ゲーム特化型ブロックチェーンのOasysは、米テキサス州オースティンで開催されたグローバルな暗号資産・Web3カンファレンス「Consensus 2024」で、ゲームとブロックチェーンの現状にさらなるイノベーションをもたらすアイデアとロードマップを発表した。
ゲームは、Web3のマスアダプションを実現する最有力のユースケースとして、日本はもちろん、世界でも注目されている。しかし、Oasys代表の松原亮氏は「ブロックチェーン、Web3はゲームを必要としているが、実はゲームもブロックチェーンによるイノベーションを必要としている」と語る。
ゲーム人口はいまや世界で40億人に達すると推定され、ほぼ飽和状態。SNS、動画サービスなどとのユーザーの可処分時間の奪い合いもますます激化している。
「新作ゲームの売れ行きは悪く、人気トップ10のゲームが10年間変わらないような状況が続いている」と松原氏。新しいゲームが出ても、人気を集めることができずに短期間でサービスが終了。ユーザーが費やしたお金や時間がサービス終了とともに消散して無駄になってしまい、結局、古くからのゲームに人が集まるというイノベーションが生まれづらい環境から抜け出せないでいるという。
Gaming Asset:実績、記録も資産として捉える
松原氏は、ブロックチェーンがこの環境を打破する変化をもたらすと考えている。すなわち、ブロックチェーンを活用することで、ユーザーがゲームに費やしたお金や時間は「消費から資産に変えることができる」と語る。
ただし、注意したいのは資産化したからと言って、全ユーザーにプラスの収益を提供することはできないことだ。全員が儲けられるスキームは「ポンジ」になってしまう。ゲームがエンターテインメントとして成立しており、ユーザーから対価を得られることが大前提。「エンターテインメントと資産化のバランスが重要になる」と松原氏は強調する。
さらに松原氏は「ゲームの記録や獲得したトロフィーなどもプレイヤーの資産」と位置づけ、それらを含めて「Gaming Asset」と呼んでいる。仮にゲームそのものは終了しても、ブロックチェーンを活用することで、Gaming Assetはユーザーの実績、記録として残るというわけだ。こうした捉え方は、Web3ゲーム、あるいはPlay to Earnゲームが持つ構造的な問題点を乗り越えるための有力な手がかりになるだろう。
ブロックチェーンの問題点とOasysの先見性
ブロックチェーンがゲームにもたらす変化を指摘した松原氏は、一方で「実は、今のブロックチェーンはゲームに向いていない」と語る。
Ethereum(イーサリアム)は、DeFi(分散型金融)と新規通貨発行が最大のユースケースとなり、スケーラビリティを解決するためにさまざまなレイヤー2(L2)が誕生した。しかし、各L2が独自エコシステムを拡大させたことで、今後はL2間のインターオペラビリティが課題として浮上。その解決策としてL1.5が登場し、L1.5のセキュリティとインターオペラビリティを解決するために、さらにL3といった新たなアイデアも生まれている。また、スケーラビリティの観点からEthereumはL2のデータを破棄しようとしているので、Data Availability Layer(DA Layer)を構築する動きもある。
ユーザー獲得、流動性確保のためのトークンマーケティングがあまりに重要視されてしまったことが、こうした現状につながった面もあり、「もはや魔改造のレベルになってしまっている」と松原氏は指摘する。
こうした既存ブロックチェーンの問題点を予測し、ゲームに特化したブロックチェーンにとってベストな構造を見通し、先んじて取り組んできたのが、Oasysだ。多くのL1、L2が抱えている課題に対する最適解とも言えるOasysには、初期バリデータとして、すでにSEGA、SQUARE ENIX、BANDAI NAMCO、UBISOFTといった大手ゲーム会社が参加している。
ロードマップ
Oasysは今回、ゲーム業界の課題を解決するために以下のロードマップを策定した。
- App Data Availability:各ゲームが独自チェーン(L2)を作ることを想定して設計。仮にゲームが終了しても、データはOasysのメインネット(L1)に残り、データの可用性を担保。
- Layer2 Interoperability:L2間のメッセージングを強化し、資産の自由な移動やゲームロジックの連携が可能。
- Ecosystem Scalability:開発者が簡単にL2を構築し、Oasysエコシステムに接続できるディベロッパーキットをパッケージで提供。
ゲームがWeb3マスアダプションをリードし、またゲームにとってブロックチェーンがますます重要になるなか、Oasysの存在感はより一層大きくなっている。
実際、この夏からOasysを基盤にさまざまなゲームのリリースが予定されている。実際、現時点で公開可能なものをあげるだけでも、Ubisoftの「Champions Tactics」、SEGAとdoublejump.tokyoの「Battle of 3 Kingdom」、Com2Usの「Summoners War」、Enishの「Last Memories」など、期待のタイトルが揃っている。大手スタジオからのリリースも間もなく発表が予定されているようだ。
「ゲームの未来を見通し、課題に取り組んできたOasysの真価が問われるのは、まさにこれから」と松原氏は語った。
|文・写真:CoinDesk JAPAN 広告制作チーム