テクニカル分析は予測か、本末転倒か【前編】──デスクロスがやって来る

デスクロス。大声で言ってみよう。響きは良くない。良いものではない。実際、かなり悪い。

デスクロスがやって来る

10月のほとんどの期間、ビットコイン市場のアナリストは「デスクロス」がやって来ると警告していた──投資業界で「テクニカル分析」と呼ばれるものを使って。

テクニカル分析(TA)は、過去にさまざまな資産がどのように取引されたかを詳細に表したチャートを研究することで、将来の価格の動きを推測する技術だ。

パターンが見つかる。それらのパターンを過去にあったパターンと比較する。過去のパターンは将来にも起こり、価格予測と利益を得る十分なチャンスをもたらすという前提に基づいている。

TAにおけるデスクロスは、過去50日間の資産の平均価格を示す線(移動平均線)が、過去200日の移動平均線を下回った時に起きる。デスクロスの発生は弱気トレンドの始まりと考えられている。

2000ドル以上の下落

ビットコイン市場で前回、デスクロスが発生したのは2018年3月、それから9カ月で価格は50%以上下落した。

そのため、2019年10月25日(現地時間)頃、デスクロスがついに現れた時には異常なほど弱気に捉えられた。ビットコイン価格はその日、8662ドルで取引を終え、そこから数週間で2000ドル以上、下落した。

一部のアナリストは、下落は中国での仮想通貨への投機の取り締まりによって引き起こされたと述べた。だがTAを信じる人は、すべてはチャートから明らかだと主張した。

「一旦デスクロスが発生すれば、移動平均線は弱気を叫んでいる状況にある」と4万3000人のツイッターフォロワーを抱え、サブスクリプションベースのTAフィードも持っているマサチューセッツ州在住の41歳の男性、ペンネーム「ビッグ・コーニス(Big Chonis)」は語った。

同氏は、そのブランド力を弱めることを防ぐために実名を公開しないよう求めた。そして電話インタビューで、主にTAを使って、フルタイムのトレーダーとして週に通常3000〜4000ドル(約33万〜44万円)を稼ぐと明かした。

価格高騰は続かないと予測

青い線が黄色い線にクロスする可能性のある時期を観察することで、トレーダーは確実にお金を儲ける、もしくは損失を防ぐことができるというコンセプトは、伝統的な金融における多くの投資家にとっては、本末転倒なことに聞こえるかもしれない(ジャーナリストや仮想通貨取引の他の観察筋にとっては言うまでもなく)。

だが、ビットコイン市場においてはTAはありふれている。世界最大級の仮想通貨取引所バイナンス(Binance)は、11月22日付の研究レポートで、TAは高頻度取引に次いで、デジタル資産市場で2番目に最もよく利用されている投資戦略と記した。

ビットブル・キャピタル(BitBull Capital)のジョー・ディパスクエール(Joe DiPasquale)CEOは、TAは仮想通貨価格の変動をしばしば引き起こす熱狂を見破ることに役立つと主張した。

「中国メディアの過剰報道による10月末の価格高騰は持続することのない投機に促された価格変動の格好の例で、今は以前に我々が示していた支持線の8100ドル付近に落ち着いている」と同氏は語った。

「TAによって我々は、中国の習近平国家主席のスピーチ後の高値は一時的なもので、8000ドルを少し上回るところに落ち着くだろうと信じていた」

他に頼るものがない?

TAはもともと、長い歴史を持ち、データが豊富にある市場向けに開発された。3人のイスラエル人研究者による2015年の大規模な研究によると、株式市場においてTAは、収益成長などの要素を含むビジネス・ファンダメンタルズに基づく分析よりも優れていた。この研究結果は、1カ月〜12カ月の投資期間に当てはまるものだった。

TAの真の信奉者は、ほんの11年前に誕生したビットコインの基本的価値を、まだ誰も自信を持って正確に示すことができないため、仮想通貨市場においてこそ、TAは重要と述べた。

ビットコインは価値の保管なのか、インフレのヘッジなのか、ゴールドのデジタル版なのか? それともお金の未来? あるいは単に世界最大のブロックチェーンの維持をサポートしているコンピューターのオーナーとオペレーターのための報酬なのか? これらすべてということもあり得る。

「真にファンダメンタルなニュースが存在しないため、人々はチャート、価格、取引高に頼っている」とシティグループ(Citigroup)の元株式リサーチャーで現在は仮想通貨分析企業デジタル・アセット・リサーチ(Digital Asset Research)のグレッグ・シポラロ(Greg Cipolaro)氏は述べた。

「常にある意味、ダークな技術だ」

価格予測はしない

他の手がかりがほとんどないため、トレーダーはチャートに信頼を寄せている。

彼らは、自分自身、そして話を聞いてくれる人にこんな風にかたっている。

「ビットコイン価格はかなり下がると古典的なテクニカル分析は語っている。おそらく、来週あたりに。なぜならこのローソク足チャートがこうで、あのローソク足チャートがこうだから。つまり、買いに走る前にもう少し待ったほうがいい」などと。

だがビッグ・コーニスでさえもテクニカル分析の有用性、あるいは少なくともその使い方には限界があることを認めている。

彼は自身のツイッターフィードで「注目すべきこと」、つまりチャートに見られるパターンを指摘しようとしていると述べた。しかし、価格予測はそれほど行わないことを認めた。

「買い時、買い時、買い時、売り時、売り時、売り時と私はいつも言っていないというのは正しい。なぜならすべては主観によるものだから」

興味深いのは、チャートをもとにした議論をばかにし、長期的なデジタルゴールドのストーリーを好む多くのビットコイン投資家でさえも通常はチャートから目を離さず、それによって自己達成的になり得ることだ。

つまり、多くの人は重要な水準として同じ価格を見ている。いわゆるTAで言う抵抗線と支持線だ。抵抗線は超えることは難しいと考えられている見えない天井のようなもの、一方、支持線はそれ以上は下げられないと考えられている価格。市場はしばしば抵抗線や支持線に従って推移する。

例えば、多くのトレーダーはビットコイン価格が突然、設定した値を下回った場合、自動的に売るようシステムを設定している。「ストップロス注文」と呼ばれるもので、大まかに言えば「もっとお金を失う前に、今撤退させてくれ」ということだ。

ストップロス注文が始まると、価格変動は加速し、すぐに多くのビットコイン先物の初心者は「大失敗」する。つまり高いレバレッジをかけたトレーダーは、マージンコール(追い証)のために清算することになる。そうした清算による急速な売りは価格の下落をより加速させ、ビットコインは再び、そのボラティリティを証明することになる。

「皆が行っていることを理解すれば、取引をさらによく理解できる」とサンディエゴに拠点を置くブロックフォース・キャピタル(BLockforce Capital)の最高投資責任者デビッド・マーティン(David Martin)氏は述べた。

「つまり、テクニカル分析のテクニカル分析だ」

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:Is Technical Analysis Prophetic or Preposterous? We Asked 7 Crypto Traders