仮想通貨に慎重な米金融大手シュワブが積極的な同業を買収へ──仮想通貨業界に与える影響は?

仮想通貨に慎重な米金融大手シュワブが積極的な同業を買収へ──仮想通貨業界に与える影響は?

Brady Dale
公開日:2019年 11月 25日 06:00
更新日:2019年 12月 18日 14:43

チャールズ・シュワブ(Charles Schwab)によるTDアメリトレード(TD Ameritrade)の買収は、伝統的な証券業界の勢力図を変え、現在、メインストリームに躍り出ようとしている仮想通貨取引にも影響をもたらすかもしれない。

仮想通貨に積極的なTDアメリトレード

2社は交渉段階と報じられており、買収の合意が確定したわけではない。だが実現すれば、仮想通貨に積極的な数少ない金融大手と、仮想通貨への取り組み姿勢をあまり明確にしていない金融大手が合併することになる。

TDアメリトレードは2018年以来、シカゴ・マーカンタイル取引所(Chicago Mercantile Exchange:CME)でビットコイン先物取引を提供している。さらに、ビットコインのスポットと先物を扱う取引所エリスエックス(ErisX)の株式も保有している。同取引所はイーサリアムとライトコインの先物取引の提供も視野に入れている。

2019年5月、CoinDesk主催のカンファレンス「コンセンサス(Consensus)」で、TDアムリトレードのエクゼクティブ・バイスプレジデント、スティーブン・クアーク(Steven Quirk)氏は、さまざまな年齢層の個人投資家と投資アドバイザーの間に、デジタル資産への高い需要があると述べた。

「電話やメールを受け取っている。6万人の顧客が何らかの取引を行っている」

ビットコイン先物を一度は提供していたシュワブ

一方のシュワブは仮想通貨にそれほど注力しているわけではない。

同社の声明によると、同社は2018年4月、先物アカウントを持つ顧客に対してシカゴ・オプション取引所(Cboe)のビットコイン先物(XBT)を提供した。だがCboeはその後、同商品の取り扱いを停止した。

また、シュワブの取締役の1人、クリス・ドッズ(Chris Dodds)氏は仮想通貨取引所大手コインベース(Coinbase)の役員を務めている

しかしシュワブは9月、仮想通貨の直接取引を提供する計画はないと明確に述べ、広報担当者は業界紙「RIABiz」に次のように語った。

「投資家は、これらの通貨を純粋に投機的な商品と捉えるべきだ」

合併が実現した場合にトップに留まると伝えられたシュワブのCEO、ウォルト・ベッティンガー(Walt Bettinger)氏は、慎重派として知られており、同社は仮想通貨について様子見を続けることになりそうだ。

「全般的なアプローチにおいて、シュワブはバンガード(Vanguard)と同様に保守的な傾向がある」と資産運用企業CLSインベストメンツ(CLS Investments)のポートフォリオ・マネージャー、コスティア・イータス(Kostya Etus)氏は述べた。

「シュワブは新しい商品のローンチや新しい取り組みの評価にはより体系的で、より長期的な視野と見通しを持っている。うまくいかなかったものを断念したくはないからだ」とイータス氏。

「別の言い方をすれば、彼らは極めてコストを重視する」

フィデリティは怖いもの知らず

TDアメリトレードもシュワブも、伝統的な証券仲介サービスでシュワブに対して僅差で2位のフィデリティ・インベストメンツ(Fidelity Investments)ほどは進んでいない。

フィデリティは2019年前半、機関投資家向けに仮想通貨仲介およびカストディ・サービスを提供するフィデリティ・デジタル・アセット・サービス(Fidelity Digital Asset Service)を立ち上げた。

「フィデリティは仮想通貨サービスについて、チャールズ・シュワブやTDアメリトレードに比べ、より実験的な姿勢を取ることができる。同社は非公開企業で、上場企業である2社よりも、新しい投資について株主の意見に左右されることが少ないからだ」

SVRNアセット・マネジメント(SVRN Asset Management)のファイナンシャル・アドバイザー、サミュエル・リー(Samuel Lee)氏はそう語った。

2社の合併は事業規模を拡大と、取引手数料のさらなる削減を可能にし、業界で最もコスト効率の高い証券仲介サービス事業者としての2社のポジションをさらに高めることになると金融サービス企業ブロードリッジ(Broadridge)のファンド・インサイト担当ディレクター、ジェフ・ヨルネヨジ(Jeff Tjornehoj)氏は述べた。

「しかし、この買収から2社がいかなる恩恵を受けるのかを正確に語るには時期が早すぎる」

それはシュワブの仮想通貨への限定的な関与にいかなる影響を与えるかについても同様だ。シュワブが魅力を感じているのは、TDアメリトレードの豊かな技術的知識かもしれないが。

「TDアメリトレードは技術的に進んだ投資会社だ」とリー氏は述べた。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:ErisX’s CEO Thomas Chippas (left) and Steven Quirk, executive vice president of Education TD Ameritrade speak at CoinDesk’s Consensus in May 2019
原文:What a Schwab-TD Ameritrade Merger Would Mean for Crypto