「くじら」は目覚めたか?──ビットコインのボラティリティは継続傾向

ビットコイン(BTC)価格のボラティリティは1月に上昇し、近い将来もさらに上昇する可能性がある。原因は「くじら 」と呼ばれる大口保有者だ。

クラーケン(Kraken)のレポートによると、ビットコインの年率換算ボラティリティは、1月に約8ポイント上昇し、3カ月ぶりの高水準となる58.2%となった。

ビットコイン価格が1月3日の安値6850ドル付近から、1月31日に3カ月ぶりの高値9570ドルに高騰したことに伴い、ボラティリティも上昇した。ビットコインは1月を30%の上昇で終え、2013年以来で最も好実績となった。

価格の高騰に伴い、くじら──大量のコイン保有者たち──は、長い眠りから覚めたようだ。クラーケンのリサーチャーが指摘した通り、1000〜1万BTCを保有するくじらのアドレス数は1月後半に増加した。

くじらのアドレス数と年率換算ボラティリティ
出典:Kraken

くじらのアドレス数は2000から2030へと増加し、2019年の最後の4カ月に見られた「様子見」フェーズから「買い増し」フェーズへの移行を示した。

くじらとボラティリティ

歴史的に、こうした移行はビットコイン市場にボラティリティをもたらしてきた。例えば2018年9月、くじらはビットコインを買い始め、2019年はじめには様子見モードに入った。一方、年率換算ボラティリティは11月中旬までに20%を下回って底を打ち、12月末までに100%に急上昇した。

同様に、2019年第2四半期の価格ボラティリティの急上昇の前には、大口ウォレットによる買い増しがあった。

この特有の動きは、くじらが大口注文で市場に影響を与えることができる資金を持っていることに関連しているだろう。

「買い増しフェースでは、くじらは市場の流動性を蝕む」とCRUXPayとCoinSwitch.coの共同創業者兼CEO、アシシュ・シンガル(Ashish Singhal)氏はCoinDeskに語った。

「それが需要 – 供給率に影響を与え、市場への再参入につながるボラティリティを引き起こす」

くじらの買い増しの時期には突然の価格変動が起きていた。2019年4月2日に見られた、4100ドルから5100ドルへのビットコイン価格の急上昇は、3つの取引所での約1億ドル(約110億円)相当の注文によって引き起こされたと報じられた。

くじらの行動は、過去に大きな価格下落にもつながった。2019年7月9日、15分にも満たない間にビットコイン価格が1万2600ドルから1万2100ドルへと下落したことは、仮想通貨取引所バイナンス(Binance)での6500BTCという大口の売り注文が引き金となった。

ガチホ勢もボラティリティに影響

シンガル氏は長期保有者、いわゆるホドラー(ガチホ勢)──10〜100BTCを保有するアドレス──も流動性とボラティリティに影響を与えると付け加えた。過去のデータによると、10〜100BTCのガチホ勢が買い増しを終えるとボラティリティが上昇する傾向がある。

ホドラー(ガチホ勢)とボラティリティ
出典:Kraken

上図のように、10〜100BTCを保有するアドレス数の増加は2018年11月に頭打ちになると、ボラティリティは20%から100%へと急上昇した。2つの指標の似たような動きは、2019年7月中旬までの4カ月にも見られた。

現在、10〜100BTCを保有する集団の数は11月に底を打った後、買い増しフェーズにある。この3カ月でアドレス数は13万5000から13万7500へと増加した。

「ファミリーオフィス、富裕層の個人投資家などは、10〜100の範囲内で継続的にビットコインを保有している。これは投資としてのビットコインの普及が進んできたサイン」とVanEck/MVISのデジタル資産ストラテジスト/ディレクター、ガボール・ガーバックス(Gabor Gurbacs)氏はCoinDeskに語った。

買い増しフェーズはいつまで続く?

もし、今後数週間の間にガチホ勢が買い増しフェーズを終え、くじらがビットコインを買い続ければ、需要と供給のアンバランスが進み、ボラティリティが大きく上昇するかもしれない。

「しかし問題は、ガチホ勢の買い増しフェーズがどれくらい続くかを予測することは難しいということ」とデジタル・アセット・データ(Digital Asset Data)の仮想通貨リサーチアナリスト、コナー・アベンドシャイン(Connor Abendschein)氏は述べた。

3カ月後にビットコインの半減期が見込まれている中、ガチホ勢の現在の買い増しは少なくともあと数週間、続く可能性がある。

ビットコインのマイニング報酬は、5月のどこかの時点で12.5BTCから6.25BTCに半減する。つまり、5月以降、マイナーにとっては売りに出すビットコイン が少なくなり、供給不足につながる可能性がある。

過去、市場は半減期の前に新しい市場サイクルの最高値(それまでの弱気市場の安値からの最高値)へと上昇することで、迫りくる供給削減を価格に折り込んできた。

歴史は繰り返すか?

そのため、仮に歴史が繰り返すなら、ビットコインは5月を前に、2019年6月の高値1万3880ドルを超える可能性がある。そうした強気の予想が市場心理を支配するなか、ホドラー(ガチホ勢)がすぐに買い増しを止める可能性は低い。

しかし、それは必ずしもボラティリティが激減することを意味しない。くじらも半減期に先立って買い増しを続ける可能性が高いからだ。

「もし、ホドラー(ガチホ勢)が現在のフェーズを続ける間に、くじらがビットコインの買い増しに移行すれば、5月初旬にマイニング供給が半分に削減されることと同様にビットコインの需要がさらに高まることになる」とアベントシャイン氏はCoinDeskに語った。

「このアンバランスはボラティリティだけでなく、価格の急上昇を引き起こす可能性がある」

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:On-Chain Activity Suggests Bitcoin Price Volatility Will Continue, Thanks to ‘Whales’