ESGがメインテーマに──気候変動に立ち向かうブロックチェーン【ハイパーレジャー・カンファレンス】

ESGがメインテーマに──気候変動に立ち向かうブロックチェーン【ハイパーレジャー・カンファレンス】

2020年のハイパーレジャー・グローバル・フォーラム(Hyperledger Global Forum)──ブロックチェーンの推進を目指す大手企業が集まる年に1度のイベント──は2020年、深紅の糸を集めながら竹林を歩く女性の映像とともにアリゾナ州フェニックスで幕を開けた。

ソーシャルインパクトだけでは不十分

アクセンチュアの映像には、トレーサビリティのメタファーが深く刻まれ、ブロックチェーンは「包括的なグリーンエコノミーに貢献」するために必要な情報を消費者に与えながら、価値を共有する企業からモノを購買する力を人々に与えることを強く訴えた。

ESG(環境、社会、ガバナンスの頭文字を取った略語。環境に配慮した企業の取り組みを表す)と、それをデジタルアイデンティティと重ねる方法は、今年のフォーラムの主役となっていたようで、バンキング・コンソーシアムや貿易金融ブロックチェーンはおそらくさほど重視されていなかった。

ハイパーレジャーのエグゼクティブ・ディレクター、ブライアン・ベーレンドルフ(Brian Behlendorf)氏は、理想的なシナリオはポジティブな社会的インパクトと、さまざまな参加者へのポジティブな財務インパクトを組み合わせること、つまり二重の現実的なアプローチであると述べた。

同氏は、ダイアモンドを追跡するブロックチェーン「エバーレジャー(Everledger)」を例をあげた。ダイアモンド業界には、ダイアモンドが工場で作られていない(人造ではない)こと、さらには奴隷労働を通じて産出されたものでもないことを認証するという重要な商業的理由がある。

「ソーシャルインパクトのためだけのブロックチェーンは十分なクリティカルマス(商品やサービスが爆発的に普及する分岐点)を獲得することは難しいかもしれない」とベーレンドルフ氏は指摘した。

パリ協定の目標を達成するためのブロックチェーン対応の気候変動情報の開示をはじめとする新しい重要なプロジェクトは、適切なフレームワークとインセンティブを見出そうとしている。

「これは規制環境と信頼に値する監査人、さらに温室効果ガスの排出を削減したい企業の商業上の動機にかかっている。つまり、誰が何を排出しているかを追跡し、排出削減を証明する方法としてブロックチェーンを使う」とベーレンドルフ氏は語った。

@Hyperledgerディレクターのブライアン・ベーレンドルフ氏:世界は自らへの信頼を失った。DLTとスマートコントラクトは我々の新しい目的地でなければならない。 #Hyperledgerglobalforum

電気自動車 vs ガソリン車

ハイパーレジャー・ファブリック(Hyperledge Fabric)を使ってオラクル(Oracle)と共同で構築した、ソーシャルインパクト追跡するプラットフォーム「サーキュラー(Circulor)」は、コンゴの鉱山からのコバルトの追跡から始まった。

サーキュラーは現在、ダイムラーとボルボのサプライチェーンにおける材料(天然ゴム、レザー、電気自動車バッテリーの部品)の大規模な物流から生まれる二酸化炭素排出量を追跡している。

「これが重要な理由は、電気自動車(EV)は従来の自動車よりも地球に悪影響を及ぼすため」とサーキュラーのダグ・ジョンソン-ポエンスゲン(Doug Johnson-Poensgen)CEOは語った。

「なぜか? サプライチェーンにおける二酸化炭素排出量がひどく多いためだ」

別の言い方をすると、テスラのモデル3とBMWの7シリーズは、どちらも5万マイル(約8万キロ)走行すると二酸化炭素排出量は同じになる。ガソリンを使う7シリーズは、この計算は排気管からの排出量に基づいている。だが、電気自動車のモデル3の場合は、製造にまつわるサプライチェーンからの排出であり、その半分はバッテリーから出ている。

電気自動車の未来を熱心にアピールするボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英首相のような政治家は、この事実を無視するか、あるいは単に理解しないことを選択しているとジョンソン-ポエンスゲン氏は述べた。

「バッテリーの製造には、大規模な採掘、複数段階におよぶ化学精製による二酸化炭素排出が含まれている。そしてすべての工程が地理的に広がっている──アフリカで採掘され、中国で精製され、韓国で電極にされ、再び中国でバッテリーにされる」と同氏。

「そしてもちろん、中国は石炭発電による電力を多く利用する巨大な石炭消費国だ」

ブロックチェーンは、この複雑なフローの説明責任を果たすための重要な最初のステップとなる。

自動車メーカーが興味を示しているのは、彼らはすべてカーボンニュートラルを目標を掲げているためだ。水力発電による電力を使っているメーカーから、電気バッテリーの少し高価な部品を買うことは、カーボンニュートラルの実現に向けた二酸化炭素排出量の削減の5年分に相当する可能性がある。

「測定できないものは削減できない」とジョンソン-ポエンスゲン氏は述べた。

「そのため、これが材料のフローで、そのフローにおける輸送や製造の各段階における二酸化炭素排出量を理解しているとすれば、例えば、大手サプライヤーやバッテリーメーカーをサステイナビリティと価格のバランスをとることに関する議論に引き込むことができる。現在のところ、価格がすべてだ」

説明責任

カーボンアカウンティング(炭素会計)の問題は、ハイパーレジャーのClimate Action and Accounting Special Interest Groupによって、かなりの規模でまとめられている。

Yale Open Innovation Labでの取り組みから生まれたこのプロジェクトの目標は、パリ協定に適合するグローバルな気候会計の仕組みを生み出すこと。

国連レベルでは気候会計の取り組みはある程度存在しているが、大手企業もまた同様に取り組んでいる。

これが、このカンファレンスが協力関係を築くために適切な場所である理由とYale Open Innovation Labの創設者でハイパーレジャーの気候アクショングループの共同代表を務めるマーティン・ワインスタイン(Martin Wainstein)氏は語った。

「現在、気候変動における最大の当事者は企業であることは明白。だが企業が行うタイプの約束には、ほとんど説明責任がない。大企業がそうした約束をするのは、次世代が怒りを抱えていること、そして彼らが将来の顧客となることを理解しているためでもある」

信頼できる気候会計システムのためにデジタル・トランスフォーメーションが果たす役割を追求することには、ブロックチェーンやIoT、またブロックチェーンベースのSpatial Web(異なる仮想空間での商取引を実現する技術)の取り組みのようなものを検討することが含まれてきたとワインスタイン氏は述べた。

「法域、空間上での契約、容量測定などについて議論できる気候インターネット、あるいは地球インターネットを考えなければならない。ハイパーレジャーはこの件にまつわる非常に面白い重心となっている」

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:David Treat of Accenture speaks at the 2020 Hyperledger Global Forum in Phoenix, Ariz. (Photo by Ian Allison for CoinDesk)
原文:Hyperledger Conference Shows Where Blockchain Can Fight Global Warming

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