CoinDesk JAPANを運営するN.Avenueは、日本のWeb3を後押しすることを目的に、2023年7月より企業ビジネスリーダー限定のWeb3コミュニティ「btokyo club」を展開している。
国内外のキーパーソンを招いた月一回のオフラインでのラウンドテーブルを軸に、基礎動画講座、交流会など、会員企業・関係者を交えたオンライン・オフラインでの相互コミュニケーションによって、各社のWeb3担当者にインスピレーションをもたらし、事業展開に向けての具体的なヒントを提供できることを意図している。
会員限定のクローズ開催のため、内容を詳細に紹介できないが、ここでは過去2回のラウンドテーブルの概要を紹介したい。
Web3のメインマーケットは北米から欧州・アジアにシフトか?!
第1回目となった7月のテーマは「Web3のメインマーケットは北米から欧州・アジアにシフトか?!~クリプト規制に乗り遅れた米国 追い抜く日本・香港・欧州~」。日本ではWeb3に追い風が吹いているといわれるなか、Web3を取り巻く現状をグローバルに眺めた。
Briefing Sessionでは「クリプト大国・スイスから見えるWeb3のランドスケープ:2024年」と題して、HOME OF BLOCKCHAIN.SWISSのALEXANDER E. BRUNNER⽒がオンラインで登壇。同氏は、スイスのクリプトの歴史を振り返って、5つのポイントがあったと述べ、さらにブロックチェーンの3つのユースケースとして、「クリプト&DeFi(分散型金融)」「クリエイター・エコノミー」「デジタル・アセット」をあげた。さらにグローバルなトレンドとしては「テクノロジーの歴史上初めて、アメリカがリーダーシップとして迷⾛している」と述べた。
Q&Aでは、スイスのWeb3の海外展開の方針や課題、スイスの規制の特徴について、参加者と議論を交わした。
Main Sessionでは、工藤 秀明氏(野村ホールディングス株式会社 デジタル・アセット推進室 Executive Director)、三塚 英毅氏(Animoca Brands株式会社 Chief Operating Officer)、エミリー・パーカー 氏(Executive Director of Global Content at CoinDesk)が登壇。
工藤氏は、セキュリティ・トークン(デジタル証券)や、スイスでのデジタル資産子会社「レーザー・デジタル」設立など、野村ホールディングスのデジタル・アセットへの取り組みを紹介。「まだ規模は小さいが、機関投資家参⼊の⼟壌は広がっている」と述べた。
次に三塚氏は、Web3業界におけるグローバルトップ企業を自負するアニモカブランズの取り組みを紹介。日本では、Web3のマスアダプションに向けた法⼈向けサービス / トークンアドバイザリー事業しており、Webのマスアダプションには「既存ビジネスを補完・強化する取り組み」がまず重要になるだろうと語った。
最後にパーカー氏は、日米の規制の動きを概観。規制当局も複雑なアメリカに比べて、「日本は金融庁が唯一の規制当局」であり、日本にとってはチャンスと述べた。
参加者からは、セキュリティ・トークンの件数が増えている背景、現状のボトルネック、成功するWeb3プロジェクトの特徴、Web3の利用者側のメリット、チャンスと言われている日本が世界から評価されるためになすべきことはなにか、アメリカはなぜ規制が迷走しているのかなどの質問が寄せられた。
特に「⽇本にとってはチャンスだが、Web3以前にすでに20年くらい遅れを取っている。チャンスとはいえ、タイムリミットを意識することが不可⽋ではないか」との参加者の言葉が印象的だった。
日本で動き出した「ステーブルコイン」、商機到来か?!
第2回目の8月のテーマは「日本で動き出した「ステーブルコイン」、商機到来か?!~巨大トークン経済を動かすドル、円連動コインの可能性~」。6月に改正資金決済法が施行され、期待の高まるステーブルコインについて、議論を行った。
Briefing Sessionでは「アジアで存在感を強めるCircle、世界最⼤級のステーブルコイン『USDC』を発⾏する⽶国企業に聞く、⽇本市場の⾏⽅」と題し、Vice President, Strategy and Policy for CircleのYam Ki CHAN⽒がシンガポールから来京して登壇。サークルの歩み、USDCの現状をはじめ、ステーブルコインはまだ黎明期にあること、CircleはWeb2企業のWeb3移行を支援していることなどに触れた。さらに規制についての現状を整理し、今後は各国の「Harmonization(調和)」が重要になると語った。
Q&Aでは、Harmonizationを誰が主導すべきか、ステーブルコインのユースケース、Circleの今後の戦略などについて参加者とリアルにやり取りした。
Main Sessionでは、波多野恵亮⽒(アンダーソン・⽑利・友常 法律事務所 外国法共同事業 パートナー弁護⼠)、千野剛司⽒(Binance⽇本代表)⿑藤達哉⽒(三菱UFJ信託銀⾏株式会社 Vice President of Product デジタル企画部|デジタルアセット事業室)が登壇。
波多野氏は、ステーブルコイン規制の概要、各事業者による規制について説明。一部、複雑な面もあり、理解の難しいステーブルコイン規制について、ポイントをわかりやすく解説した。
千野氏は、ステーブルコインをめぐる状況、ニーズ、メリット、さらには日本国内におけるビジネス機会を紹介。グローバルでは厳しい状況が続いているものの「マーケットには旺盛なニーズが存在している」「プログラマブルであることが一番重要」と述べ、まずは暗号資産エコシステムでの利用が進むが、いずれ「伝統的金融(TradFi)との融合が進むだろう」と述べた。
⿑藤氏は、同行が進める信託型ステーブルコインについて紹介。「最も制約がない類型」とアピールし、面倒な部分は信託に任せて「ビジネスオーナー、委託者という立場で(ステーブルコイン発行を)実現できると語った。また日本でステーブルコインが登場する時期についても語った。
参加者からは、日本におけるキラー・ユースケースはなにか、ペイパル参入をどう捉えるか、クロスボーダー取引の実現可能性など、きわめて具体的な質問が寄せられた。
日本でのステーブルコイン発行は、準備金(裏付け資産)に対する厳しい規制があり、「マネタイズポイントをどこに見出だせるかにかかっている」が、登壇者からはいくつかのヒントが提示された。
【btokyo club 9月ラウンドテーブル】
ウォレットの大競争時代が始まった!~トークン経済で爆ダウンロードされるウォレットとは?~
9月は、Web3のマスアダプションの鍵を握ると言われている「ウォレット」がテーマ。海外からは暗号資産ウォレット「メタマスク(MetaMask)」を手がけるコンセンシス(ConsenSys)の海外展開責任者Laura Shi氏が参加。Main Sessionは、白石陽介氏(JCBA web3TF副座長)、舘林俊平氏(KDDI株式会社 Web3推進部長 兼 BI推進部)、中村奎太氏(株式会社メルコイン 代表取締役CEO)、野田直路氏(ビットバンク株式会社 取締役CTO)という、さまざまな立場でウォレット開発に携わる関係者が登壇する。
日時は、9月27日(水)16:00〜20:00。
クローズドで行われるメリットを生かし、毎回、ディープなやり取りが展開される「btokyo club」。参加にご興味・ご関心を持たれた方は、以下のフォームからお問い合わせください。
|テキスト:btokyo members
|編集:CoinDesk JAPAN