マイクロストラテジー創業者の脱税疑惑とビットコイン価格

マイクロストラテジー創業者の脱税疑惑とビットコイン価格

8月31日、ソフトウェア企業マイクロストラテジー(MicroStrategy)の創業者で執行会長のマイケル・セイラー氏が、2500万ドル以上の脱税容疑で、米ワシントン・コロンビア特別区の司法長官に訴えられたことが明らかとなった。

懸念されるビットコイン価格への影響

テレビのニュースでも話題となったこの裁判によって、マイクロストラテジーやセイラー氏が保有するビットコイン(BTC)の清算を余儀なくされ、ビットコイン価格に下方圧力がかかるのではとの懸念が生じている。

「マイクロストラテジーは最大規模のビットコイン保有者であるため、暗号資産投資家たちは、セイラー氏が罰金を支払うためにビットコインの一部を清算しなければならなくなるのではと、パニックに陥った」と、デジタル資産ブローカー、グローバルブロック(GlobalBlock)のアナリスト、マーカス・ソティリオウ(Marcus Sotiriou)氏は語った。

これまでのところ、いくつかの理由から、その懸念は大げさすぎると言って良さそうだ。それでも今回の事態は、暗号資産支持者たちに、押収不可能な資産を保有していたとしても、税金は全額納めておかなければならないという事実を、改めて思い知らせてくれるはずだ。

税金逃れは法律の抜け穴を利用したものだが、緻密な計画と努力が必要となる。さらに米政府が暗号資産業界への監視と、内国歳入庁(IRS)の改革に対する関心を高めていることから、自分も監視されていると考えた方が良い。

今回の訴訟では、セイラー氏が過去10年間、ワシントンD.Cでの税金を逃れるために、より税率の低いバージニア州とフロリダ州の住人であると主張してきたとされている。

密告をきっかけに始まった捜査では、セイラー氏のプライベートジェットの飛行記録や、ソーシャルメディアへの投稿から、同氏がワシントンD.C.在住と判断。証拠になった友人たちとの会話では、所得税を支払うのは「バカ」だとセイラー氏が語ったとされている。

裁判の関係書類からは、セイラー氏が有罪となった場合にいくら税金を納めなければならないのかはわからない。しかし、有罪となれば、8年間の未払いの税金の全額と、年10%の複利、違反1件に対して1万1000ドルの民事上の罰金、不正に対するその他の罰金を支払うことになる。

司法長官事務所によれば、その総額は1億ドルを超える可能性もある。

根拠の薄い不安

この裁判がビットコインの清算危機を引き起こすという懸念は、あまり根拠のないものだ。さらに、先月CEOを退任したセイラー氏とマイクロストラテジーを混同するものだ。

そもそも、政府がこの裁判に勝つ必要があるが、そのためには、最近コロンビア特別区で可決されたばかりの虚偽請求取締法(False Claims Act)を不公平に適応しなければならないかもしれないと、ウォール・ストリート・ジャーナル誌の取材に答えたある専門家は語っている。

さらにこのような懸念の背景には、セイラー氏が自ら数百万ドルを負担できず、邸宅やヨットよりもBTCを売却し、スリッページ(注文レートと約定レートとの差)を回避するために、小分けにして売るのではなく、市場に一気に売りに出すとの想定がある。

政府はさらに、マイクロストラテジーがセイラー氏個人の脱税の取り組みに関わっていたと証明する必要もある。

2014年、当時のマイクロストラテジー最高税務責任者は「脱税に関して懸念を抱き」、セイラー氏個人の脱税に会社も責任を負うことになる可能性について、セイラー氏に問いただしたと、司法長官は主張。

一方のマイクロストラテジーは、今回の裁判はセイラー氏「個人の税務上の問題」であり、「彼の日常的な問題」に関して、会社として責任は負っていないと主張している。

セイラー氏もまた、司法長官側の主張を否定し、自分はワシントンD.C.のジョージタウンにある歴史的邸宅やポトマック川に停泊するヨットに住んでいるのではなく、フロリダ州在住であると繰り返した。

弱気相場の反映?

破綻した暗号資産取引所マウントゴックスの債権者に対して予定されている返済によって、ビットコイン価格が落ち込むのではという噂と通じるところもある今回の懸念は、マイクロストラテジーがビットコインに対して持つ重要性から生じている。

マイクロストラテジーはBTC購入に40億ドル近くを使い、同社株式は、事実上のビットコインETF(上場投資信託)のように扱われるようになった。しかし、マイクロストラテジーは今でもしっかり資本を持っているし、長年にわたってキャッシュを生み出してきた。

かつて会計の不正で有罪となり、人々に自宅を売ってビットコインを買うように促し、自社がビットコインを大量に保有することで恩恵を受けた元CEOは、ソーシャルメディアではなく、裁判所に裁いてもらうのが良いだろう。

セイラー氏はかつて、いかにも彼らしく、コロンビア特別区を「地球上で最もパワフルな都市」と呼んでいた。この人は、誇張を好む傾向があるようだ。

最悪の事態となれば、ビットコインに通常よりも大きな売り圧力がかかるかもしれないが、セイラー氏がビットコインにどれほど肩入れしているかを考えると、そのような展開は考えにくい。

必ずしも蔓延しているとは言えないこの不安感は、弱気相場に見られる悲観主義のようなものだろう。投資家たちは神経が高ぶっていて、何かもっとひどい危機が起こるに違いないと怯えているのだ。

確かなことが1つある。誇大妄想に苦しまれていない人たちは、しっかり税金を納めよう。それが嫌なら、納める税金を最小限に抑えるために世界各地を移動するライフスタイル「ファイブ・フラッグ理論」について、調べてみても良いかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:マイケル・セイラー氏(CoinDesk)
|原文:Just Pay Your Taxes

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