コインベース、分散型金融のコンパウンドとdYdXに200万USDCを投資

コインベース(Coinbase)は、分散型金融(DeFi)エコシステムを成長させるための取り組みの一環として資金を投入している。

2019年9月10日(現地時間)の発表によると、コインベースはレンディングプロトコルのコンパウンド(Compound)とdYdXに、それぞれ100万USDCを投資している。

「USDCブートストラップ・ファンド(USDC Bootstrap Fund)」と呼ばれる新しいファンドは「プロトコルに直接USDCを投資する」ことによって開発者を支援するとコインベースは述べた。

USDCは、コインベースが2018年に仮想通貨金融スタートアップのサークル(Circle)と共同でローンチした、ドルに連動したステーブルコイン。イーサリアム関連の情報サイト「イーサスキャン(Etherscan)」のデータによれば、現在、4億4300万ドル(約477億円)相当のUSDCトークンが流通している。

USDCトークンをDeFiプロトコルに投資することは、コインベースにとって新たな投資の形態。コインベースのプロダクトマネージャー、ネミル・ダラル(Nemil Dalal)氏によると、今回の動きは、同社のインキュベータープログラム、コインベース・ベンチャーズ(Coinbase Ventures)による典型的な投資とは重要な点で異なっている。

「我々が投資するUSDCトークンは、給料やユーザー獲得といった目的には利用できない。単純にプロトコルにより大きな流動性を提供し、(分散型レンディング・プロトコルの場合には)借り手を、(分散型取引所の場合には)買い手を引き付けることをより簡単にする」とダラル氏は述べ、次のように続けた。

「USDCブートストラップ・ファンドの目標は、サプライサイドをより楽にし、プロトコルの成長を可能にすること」

dYdXの運営責任者ジョウシュウ・イン(Zhuoxun Yin)氏によると、このような取り組みは、コインベースにとっても、参加するDeFiプラットフォームにとっても相互に利益となる。

「まったく異なるタイプの投資」とイン氏。

「プロトコルの流動性を自力で高めることを助け、USDCの利用を促進するために、プロトコルに資金を提供している」

コンパウンドのCEO、ロバート・レシュナー(Robert Leshner)氏は、USDCブートストラップ・ファンドは「オープンファイナンスの合法化の出発点」と捉えることもできると付け加えた。

「コインベースは金融機関であり、同社がオープンファイナンスのアプリケーションに関与しているという事実は、他の組織にも同じことを促す掛け声と捉えられることになるだろう」とレシュナー氏は述べた。

USDCを初めて組み込んだり、プラットフォーム上での資産の流動性を高めたいと望む他のDeFiアプリケーションは、オンラインフォームを通じてUSDCブートストラップ・ファンドに申し込むことができる。

双方にとってのリスク

コインベースにとっては、DeFiサイトが依存しているスマートコントラクトのセキュリティーが懸念となる。コインベースのデュー・ディリジェンスチームは、100万USDCの投資を約束する前に、dYdXのコードを徹底的に調べ上げたとイン氏は述べた。

dYdXにとっての懸念は、主要な流動性プロバイダーが、流動性の提供を停止する選択をする可能性があることだ。

「dYdXに追加される資産はすべて、システム全体を担保することに役立ちます」とイン氏は述べた。

「USDCがコインベースによって引き出される多少のリスクはあります。よって、双方にリスクがある。我々はお互いに、誠意を持っていることに安心しており、我々は皆、ユーザー・セキュリティーを極めて真剣に捉えている」

そうであっても、コインベースのダラル氏は、USDCブートストラップ・ファンドを通じたいかなる投資も、対象となっているDeFiプロトコルを推奨するものではないと強調した。

「プロトコルに投資する人は皆、DeFiプロトコルにトークンを投資する前に、自分自身で精査すべき」とダラル氏は述べた。

とはいえ、コインベースにとって、USDCトークンをコンパウンドとdYdXの双方に投資することには即時的な利点がある。つまり、コインベースを含む、これらのDeFiアプリケーションのすべてのユーザーに利益が約束されている。

USDCアカウントの現在の利率はコンパウンドdYdXでそれぞれ、5.03%、5.35%となっている。

レシュナー氏は今回の投資を「コインベースにとって堅実な財政上の決断」と呼び、コンパウンドでのUSDCは、ユーザーにとって2番目に高い報酬率を生むと述べた(DAIの利率は9.68%)。

だが、イン氏によると、そうした利益はコインベースがUSDCブートストラップ・ファンドをローンチした決定の裏にある主要な動機ではない。

イン氏は以下のように述べた。

「(コインベースが)副産物として獲得する利子は、役に立つ可能性はある。しかし、コインベースの収益を考えると、利子収入はごくわずかなもの」

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Brian Armstrong image via CoinDesk archives
原文:Coinbase to Invest $2 Million USDC in DeFi Protocols Compound and dYdX