4つのチャートで見る、FTX崩壊の内情

サム・バンクマン-フリード氏の暗号資産(仮想通貨)取引所FTXを取り巻く状況はきわめて厳しくなり、同社はライバルであるバイナンス(Binance)による買収に合意した。ブロックチェーンデータから今回のFTXの流動性危機を見ると、事態がいかに急速に悪化したかが理解できる。

引き出し額トップ10

出典:CoinDesk

バイナンスがFTXの買収に動いたことを理解することは、FTXの流動性問題を理解することでもある。

Nansenのデータをもとにした「引き出し金額トップ10」を見ると、ネクソ(Nexo)、サークル(Circle)、ジャンプ・トレーディング(Jump Trading)をはじめとするアドレスはこの1週間で、18億7000万ドル(約2720億円)を引き出している。

ネクソは、同社ホームページによると世界に500万人以上のユーザーを持つ暗号資産レンディングプラットフォーム。FTXから4億800万ドル相当以上のイーサリアム(ETH)を引き出した。

サークルは、1億2100万ドル相当のUSDコイン(USDC)を引き出した。

Coinglassのデータによると、過去24時間でFTXのビットコイン(BTC)保有高は、1万9941.64ビットコイン減少し、当記事執筆時点では36.14ビットコインとなっている。

ステーブルコインの流出

FTXの問題が引き金となったボラティリティは、ステーブルコインの流出を招いた。Nansenのデータによると、11月7日までの7日間でみると、FTXから最も多くのステーブルコインが移動(流出)している。その額は、約4億5100万ドル(約656億円)にのぼり、KuCoin、Crypto.com、OKXの流出額の合計を上回った。

具体的には、FTXのUSDコインとテザー(USDT)の保有高が劇的に減少した。4日から8日にかけて、USDコイン保有高は約1億3700万ドル、約84%減少。テザー保有高も1億9800万ドルから6800万ドルに減少した。

CryptoQuantによると、FTXのステーブルコインの保有高は現在、約1億5600万ドルで、10月24日から78%超の減少となっている。

「スマートマネー」引き出し額トップ10

出典:CoinDesk

さらに、アクティブな暗号資産トレーダーもFTXから資産を移動させている。過去24時間で、Nansenが「スマートマネー」に分類されたウォレットの引き出し金額トップ10は、合計約2億4660万ドル(約359億円)相当を引き出した。

Nansenは、以下の少なくとも1つに該当するウォレットを「スマートマネー」に分類している。

  • 投資ファンドのウォレット
  • DeFi(分散型金融)プロトコルのスシスワップ(SushiSwap)とユニスワップ(Uniswap)を利用して、10万ドル以上の利益を得たことがある
  • DEX(分散型取引所)でのオンチェーン取引のみを考慮した実現利益ランキングでトップ300アドレスに入っている

ジャンプ・トレーディングは、1億1800万ドルを引き出し、他を大きく引き離している。

注目すべきは、サム・バンクマン-フリード氏が所有するトレーディング企業アラメダ・リサーチ(Alameda Research)が、9200万BitDAO(約3500万ドル、約50億9000万円)をFTXから引き出していることだ。

FTXトークンの価格と取引高


FTXトークンは、11月2日にCoinDeskがFTXとアラメダ・リサーチの問題を伝えて以降、約79%下落し、取引高は劇的に増加した。

上のグラフは、FTXでの取引高のみを対象としており、FTXトークンの全取引高ではない。グラフを見ると、2日の報道をきっかけにFTXトークンは大きな注目を集め、大きな価格発見(需要と供給に基づいて適正価格を決定すること)があったことがわかる。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CoinDesk
|原文:These Four Key Charts Shed Light on the FTX Exchange’s Spectacular Collapse