フェイスブック「不当に有利」な可能性:ラガルドECB総裁

欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)新総裁は、フェイスブック(Facebook)がリブラ(Libra)の宣伝に自社のデジタルプラットフォームを利用し、ライバルのステーブルコイン事業者を締め出す可能性があることに懸念を呈した。

2019年12月20日(現地時間)、ラガルド氏はEUの議員に対する書簡の中で、ステーブルコインは既存の国際決済システムに関連する多くの問題に取り組んでおり、金融包摂の促進を後押しする可能性がある、より安価で効率的な決済の選択肢をユーザーに提供すると述べた。

しかしラガルド氏は、規制当局はステーブルコイン市場の競争を巡る懸念に取り組む必要があると、強調している。フェイスブックは自社のソーシャルメディア・プラットフォームを利用してライバルを締め出し、自社の仮想通貨を売り込むことができるので、小規模事業者に比べ不当に有利な可能性がある。

「ステーブルコインの条件を規定する主体が大規模なデジタルプラットフォームを管理する場合、潜在的な締め出し効果を用いて自社のソリューションを宣伝したり、自社のプラットフォームから他のサービスプロバイダーや決済手段の利用を締め出すことで、公正な競争の場に影響を与えることができる」

さらに、フェイスブックはユーザーのソーシャルメディアデータと金融データを組み合わることが可能であり、これによって「強い比較優位性を持ち、市場の競争可能性が損なわれる」可能性があると強調した。

ラガルド氏は書簡の中で、リブラなどのステーブルコインは規制当局が関連リスクを完全に評価するまでは運用を開始すべきではないとしている。取り組みはすでに始まっているものの、リブラの越境的な性質を考えると、一貫性のある国際的な協調が必要となることを意味している。

「ステーブルコイン」への懸念

ラガルド氏は、「ステーブルコイン」という名称が誤解を招く恐れがあるとも述べる。事業者は所有者に対し価値の安定した保管を約束するが、価格はガバナンスや原資産に左右される。しかし投資家は、保有するステーブルコインの価値が保証されていないことに気づかない可能性がある。

「ステーブルコインのユーザーに対し、損失の可能性があることや、預金保証制度や資金の貸し手の最後の手段としての中央銀行の役割といった伝統的な金融安定性ネットワークの対象にはならないことを明確にすべきだ」

ラガルド氏は10月にECB総裁に就任し、それ以前は国際通貨基金(IMF)の専務理事を務めていた。かつては各国の中央銀行に対しデジタル通貨の発行を検討するよう求め、規制当局に対し犯罪の取り締まりにブロックチェーン技術の使用を提案していた。

ロイター(Reuters)の報道によると、ラガルド氏は中央銀行のデジタル通貨に関してECBは「先手を打つ」べきだと述べた。

他の金融規制当局者は、リブラプロジェクトに関する懸念を表明してきた。米連邦準備制度理事会(FRB)の理事の一人は今週、リブラプロジェクトは準備金の管理方法やユーザーを保護する安全策が「明確」ではないと述べた

今月上旬、スティーブン・ムニューシン(Steven Mnuchin)米財務長官は、金融テロに使用されない限りにおいて、フェイスブックのデジタル通貨のローンチに「異論はない」と述べている

翻訳:Emi Nishida
編集:T.Minamoto
写真:Shutterstock
原文:Facebook’s Social Media Platforms May Give Libra Unfair Advantage, Says ECB’s Lagarde