アフリカで真のニーズを捉えた暗号資産:チェイナリシス

アフリカのサハラ砂漠以南(サブサハラ)では、少額の個人決済が暗号資産(仮想通貨)の他の地域では見られない普及と利用の原動力となっている。ブロックチェーンデータ企業チェイナリシス(Chainalysis)が9月29日に発表したレポートで述べた。1000ドル以下の決済が80%という世界で最も高い割合となっているという。

またレポートは、サブサハラでは世界のどの地域よりもP2P(ピア・ツー・ピア)取引が広がっていると強調した。サブサハラのP2P取引高は暗号資産の全取引高の6%を占め、2番目の取引高を誇る中央・南アジア&オセアニアの取引高を大幅に上回っている。

多くのアフリカ人は暗号資産を日常生活で使っているとレポートは述べた。P2P取引のほか、送金や商取引も、アフリカの高い普及率と利用率の大きな原動力となっている。

「暗号資産の利用は、富裕層による投機ではなく、日常の必要性によってけん引されている(中略)。特にナイジェリアやケニアなど、現地の法定通貨の価値が下がっている国で顕著だ」(レポート)

アフリカは何が違うのか?

一見すると、チェイナリシスのレポートに記された高い数字のいくつかは、世界で最も暗号資産の取引高が少ないアフリカの現状を物語っている(2021年7月〜2022年6月の取引高は1006億ドル)。

しかし、このレポートを詳細に見ると、第一に地域によって普及率や利用率がさまざまで、非常に多様な地域であること。第二に暗号資産に対する真のニーズが存在することがわかる。

地域による普及率と利用率の違い

レポートは同社のGlobal Crypto Adoption Indexに触れ、ブルキナファソやマラウイなどの国々とナイジェリアやケニアなどを比較。調査対象の146カ国のうち、ブルキナファソは133位、マラウイは137位、一方、ナイジェリアは11位、ケニアは19位。この普及度合い違いはアフリカにおける暗号資産の普及と使用の幅広さを強調している。

暗号資産への真のニーズ

チェイナリシスは、暗号資産を使って富を増やす西洋諸国と、厳しい経済状況の中で富を維持・構築するために暗号資産を使うアフリカ諸国を比べている。

「サブサハラには機関投資家レベルの大口トレーダーは存在しない」とナイジェリアの暗号資産コンサルティング企業兼開発会社Convexityの創業者、アデデジ・オウォニビ(Adedeji Owonibi)氏は述べた。

「市場を動かしているのは個人投資家。ナイジェリアには高学歴の若者がたくさんいるが、失業率が高く、仕事がない。若本たちにとって暗号資産は救済手段。家族を養うための手段」(オウォニビ氏)

広がるチャンス

暗号資産が日常生活に溶け込んでいる市場は、起業家やスタートアップにとってユニークなチャンスを提供する可能性がある。レポートは、弱気相場に直面しても、個人投資家の利用は変わらないか、あるいは増加すると述べた。

「少額の個人取引数は、5月に弱気相場が始まった時点から実際に増加している」(レポート)

個人、小売、P2Pの取引を促進するスタートアップは、アフリカで成功する可能性があるだろう。チェイナリシスによると、人気のP2P取引所Paxfulでは、送金ユーザー数が急成長しており、Paxfulの最大市場のナイジェリアで55%、ケニアで140%増となっているという。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto Is Quietly Thriving in Sub-Saharan Africa: Chainalysis Report