米コインベース、ヨーロッパに注力する戦略とは──日本での事業は大半を停止

米コインベース、ヨーロッパに注力する戦略とは──日本での事業は大半を停止

米コインベース(Coinbase)は「暗号資産の冬」でアメリカ市場が冷え込むなか、ヨーロッパに新たな可能性を見出そうとしている。しかし、ヨーロッパへの拡大は同社の運命を逆転させるのに十分ではないかもしれない。

1月10日朝、同社はさらに20%のスタッフをレイオフを発表、日本での事業の大半を停止した(訳注:日本での事業については、まだ正式な発表はない)。

だがコインベースは常に苦境にあったわけではない。

活況から一転

2021年末、同社は暗号資産のメインストリームへの広がりのなかで活況を呈していた。株式や債券に投資したこともない投資家がドージコイン(DOGE)、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETC)といった話題の暗号資産を取引するために殺到していた。

2021年、売上は過去最高の78億ドルを記録、月間アクティブユーザーは300%増加した。

しかし、2022年5月、テラ(Terra)ブロックチェーンのステーブルコインUSTの下落が暗号資産市場を揺るがし、ビットコインは2年ぶりの安値まで下落、投資家はコインベースなどの中央集権型取引所からお金を引き揚げるようになった。11月、ライバル取引所のFTX破綻で状況はさらに厳しくなった。

投資家が暗号資産市場から撤退したことは、収益の約90%を取引手数料から得ているコインベースにとって存亡の危機となった。安定的に新規ユーザーを獲得できなければ、存続は難しくなるかもしれない。

ヨーロッパを見据える理由

同社が望んでいる救いの手は、ヨーロッパだ。EU(欧州連合)は加盟27カ国全体で暗号資産取引を規制する共通の枠組みとしてMiCA(Markets in Crypto Assets Regulation)を準備している。コインベースは主にユーザーに依存する収益モデルを維持するために、ヨーロッパで新しいトレーダーを見つけることを望んでいる。

コインベースは、MiCAの成立に先立って、2022年、イタリア、スペイン、フランス、オランダ、そしてEU圏外のスイスへの進出を始めた。ヨーロッパにおける規制強化が、未上場の競合他社に対する優位性をもたらし、大きな市場シェア獲得を促進することを期待している。

「拡大の取り組みを加速し、ミッションを実現しようとすることは、我々にとってほとんど存在に関わる優先事項のようなものだ」と国際・事業開発担当バイスプレジデント、ナナ・ムルゲサン(Nana Murugesan)氏は9月、ブルームバーグに語っている。

ムルゲサン氏はヨーロッパ進出を指揮しており、5人の地域ディレクターが進出先での運営を監督している。

さまざまなハードル

だが、コインベースのヨーロッパでの市場シェア獲得は、そう簡単ではなさそうだ。

なぜなら、同社が期待している規制強化は、ヨーロッパに競合他社の活動を抑制するほど厳しいものにならない可能性がある。コインベースは、バイナンス(Binance)やCrypto.comなどのライバルとの激しい競争に直面している。

同社は、収益の減少と株価の下落に対処するため、他の取引よりも規制リスクが高いデリバティブ取引サービスを強化し、ヨーロッパの顧客を魅了できる他の取り組みに向けてリソースを集中させる必要があるかもしれない。

コインベースの現在の収益モデルは、新規トレーダーに安定的に高い取引手数料を課す能力に依存している。だが、長引く市場低迷時に一番に市場から撤退するのはこうしたトレーダーだとMoffettNathanson LLCの上級株式アナリスト、リサ・エリス(Lisa Ellis)氏は述べた。

「価格が低迷した暗号資産の冬になると、そうした(初心者)個人投資家の多くはある種の冬眠に入る」(エリス氏)

FactSetによると、コインベースの2022年の売上高は前年からおよそ32億ドル(59%)減少すると予想されている。コインベースは、2023年の売上高は前年比でさらに減少し、損失は5億ドルにのぼると予想している。

実際、ユーザー数の減少に伴って、売上高と利益は低迷している。2022年第3四半期(7-9月期)、月間アクティブユーザーは850万人となり、第1四半期の920万人から減少した。おそらくより重要なことは、取引高が減っていることだ。

「暗号資産の冬が始まって以来、取引高はオフショアからヨーロッパにかなりシフトしている」(エリス氏)

ヨーロッパ・中東・アフリカの重要性

コインベースが2022年秋頃に株主に送った文書によると、アメリカでは2022年1月〜9月にかけて、月間取引高が50%以上減少した。一方、世界全体では18%だった。

海外でのこうした高い取引高と、EUの規模や人口が、同社がヨーロッパ市場に進出するきっかけになったとコインベースのEMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)担当バイスプレジデント兼地域マネジングディレクターのダニエル・セイファート(Daniel Seifert)氏は語った。

「地球上に80億人がいるなかで、アメリカには約3億人しかいないことを認識することが重要だ。我々はEMEAで確実に勝利したいと考えている。なぜならEMEAはグローバルで見たときに灯台のような性格を持っていると考えている」(セイファート氏)

MiCAの暫定的な承認も、同社のヨーロッパ進出にとって最適な時期であることを示していると同氏は述べた。MiCAは2月に最終的な承認を得ることができれば、2024年初めから施行される予定だ。

「上場企業として、我々はすでに、そしてきわめて長い間、非常に高いレベルの透明性を持っている。独立した監査人が四半期ごとに定期的に財務諸表や決算書をチェックしていることは、おそらく(規制当局の)承認を得る点で最も有利に働くことの1つだろう」とセイファート氏は述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:As Crypto Crashes, Coinbase Bets Big on Europe

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