日立、東ガスなど参加、太陽光を売らずに収益化するプロジェクト──ブロックチェーンで発電量を記録

太陽光で発電した電力を売るのではなく、自己消費した電力を収益化する試みにブロックチェーンを活用するプロジェクトが始まった。東京ガスグループ、日立製作所、経済産業省などが関わる省エネ推進制度「J-クレジット」の一環としてデジタルグリッド株式会社が主導。早ければ20年4月から自己消費量がJ-クレジットとして認証され、売り出せるようになる。

エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の価格が低迷するなか、発電した電力のうち、発電者が自ら消費する「自己消費」を収益化する試みだ。

経産省、環境省などが進めるJ-クレジットとは

J-クレジットとは、経済産業省、環境省、農林水産省が運営する環境への取り組みを認証する制度。省エネルギーの取り組みによる温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして認証する。

デジタルグリッドが主導する今回のプロジェクトは、2020年1-3月に審査を受けるという。

FIT価格が低迷する中、新たな収益源として期待される

太陽光発電をしても、それを売る際の価格(固定価格買取制度、FIT)の価格は減り続けている。また住宅用太陽光発電の余剰電力は、固定価格での買取期間が10年と定められており、2019年11月から順次満了する。

そのため新たな収益源を見つけることが課題とされている。電力のP2P取引が注目されたものの、発電者の「自己消費」部分は注目されてこなかった。

デジタルグリッドのプロジェクトでは、その自己消費部分をJ-クレジットとして認証し、売り出せるようにする。同社の担当者は「いままで死蔵していた価値を取り出すことができる。個人では少額だが、法人の発電量では10万円を超えることもある。電力を自己消費していた分はお金にならなかったが、その価値を販売できるようになる」と意義を強調する。

その仕組みは、デジタルグリッドが開発したIoT機器「DGC(デジタルグリッド・コントローラ)」を太陽光パネルの発電側に設置し、スマートメーターが計測した自己消費分の発電データをブロックチェーンに記録するというものだ。

ブロックチェーンを活用するのは、発電量の二重計上や改変を防ぐためだという。記録された自己消費分の電力がJ-クレジットとして認証され、売り出せるため、別の企業が購入して、環境への取り組みとして企業の評価につなげることもできる。

DGCの活用図(デジタルグリッド プレスリリースより)

本プロジェクトでは、東京ガスが横浜研究所の太陽光パネルに「DGC」を設置するほか、東邦ガスが戸建て住宅の太陽光パネルに設置する。日立製作所は研究所の太陽光パネルに設置。さまざまな箇所の太陽光パネルにつけることができ、一括でJ-クレジットとして認証される。

今後は、風力発電などその他の再生可能エネルギーにも応用可能という。

文:小西雄志
編集:濱田 優
写真:Shutterstock、デジタルグリッドのプレスリリース