2大マイニング機器メーカー、半減期を前に最新モデルを発表──出荷には不安も

ビットコインマイニング機器大手2社は、残り3カ月を切ったビットコイン半減期を前に最新モデルを発表、激しい競争を繰り広げている。

ビットメイン、最新モデルS19を発表

2月27日、北京に拠点を置くマイニング機器大手ビットメイン(Bitmain)は最新モデルのアントマイナー(AntMiner)S19とS19 Proを発表した。1秒あたり110テラハッシュ(TH/s)の演算能力と1テラハッシュあたり29.5ワット(W/T)のエネルギーコストを誇る。

同社の仕様によると、両モデルは出荷されれば、現在最も採算性の高いビットコインマイニング機器となる。f2poolのマイナー採算性インデックスによると、深セン市に拠点を置く競合企業マイクロBT(MicroBT)のワッツマイナー(WhatsMiner)M30Sが僅差で2位となっている。

今回の発表の背景にはビットメインとマイクロBTが繰り広げる熾烈な競争がある。マイクロBTは2019年、M20シリーズを約60万台販売して大きなシェアを獲得し、ビットメインの長年にわたる市場独占を脅かしている。

マイクロBTは2019年12月、フラッグシップモデルのM30を発表、2月には先行注文の受付を開始、サンプルユニットの納品は早くも3月に開始される。

マイクロBTの主要販売業者パンゴリン・マイナー(Pangolin Miner)によると、1台2430ドル(約27万円)のM30Sは86TH/sの演算能力、38W/Tのエネルギーコストを誇り、サムスンの8ナノメートルチップを採用している。同社はM30Sの出荷は3〜5月に始まるが、大口の先行注文は6月まで待たなければならないと述べた。

チップ供給に不安も

一方、ビットメインのS19の価格と先行注文/出荷の日程はまだ発表されていない。さらにビットメインが大規模な生産を実施できるか否かが不透明さを加えている。S19は7ナノメートルのチップを採用しており、供給元のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)からの供給量は限られている。

また最高の性能を誇るが高価なマイニング機器の発表に、マイニング業界がどのように反応するかもまだわからない。ビットコイン価格は再び1万ドル(約110万円)を割る展開となっている。

現在、ビットメインの旧型モデル、アントマイナーS9は依然として最も広く使われているマイニング機器の1つであり、f2プールのインデックスによると、ビットコインの現在の価格では毎日、約30%の粗利益を生み出している。

さらに、中国でのコロナウイルスの拡大は中国の製造と物流に影響を与え、既存のマイニング設備の拡張やアップグレードを検討していた人々に計画の遅延をもたらしている。

事実、マイニングプールのBTC.comのデータを見ると、マイニング難易度──マイニング報酬を得る競争の難しさの指標──は1カ月間停滞し、現在1月28日とほぼ同水準にある。

しかし、1ブロックごとのマイニング報酬が12.5BTCから6.25BTCに削減されるビットコイン半減期が5月に迫るなか、 S9のような旧型モデルはビットコイン価格が大幅に上昇しない限り、利益をあげることはできなくなる。つまり、ビットコインマイナーは装置のアップグレードを行うか、事業から撤退しなければならないかもしれない。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:flickr
原文:World’s Top Crypto Miners Race to Roll Out Top-of-Line Machines Ahead of Bitcoin Halving