イーサリアムのブテリン氏、一部のレイヤー2機能をメインチェーンに戻す計画を発表

イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は、3年前にブロックチェーンの計算負荷の多くを「ロールアップ」とも呼ばれるレイヤー2ネットワークに移行させることを主張したが、最近機能の一部をメインチェーンに戻す計画を発表した。このアイデアは「安置されたzkEVM」と呼ばれている。

ゼロ知識証明とEVM

ポリゴン(Polygon)、マター・ラボ(Matter Labs)、スクロール(Scroll)の「ZK(ゼロ知識証明)ロールアップ」を含む著名なレイヤー2プロジェクトが、以前のロードマップを実現するために多額の投資を行ってきており、ブテリン氏の「安置されたzkEVM」は破壊的なものとなる可能性がある。新しいネットワークはすでに稼働し、プロジェクトリーダーは開発者の採用に取り組んでおり、すでにユーザーから数十億ドル規模の入金を集めている。

「zkEVM」は、将来世代のブロックチェーンを強化するための主要なテクノロジーと見なされている暗号化の一種「ゼロ知識」を表す「zk」と、ほとんどのイーサリアムアプリケーションが実行されるプログラミング環境である「EVM(Ethereum Virtual Machine:イーサリアム・バーチャル・マシンイーサリアム)を組み合わせたものだ。

ポリゴン、マター・ラボ、スクロールの新しいロールアップネットワークにはそれぞれ、いずれかのバージョンのzkEVMがシステムに組み込まれている。ロールアップネットワークはユーザーのトランザクション(取引)を集約することで機能し、イーサリアムネットワークにかかる負荷を軽減してエンドユーザーに処理の高速化という恩恵をもたらす。こうしたネットは集約されたトランザクションを、正しく記録されたことを示す暗号化された保証である「ゼロ知識証明」と併せてレイヤー1のイーサリアムネットワークに送り返す。

ブテリン氏はイーサリアム財団のウェブサイトに掲載された最新のブログ投稿で、ブロックチェーン上のデータの読み込み・検証を行う上で、ハードウェアの負担が大きいフルノードよりも簡素でデータ集約度の低い方法である「ライトクライアント」が今後数年間で「ますます強力」になるだろうと主張。イーサリアムのライトクライアントは、ゼロ知識暗号化を使用してレイヤー1ブロックチェーン上で実行されるトランザクションを完全に検証できる段階に「間もなく到達するだろう」と述べた。

ブテリン氏は、「その時点で、イーサリアムネットワークには実質的にzkEVMが組み込まれることになる」とし、「そこで疑問が生じる。なぜそのzkEVMをロールアップでもネイティブに利用できるようにしないのか?」と述べた。

レイヤー2ブロックチェーンの今後の展開は?

ブテリン氏のコメントは、今年デジタル資産市場が上昇する中、イーサリアムブロックチェーンのネイティブトークンであるイーサリアム(ETH)が競合ブロックチェーンのトークンに後れを取っている中で出されたものだ。イーサリアムは84%上昇したが、ソラナ(SOL)は8倍以上、アバランチ(AVAX)は3倍上昇した。ビットコイン(BTC)は153%上昇している。

数年にわたりイーサリアムブロックチェーンの「ロールアップ中心」のロードマップを推進してきたブテリン氏は、自身の新しい計画の下でもレイヤー2ネットワークの役割はまだあるとしている。

ブテリン氏は、「現在レイヤー2チームが独自に実装しているEVM検証機能がプロトコルによって処理されることになるが、レイヤー2プロジェクトは依然として多くの重要な機能を担当することになるだろう」と述べた。

かなり技術的になるが、ブテリン氏によれば、そうした機能には「迅速な事前確認」、「MEV(maximal extractable value:最大抽出可能価値)緩和戦略」、「EVMへの拡張」、「ユーザーと開発者向けの利便性」が含まれるという。

ブテリン氏は、「レイヤー2チームは、ユーザーやプロジェクトをそのエコシステムに引き付け、歓迎されていると感じさせるために多くの仕事をしている」とし、「ネットワーク内でMEVと混雑の際の手数料を得ることでこれに対する補償を受けている。この関係は継続するだろう」と述べた。

|翻訳・編集:林理南
|画像:Bradley Keoun/modified by CoinDesk
|原文:Ethereum’s Buterin Floats Prospect of Taking Some Layer-2 Functions Back on Main Chain