LINE出資のファンドを手掛けるVC、今度は仮想通貨ファンドで慎重なアジアの投資家を獲得へ

香港に拠点を置くベンチャーキャピタルグループのCMCCグローバル(CMCC Global)は、適格な投資家に仮想通貨への門戸を開くリバティ・ビットコイン・ファンド(Liberty Bitcoin Fund)を立ち上げた。これは、仮想通貨に強い関心を寄せるものの直接的な購入には慎重なアジアの投資家を念頭に置いたものだ。

同ファンドは、ビットコインの単一資産でパッシブなトラッカーであり、購入や保管などのサービスを提供している。

同社のマネージング・パートナー、マーティン・バウマン(Martin Baumann)氏は「ここ数年、お付き合いのある投資家の皆様から、ビットコイン購入に関するサポートの有無についての問い合わせが増え続けていました」と CoinDesk に対して語った。「我々の新しいファンドは紛れもなく需要の上に成り立ったものです」

同社は、2016年以降、3つのファンドを立ち上げている。その3つともに、開発者がアプリケーションを構築できるイーサリアム・ネットワークのような、専有的な技術インフラに対する投資を中心としている。

それらのファンドは、富裕層、ファミリー・オフィス(資産家一族の資産管理を担う組織)の資産、および機関投資家から、長期にわたって資金を調達している。CMCCリキッド(CMCC Liquid)はベンチャーキャピタルのシリーズでの最初の資金調達で、100万ドル(約1億800万円)を集め、後に続く2つのファンドも、それぞれ350万ドル(約3億7,900万円)と3,000万ドル(約32億5,000万円)を集めた。

プライバシーと規制上の問題から投資家の身元を明かすことはできないとしつつも、3つ目のファンドのアンカー投資家は、アジアで最大級のファミリー・オフィスであると、バウマン氏は語った。

日本のメッセージ・アプリ、LINEも3つ目のファンドに投資したと同氏は付け加えた。

資産クラスとして需要の高まる仮想通貨

従来型のファンドに資産クラスとしての仮想通貨を、という要望が高まってきていると業界のプロたちが述べた。

「ミューチュアル・ファンドや上場投資信託へ組み込まれたように、デジタル資産が成熟し、認知度の高まりが進むにつれ、ボラティリティも徐々に落ち着き、マルチ・アセット・ポートフォリオへの投資により適した状態になる」と、運用会社のCLSインベストメント(CLS Investments)でポートフォリオ・マネージャーを務めるコスタ・エトゥス(Kostya Etus)氏は CoinDesk に語った。

デジタル資産は、ポートフォリオ上、合理的な投資であると認識されつつあり、ミューチュアル・ファンドは仮想通貨を保有する上で最も利用しやすい方法の1つになっている。

「デジタル資産用に口座を開設したくない投資家も、通常の証券口座でミューチュアル・ファンドを購入することができ、自身の資産を同じ場所で管理できる」と同氏は述べた。

仮想通貨は、債券や株式といった従来の資産クラスほど安定的でないかもしれないが、その価格変動はその他の資産クラスとは相関しない傾向にあり、既存のポートフォリオに仮想通貨を加えることで多様化の効用が増す、と同氏は指摘する。

利点はあるものの、ビットコインのようなデジタル資産のボラティリティは非常に高く、時には他の資産クラスが数年間かけて見せるような値動きより激しい動きを、1日で見せる、と同氏は述べた。「これほど強烈なボラティリティは、ポートフォリオのリターンにとって危険で有害にもなり得る」

加えて、アジア太平洋地域は最も資金力のある地域の1つであり、投資家たちは様々な資産クラスへの投資を熱望している。

2019年1月に発表されたPwCのレポートによると、アジア太平洋地域における運用資産は、2017年の15.1兆ドル(約1632兆6,000億円)から、2020年には16.9兆ドル(約1,827兆2,000億円)へ、2025年には約2倍の29.6兆ドル(約3,200兆3,500億円)へ増加し、8.7%の年平均成長率(CAGR)が見込まれている。

仮想通貨投資のアジアにおける限られた機会

アジアにおける仮想通貨投資は、思われているほど一般的ではない。

「もしあなたが香港もしくは世界のどこかにいる大富豪だとして、台帳が無く、アナリストにビットコインの購入を依頼するのですが、そのアナリストが持ち逃げしてしまう。そんなのでは機能しないですよね」とバウマン氏は述べる。

同氏によれば、CMCCは、アメリカのグレースケール(Grayscale)と同じレベルでデジタル資産の管理をアジアで提供することを目指し、リバティ・ビットコイン・ファンドをローンチする。

「投資家は、ニューヨークのグレースケールのような、制御された投資の環境整備が必要でした」とバウマン氏は述べた。「我々は、それと似たことをアジアで行っています」

同社が2016年にデジタル資産への投資を開始した際、株式や債券ファンドであれば簡単に見つかるであろう会計監査や資金管理といった基本的なサービスですら見つけるのが困難だった。

「そういったサービスは存在していませんでした。仮にファンドの管理者に接触したとしても、デジタル資産もしくは仮想通貨企業の取引をしない人ばかりなので、取り合ってもらえないでしょう」と同氏は述べる。「また、銀行に接触したとしても、銀行のキャッシュカードを手に入れるだけでも一苦労でしょう」

「監査人も必要で、有資格のファンド管理者も必要で、プロフェッショナルなケアも必要です」と同氏は述べた。「アンチマネーロンダリングの担当者も必要で、とりわけプロのカストディアンが必要です」

翻訳:石田麻衣子
編集:T. Minamoto
写真:Shutterstock
原文:New Bitcoin Mutual Fund Eases Crypto for Wary Asian Investors