Web3にはアフリカが必要だ【コラム】

世界第2位のビットコイン(BTC)市場と、政府主導の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を抱え、ここ1年で暗号資産(仮想通貨)市場が1000億ドル以上成長した地域はどこだろうか?

暗号資産企業が多くある北米と思うかもしれない。あるいは、ビットコインが法定通貨になったエルサルバドルがあるラテンアメリカか。暗号資産市場が急速に成長を続けるアジアを思い浮かべる人もいるかもしれない。

しかし答えは、アフリカなのだ。

アフリカに特化したメディアAfrica Reportによると、アフリカの暗号資産市場は2021年9月、サブサハラのユーザーの保有する暗号資産が8000万ドルを超えるという節目を迎えた。これは、アメリカ人ユーザーの保有する暗号資産よりも多い。

GDPが世界のトップ50にはるかに及ばない北アフリカのモロッコは、暗号資産保有者数がとりわけ多く、人口の2.5%が何らかのデジタル通貨を保有している。

2020年から2021年にかけて、アフリカでの暗号資産による支払いは、1200%も増加。このような成長は、私が率いるAZAファイナンス(AZA Finance)のチームには、驚きではなかった。

アフリカで9年間事業を展開する中で、デジタルの世界につながる携帯電話を駆使する若い世代のおかげで、新しいテクノロジーの普及が大幅に増加していくのを見てきたからだ。

モバイルマネーの早期導入

暗号資産が登場する前から、アフリカの国々は携帯電話端末で使える電子マネー、モバイルマネーを受け入れていた。最初のモバイルマネー企業となるM-Pesaは2007年、アフリカの人たちがお金を使い、保管する方法に大きな変革をもたらした。ケニヤでのモバイルマネーの立ち上げは大成功を収め、M-Pesaがマーケットシェアの99%以上を独占した。

この成功が、モバイルマネーの広範な普及を引き起こした。現在、全世界におけるすべてのモバイルマネー取引の60%以上は、アフリカと関連するものだ。アフリカの人々は、新しいテクノロジーを受け入れる意欲があることを証明したのだ。

アフリカは歴史的に、植民地化の長引く影響と、世界の他の地域のステレオタイプ的な考え方のために、グローバルな変容から除外されてきた。過去の産業革命においては、アフリカの国々は労働力や天然資源を搾取され、その犠牲の上に西欧諸国が発展するのを助けてきたのだ。

多くの社会学者は現在、インターネットの広範な普及と、再生可能エネルギーへの移行の動きに牽引され、世界は4度目の産業革命の最中にあると考えている。ブロックチェーン、暗号資産、その他の分散型台帳テクノロジーは間違いなくこの革命で役割を果たすだろう。

アフリカはそのような変容の時代に参加するだけでなく、それを率いる助けとなるだろう。アフリカがウェブ3を必要としているというよりは、暗号資産の最新の進化ステップであるウェブ3が成功するには、新しいテクノロジーを取り入れる意欲と、より良い金融サービスを必要とする大きな人口を抱えたアフリカが必要なのだ。

暗号資産の必要性

金融インフラや通貨の安定性の問題を考えると、アフリカで暗号資産が人気なのは驚きではない。南アフリカのランドをはじめ、アフリカでも最も強い通貨でさえも、世界では最も価値の低い部類に入る。暗号資産は、通貨を保管、送るためのより安定した方法を提供してくれるのだ。

アフリカの金融インフラも状況は似ている。情報を安全に送受信するために銀行が使うグローバルなメッセージプラットフォームのSWIFTに加盟するグローバルな銀行が、新興市場の地元銀行との関係を再評価し、時には関係を断ち切るというディリスキングと呼ばれる動きに出た時、アフリカ全体で、国際金融サービスへアクセスするためのコストとその際に生じる摩擦が急増した。

アフリカの金融取引・決済インフラは十分に発達していなかったため(その一因は、アフリカやその通貨に対して西欧が抱えるネガティブなステレオタイプであることを忘れてはならない)、送金は困難で時間がかかり、費用もかさむものだった。

携帯電話を使ってほぼ即座に送ることが可能な暗号資産は、そのような障害を乗り越え、アフリカの人たちが家族に送金したり、eコマースに参加したり、ビジネスの機会を拡大させる方法を提供してくれる。

2020年に発表されたブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)のレポートは、アフリカでの送金における暗号資産の有用性を指摘。アフリカでの暗号資産取引における「個人サイズ(1万ドル相当未満)」の割合が高いことに、それが反映されている。

このレポートではまた、アフリカと東アジア間での暗号資産取引も多いことを指摘。東アジア地域で事業を展開するアフリカ企業にとって、事業関連の支払いをするのにより効率的であることと、アフリカで働くアジア人労働者の多くが、祖国の家族に送金をしていることが理由と思われる。

アフリカは、暗号資産が持つ分散化と国境を超える力を受け入れる準備ができている。しかし、暗号資産の世界は、アフリカの潜在力を認めて、支援する準備ができているだろうか?

アフリカにおいてこの先、ウェブ3と暗号資産の普及が盛んになるのは、当然の流れだろう。アフリカがこれまでのところ、暗号資産テクノロジーから完全に恩恵を受けることができていない一因は、国際企業、金融機関、その他の国際組織のトップたちが、時代遅れで非生産的な考え方を持っているからだ。

残念ながらこのようなリーダーたちは、アフリカが新しいテクノロジーを取り入れ、経済を成長させ、歴史的に根づいた障害を乗り越える大きな力を持っていることを、見落としているのだ。暗号資産業界を含めた世界は、イノベーションと成功の源として、確信を持ってアフリカと向き合うべきなのだ。

エリザベス・ロジエロ(Elizabeth Rossiello)氏は、グローバルフィンテック企業AZA Finance(旧BitPesa)の創業者兼CEOである。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Web 3 Needs Africa, Not the Other Way Around