、複数の有名大学が暗号資産の講座を提供していることを例にあげた。

「不正行為があったとは思わない(中略)。だが、金銭的な報酬が存在することは明らか。人々がVenmoで暗号資産を売買することから、Venmoがどれほどの利益を得たのかは知らない。だが単なる善意でサービスを提供しているわけではないことは確かだ。例えば、MIT(マサチューセッツ工科大学)のオンライン・ブロックチェーンコースを受講するには、3500ドル(約48万円)かかる」

暗号資産は、メインストリームにこれほど受け入れられたことで、「規制するには大きくなりすぎた」という。

最近の暗号資産市場の低迷によって、効果的な規制が「政治的には可能」になったが、中央銀行などの規制期間はそのチャンスを「暗号資産が単なるカジノでなくなり、金融安定に対する脅威になる前」に捉えなければならないとクルーグマン氏は記し、ブレイナードFRB理事の暗号資産規制についての最近の発言に触れた。

クルーグマン氏はこれまで何度も暗号資産に対して懐疑的な姿勢を示している。2013年にはビットコインを「邪悪」と呼んだ。今年1月には、暗号資産を2000年代のサブプライム住宅ローン危機と同列に見ていると書いた。サブプライム住宅ローン危機は、その後「リーマン・ショック」と呼ばれる世界金融危機に発展した。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:ポール・クルーグマン氏(Shutterstock)
|原文:Crypto Industry Portrayed ‘Illusion of Respectability’, Paul Krugman Says