「国産ステーブルコイン」の真の狙いとは?──三菱UFJ信託銀行が共同検討を開始

「株式会社Progmat」の設立とともに三菱UFJ信託銀行は11日、資本系列を超えた複数の金融機関と横断的に協働し、グローバルに流通可能な「国産ステーブルコイン」の発行に向けた共同検討を開始したと発表した。

国産ステーブルコインには、デジタルアセット全般の発行・管理基盤「Progmat」の構成要素のひとつである「Progmat Coin(プログマコイン)」基盤を利用する。Progmatは、セキュリティ・トークンを扱う「Progmat ST」基盤、ユーティリティ・トークンを扱う「Progmat UT」基盤、ステーブルコインを扱う「Progmat Coin」基盤などから構成されている。

Progmat 代表取締役 Founder&CEOに就任予定の齊藤達哉氏

株式会社Progmat設立に続き、プレゼンテーションを行った齊藤達哉氏は、そもそも銀行がなぜ、ステーブルコインに取り組むのかについて、「Web3分野で新しいビジネスを開拓していくことが一番のモチベーション。銀行が連携して新しいものを作っていきたい」と述べた。

次に日本のステーブルコイン法制について概説し、信託型ステーブルコインは「ライセンス不要」かつ「倒産隔離された安全性」があり、最も制約のない類型と位置づけた。

さらに、そうした信託型ステーブルコインの特性を利用したステーブルコインの発行パターンは、発行依頼者別に見て「銀行コイン、海外コイン、自社コイン」の3つが考えられるとし、3パターンのプロジェクトで「約1000兆円と言われる法人決済/貿易決済を狙う」と将来像を語り、2030年までに約2300兆円にのぼると推定されるRWA(現実資産)のトークン化市場も視野に入っていると続けた。

ステーブルコインのメリット

この「銀行コイン」をどこか1行単独で手掛けるのではなく、各行が連携してビジネス面・技術面の知見を共有しつつ、共通基盤としてProgmatCoinを活用することで、利用者に高い利便性を提供するとともに、日本発の高品質なステーブルコインとしてグローバルなデジタルアセット市場も狙っていこうというのが「国産ステーブルコイン」だ。

株式会社Progmat、そしてProgmat Coinが担うのは、あくまでもインフラ部分。インフラ事業者にとっては、利用者が増えれば増えるほど事業メリットは大きくなり、運用コストは低下していく。企業の枠を超え、業界全体での利用を図っていくことは当然の戦略といえる。

クロスボーダー決済におけるステーブルコインのメリット

ステーブルコインは、企業間の貿易決済、例えば自動車メーカーや商社などでの利用に大きな可能性があると考えられているが、実は「銀行自体にも大きなメリットがある」と齋藤氏は語った。

具体的には、外国為替の送金事務は煩雑な作業であり、特に「地銀が各行ごとに体制を維持することは大きな負担」になっている。外国為替がステーブルコインに置き換えられ、そのための基盤も自社で構築・維持するのではなく、Progmatを利用することで、省力化とコスト削減が実現できるという。

国産ステーブルコイン発行は2024年前半

具体的には、まず、裏付け資産を紐付けない形で概念実証を行い、商用化フェーズ1では、国産ステーブルコインの速やかな発行、フェーズ2では、利便性の最大化を図っていく。なお、発行対象のチェーンは、イーサリアム(Ethereum)だ。

すでに「複数の銀行と話をしている」が、現段階で明らかにできるのは三菱UFJファイナンシャルグループとの共同検討のみ、他は各行の状況に合わせて明らかにしていくとした。ステーブルコインの発行依頼者(委託者)を三菱UFJ銀行として、共同検討を開始する。

国産ステーブルコイン発行の時期について齊藤氏は、改正資金決済法が今年6月に施行されてから、「第1号業者」がライセンスを取得するまで約1年かかり、国産ステーブルコインの発行は2024年前半だろうと述べた。

イーサリアムを利用する意味

パブリックブロックチェーンであるイーサリアムを利用することは、国内のみならずグローバルでの展開を考えたときに大きな意味を持つ。簡単に言えば、国産ステーブルコインの海外展開が容易になり、あるいは海外で展開されているパブリックブロックチェーンを使った他のステーブルコインとの相互運用性も確保しやすくなる。つまり、取引のハードルが下がる。

今回の発表によって、日本でのステーブルコイン発行の可能性は一段と高くなった。国内での企業間決済に大きな期待がかかるが、企業活動は国内にとどまらない。実は、国産ステーブルコインは、日本が世界に先駆けてステーブルコイン法制を整えたこともあって、世界で最も信頼性・安心感の高いステーブルコインとなり得る。つまり、グローバルで見たときにも法人利用においては、今、最も信頼性が高いとされる米ドル連動型ステーブルコインのUSDコイン(USDC)に対抗するものになり得る。

今回のリリースのタイトルは「グローバルに流通可能な『国産ステーブルコイン』発行に向けた金融機関横断の共同検討参画について」となっている。一見すると、「国産ステーブルコイン」、銀行の枠を超えた「金融機関横断」などに目が行ってしまうが、イーサリアムブロックチェーンを使い、グローバル展開を視野に入れていることが最大のポイントと言えそうだ。

|文:増田隆幸
|画像:リリースより