NFTは終わっていない:大手メディアの扱いに疑問

雑誌『ローリングストーン』のWebサイト「Rollingstone.com」は先日、NFTの終わりを告げる記事で注目を集めた。

センセーショナルに『Your NFTs Are Actually – Finally – Totally Worthless』(あなたのNFTは実際に、ついに、まったく価値がなくなった)と題された記事は、金融専門家コミュニティ「dappGambl」による新しい調査結果を取り上げた、厳しい内容の記事。そして、多くの人の神経を逆撫ですることになった。

確かに、記事には十分な内容があり、少なくとも見出しを見て判断する限りでは、完全に間違っているわけではない。ほとんどのNFTが実は無価値であることは、ある意味事実だ。

調査では、7万3257のNFTコレクションのうち、6万9795のNFTの価値が0(ゼロ)ETHであることが判明した。これは全体の95%で、ほぼ「すべて」と言える。調査によると、現在2300万人が価値のないNFTを保有しており、投資家にとって厳しい状況であることは間違いない。

「この調査の対象となったコレクションのうち、完全に所有されているのはわずか21%で、5つのコレクションのうち約4つが売れ残っていることになる」と、ライターのマイルズ・クリー(Miles Klee)氏は指摘する。

「買い手の目が肥えてきているため、『明確なユースケースや魅力的なナラティブ、真の芸術的価値を欠くプロジェクトは、注目を集め、販売することがますます難しくなってきている』」

だが、NFTは本当に死んだのだろうか? そうとは言えない。

取引高は確かに減少しているが、0ではない。The Blockが収集したデータによると、先週の取引高は約6300万ドル(約91億円、1ドル145円換算)に達した。2月に見られた週3億6000万ドル超の取引高とは雲泥の差だが、何もないわけでもない。

さらに、コレクションの5%は実際に価値がある。この記事によれば、調査は「インターネット上で醜い猿のイラストを売りさばく人々をあまり見かけなくなった」理由を説明するものだという。しかし、Bored Ape Yacht Club(BAYC)のNFTは実際、立派に取引されている。平均価格は約4万2000ドルだ。

極端さを追い求めるメインストリームメディア

今回、NFTの正確な売買動向よりも重要なことは、この記事が浮き彫りにしたメインストリームメディアの傾向だ。メディアは、極端なものや最悪の状況を探し、人目を引く見出しを作る。

ローリングストーンは昨年11月、『The NFT Bubble Has Burst, but the Value For Creators Is Just Heating Up』(NFTバブルは崩壊したが、クリエイターにとっての価値はますます高まっている)という見出しを掲げたばかりだ。

さらに昨年夏には、最も有名なNFTコレクションのひとつであるBored Ape Yacht Clubとの提携を大々的にアピールした。「これは、ローリングストーンのお墨付きでBAYCのアート作品を持ち帰ることができるまたとないチャンス」だと。そして今は、同じように大げさな表現で埋め尽くされ、正反対のメッセージを伝えている。

暗号資産(仮想通貨)を長年取材してきた人なら、見覚えのある展開だろう。ビットコインは失敗だと、数え切れないほど見放されてきたが、それでもいまだに動き続けている。何百万人ものファンがいて、価格は現在2万6000ドルを超えてり、これは何でもない数字ではない。

もちろん、高値と安値はあったが、NFTのように有用なテクノロジーが完全に消えてしまうという考えはバカげている。NFTは、実際には存在しないアイテムや実在のアイテムをデジタルに変換し、追跡や取引を可能にするものだ。それがアート市場に反映されるかどうかは別として、広く応用できるアイデアだ。

ここでより重要なストーリーは、現実の世界はニュアンスに満ちているにもかかわらず、メディアは極端さを探し求めるため、信頼性を失っているということだ。その結果として、暗号資産業界の多くの人が「すでにニュースに耳を貸さなくなっている」と、私の同僚ダン・クーン(Dan Kuhn)は先日、この現象について指摘した。

メディアが世界は上向きだと言おうが、下向きだと言おうが、人々は開発を続け、メディアを無視している。現実は、どこかのジャーナリストが言うような枠にはめられたものではない。テクノロジーから、有用なものを生み出している。素晴らしいことだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Bored Ape Yacht Club #3001(OpenSea, CoinDeskが加工)
|原文:NFTs Aren’t Dead Just Yet (But the MSM Might Be)