インスタグラムのNFT機能、成功の秘密──完売が続出

インスタグラムは月間アクティブユーザーが約20億人と、世界でも最大のSNSプラットフォームの1つ。親会社のメタ(旧フェイスブック)は昨年、限られたユーザーがデジタルウォレットを接続し、作成または購入したNFTを紹介できる機能のテスト運用を開始した。

NFTクリエーターやコレクターは、Web3に興味を持つ消費者に自身のNFTをアピールできるチャンスとなると考え、この機能は人気を集めた。またインスタグラムがサポートしたことで、NFTがようやくメインストリームに普及すると示唆する声もあった。

テスト運用で完売続出

クリエーターエコノミーを取り込みたいと考えるインスタグラムは、ポジティブなフィードバックに励まされ、デジタルコレクティブル機能を徐々に拡大し、一部のデジタルアーティストがプラットフォーム上で直接NFTを発行、販売できるようにした。

インスタグラムのようなプラットフォームにNFT取引機能が追加されることは、その世界的に膨大なユーザー層を考えれば当然。ユーザーの多くは初めてWebウェブ3のコンセプトに触れ、インスタグラムの中核的なビジネスモデルに摩擦を加えることもない。インスタグラムユーザーは、法定通貨でNFTを購入でき、Web3新規参入者にとって通常なら難しいプロセスを省くことができる。

しかし、Web3ネイティブの人たちを惹きつけることは難しい。ベテランのNFTコレクターは、きわめて中央集権化されたWeb2プラットフォームで販売されているNFTの購入に興味を持つだろうか? さらに、インスタグラムのアプリ内購入には、アップルあるいはグーグルから15〜30%の高額な手数料も課されるため、販売者の収益は小さくなる。

それでもインスタグラムでの初期のNFT販売は成功を収めており、コレクションはすぐに売り切れとなっている。よく知られたNFTアーティストに新機能を宣伝してもらうというインスタグラムの戦略は、2つの意味で上手くいった。NFTコレクターを惹きつけ、Web2ユーザーとWeb3ユーザーの溝を埋めた。

Sandeep | Polygon 💜 Top 3 by impact
@AkuDreamsのNFTがインスタグラムで11秒で完売。
Powered by @0xPolygon!!

(引用されたツイート)
Aku 👨🏾‍🚀 Akutars
2023年、滑り出し好調
AkuのDream Labsデジタルコレクティブルがインスタグラムで11秒で売り切れ!!

画像は、Akuの将来において重要な場所のコンセプトアートのプレビューで、Akuがデジタル冒険家として地球を探索するなかで集めた幅広いアイテムが登場。

Web3開発者を引き込む

ブロックチェーンネイティブたちは、インスタグラムのWeb3進出に懐疑的だったかもしれないが、インスタグラムが有名なNFTアーティストと連携したことで、コミュニティ内には自信が生まれた。Drifter Shoots、Refik Anadol、Amber Vittoria、Dave Krugman、Micah Johnsonはこの数カ月の間にインスタグラムを使ってNFTを発表し、コレクションは毎回、完売している。

「私たちの多くが社会的メッセージを送っている場所を考えれば、デジタルコレクティブルはきわめて合理的」と2022年11月の最初のNFTリリースを伝えるインスタグラム投稿でアーティストのDave Krugmanは述べた。

Maliha AbidiやBobby Hundredsなど、他の人気NFTアーティストもインスタグラムでNFT作品を紹介し、潜在的な買い手にメッセージを伝える使いやすい方法としてインスタグラムのNFT機能を評価している。

「この機能の導入をうれしく思っている。NFTに関する対話をプラットフォームにもたらすだけではなく、NFTやWeb3に私たちが見ている明るい未来について再教育するチャンスにもなるからだ」とNFTコレクション「Adam Bomb Squad」を展開するBobby Hundredsは語った。

伝統的Web2企業がWeb3のツールを使おうとするときには、多くの場合、ギクシャクした関係が生まれがちだ。 NFTをリリースしたり、メタバースで土地を買おうとする試みが、ときにWeb3ファンに迎合するための宣伝行為と見なされ、あまり歓迎されない。

マス普及に向けた青写真

イメージ第一のインスタグラムがNFTを採用することをめぐる盛り上がりが拡大するなか、インスタグラムはメインストリームのユーザーにも、Web3ネイティブにも、自然に感じられる形でデジタルコレクティブル機能を導入するよう注意した。

例えば、インスタグラムユーザーは、他の画像と同じようにNFTをフィードでシェアできるが、デジタルコレクティブル専用のタブもあり、融合と分離を両立させた。

こうした配慮を反映するために、インスタグラムはデジタルコレクティブル機能の立ち上げにポリゴン(Polygon)を選択した。ポリゴンは、Web3参入を目指すWeb2企業のための「ファネル(じょうご)」となることを目標に掲げるポリゴンの戦略と一致している。

「私たちはポリゴンへのオンボーディングをきわめてシームレスに行うための優れたファネルを構築している」とポリゴンのライアン・ワイアット(Ryan Wyatt)CEOは以前、CoinDesk TVに語っている。

関連記事:我々は大企業のWeb3参入の「ファネル」:ポリゴン・スタジオCEO

ポリゴンを選択

ポリゴンと、ナイキ、レディット、スターバックスのパートナーシップもそれぞれ大きな成功を収めている。ブランドとWeb3の融合の包括的アプローチと、Web2企業のためにプロセスを簡単にすることに注力したアプローチが成果をあげている。

ブロックチェーン分析プラットフォーム、ナンセン(Nansen)のデータによると、ポリゴンのNFTエコシステムで初めてNFTを購入した人、繰り返し購入した人の1日あたりの数は先月、過去最高を記録した。

ポリゴンはまた、Web3ネイティブ企業との取り組みでも、コストはかかっているが成功を収めている。ソラナ(Solana)ブロックチェーンの主要NFTプロジェクトだったY00tsは先日、ポリゴンに移行したが、これは親会社のDeLabsに対して、ポリゴンが300万ドル(約3億9000万円)の助成金を提供した成果だった。

ナンセンのデータによると、ポリゴンでの1日あたりの取引数はイーサリアムの約3倍。1日あたりのユニークアクティブウォレットアドレス数は82万3000となっている。

しかし、二次市場(流通市場)における取引高は、イーサリアムには及ばず、Web3ネイティブ向けにプロジェクトを育成するのではなく、新規コレクターをオンボーディングすることに重点を置く低コストブロックチェーンとしてのポリゴンのポジションを反映している。

ポリゴンベースのプロジェクトの中には「NFT」ではなく「デジタルコレクティブル」という言葉の使用を選ぶところもある。これは、暗号資産市場を悩ませるさまざまな問題から距離を置くための動きだ。暗号資産の業界用語に馴染みのない新規参入者にも、よりフレンドリーに聞こえる。

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インスタグラムの体系的なWeb3参入はこれまでのところ、Web3参入を検討する他のWeb2ブランドに希望をもたらしている。

プロダクトやサービスを拡大し、これまでNFTマーケットを支えてきたWeb3ネイティブを孤立させることなく、Web3に興味を持った消費者に親しみやすい入口を提供するために、NFTなどの暗号資産が活用できることを示している。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:インスタグラムのデジタルコレクティブル機能(Meta)
|原文:Top NFT Artists Are Launching Projects on Instagram and Selling Out in Seconds