スイス、リブラに対する姿勢を軟化──年末には前大統領がリブラは「失敗した」と発言

スイス政府はフェイスブックのリブラに対する姿勢を軟化させようとしている。12月末には前大統領がリブラを失敗と呼んだ。

国際的な決済ソリューションとしての価値を認識

ブルームバーグ(Bloomberg)が確認した政府の覚書は、スイスの規制当局はリブラがいつか承認される可能性を排除したわけではないと強調していた。スイス当局はリブラプロジェクトの監視を続け、「リブラが将来的に取る可能性のある形態」に特に注意を払っていくと覚書は記した。

1月15日(現地時間)に発表された覚書は、スイス政府がリブラに対する姿勢を軟化させ、国際的な決済ソリューションの価値を認識していることを示した可能性がある。

「スイスは一般的に、国境を超えた決済取引のコストを削減し、金融包摂を推進しようとするプロジェクトに対してオープンな姿勢を取っている」と政府は述べた。

このニュースの数週間前、2019年12月27日にはウーリ・ マウラー(Ueli Maurer)スイス連邦財務大臣(当時は大統領も兼任。スイスは閣僚が1年ごとに交代で大統領を務める)がスイスのメディアSRFに対して、規制当局が近い将来、リブラを認可することはないと率直な発言を行い、業界観測筋を驚かせていた。

マウラー財務大臣は、中央銀行はリブラを裏付ける通貨バスケットを「受け入れて」いないため、リブラが現在の形態で機能することはないと指摘した。

「従って、プロジェクトはこの形態においては失敗した」とマウラー財務大臣は語った。

リブラ協会が本部を置くスイス

リブラ協会(Libra Association)がその本部をスイスの銀行業界の中心地であるジュネーブに置くと発表したことを受け、スイスは当初、リブラプロジェクトを歓迎していた。当時ブルームバーグが報じた通り、スイス国際金融問題局(Swiss State Secretariat for International Finance)はリブラ協会の決定を歓迎し、「スイスが野心的な国際プロジェクトにおいて役割を果たすことができるという好ましいサイン」と述べた。

この変化は、一部には国際的圧力への反応だったかもしれない。リブラに対する規制当局の態度はリブラ発表後、数カ月で硬化した。

アメリカの議員らは2019年夏、リブラは米ドルの優位を脅かし、未検証で未試験の技術によってユーザーに害を与える可能性があると懸念を表明した。フランスの経済財務大臣は2109年9月、リブラは国家の金融主権と根本的に対立するものであり、開発はEU(欧州連合)内で認可されるべきではないと述べた

リブラ協会は2019年9月、スイスで決済システムとしてのライセンス申請を計画していると述べた。これに対してスイス連邦金融市場監督機構(FINMA)は、リブラは厳格なアンチマネーロンダリング規制に加えて、厳しい銀行規制にも直面するだろうと述べた。FINMAのCEOはその後、法律は絶対的なものだが、FINMAは「そのようなプロジェクトを不可能にするために存在している」わけではなく、リブラの規制というタスクに「オープンな姿勢」で取り組むと説明した。

リブラは以前、2020年6月のローンチを明言していたが、リブラ協会のマネージング・ディレクター、バートランド・ペレス(Bertrand Perez)氏は9月、規制当局が「我々のソリューションに完全に満足」するまでローンチを1〜2四半期遅らせる可能性があるとも述べた

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Swiss parliament image via Shutterstock
原文:Switzerland Softens Tone on Libra After Ex-President Says Project ‘Failed’