スイス証券取引所に仮想通貨連動ETPが続々と上場。仕掛ける企業Amunとは?

スイスの証券取引所(SIX)が、XRP(リップル)の価格に連動した仮想通貨の上場投資商品(ETP=Exchange-Traded Product)を上場する可能性が出てきた。仕掛けるのはスイス・ツーク(Zug)に拠点を置くAmun AGだ。

Amun は、これまでにも複数の仮想通貨のETPを提供してきたが、同社の共同創業者兼CEOのHany Rashwan氏は、リップル連動のETPの上場でSIXから承認を得たことを明らかにした。商品コードはAXRPで、Rashwan氏は「リップルETPを2カ月以内に世界へリリースできるだろう」と、CoinDeskの取材で述べた。

同氏によると、AmunはリップルETP以外に、ビットコインキャッシュ(BCH)、ライトコイン(LTC)、ステラールーメン(XLM)、EOSの4種類の仮想通貨に連動するETPの承認もすでに得ているという。Rashwan氏は、これらのETPの発売時期は未定だが、需要に応じて決めていくとしながらも、「年内にはSIXに上場させたい」と話す。

初上場もAmunが発行したETP

SIXは2018年11月に初めて、主要仮想通貨の価格に連動するETPを上場。この時のETPを発行したのもAmunで、個人と機関投資家に販売された。商品コードはHODLで、コードの由来は仮想通貨コミュニティーで使われる俗語(holding=買い持ちする)だという。

HODLは上場以来、月間売買高が原油価格にリンクするETPのXETCの取引量を越え、12月と1月にはSIXにおいて最多売買高を誇るETPとなった(SIXのデータ)。

HODLはBTC、ETH、XRP、LTCの価格に連動するが、仮想通貨全体の市況を反映し、価格は昨年11月の15ドルから直近の13ドル近辺まで下落。2月の売買高ランキングでは首位から2位に下がり、およそ400万ドルだった。

また、Amunは過去数週間で、ビットコインとイーサリアムに連動するETPをそれぞれ、SIXに上場してきた。Rashwan氏によると、Amunが発行するETPの買い手は、ほとんどがスイス国内の需要だが、海外の投資家からの引き合いもあるという。

SIXの上場ルールによると、ETPはパッシブ運用(ベンチマークに連動する運用成果を目指す運用手法で、アクティブ運用はベンチマークを上回る成果を目指す手法)を主とする投資商品であるため、スイスの金融当局(FINMA)が監視・監督する集団投資スキーム(多くの投資者から集めた資金を投資し、その収益を出資者に分配すること)には属さない。

投資家保護の努力

とは言え、仮想通貨をベースとするETPの構造面においては、投資家保護を目的としたいくつかのルールに従わなければならない。例えば、Amunの仮想通貨ETPは担保で保証される。相当量の仮想通貨資産で担保される必要があると、Rashwan氏は述べる。

「担保は独立した正規のカストディアン(保管者)によって保管され、価格計算は毎日、複数により何度もチェックされる」とRashwan氏。

Amunは現在、米証券取引委員会(SEC)に登録されているキングダム・トラスト(Kingdom Trust)で担保を保管している。今後、より多くの仮想通貨ETPを上場する計画から、Amunは複数のカストディアンを利用する計画だ。

SIXの案内文によると、申請時に、CoinMarketCapのデータに基づく時価総額ランキングで上位15の仮想通貨が、取引可能と見なされている。また、SIXは、ブロックチェーンの基本的性質に基づく、オープンソースのソフトウエアをベースとする仮想通貨を商品と見なしている。

「ICOの一環で発行されるトークンは、基本的に商品とは認めない」(SIX)

ETPのトークン化

一方でAmunは、ERC(Ethereum Request for Comments=イーサリアムベースで発行するトークン)を基にしたトークンをスタートさせる計画を進めている。そのトークンは自社のプラットフォームで管理され、イーサリアム・ブロックチェーン上で運用し、ETPのトークン化に利用するという。

仮想通貨ETPや、金価格などに連動する従来のETPがトークン化されれば、セキュリティトークン(有価証券を仮想通貨トークンに変えたもの)の取引所などで売買することが可能になる。

SIXは現在、独自でデジタル取引所の開設の準備を進めており、分散台帳技術(DLT)を活用してトークン化された資産の高速取引・決済の実現を図ろうとしている。同取引所はすでにR3のCorda Enterpriseプラットフォームを採用し、インフラの整備を進めている。SIXデジタル・イクスチェンジ(SIX Digital Exchange)は2019年下半期のスタートを予定している。

Rashwan氏は最後にこう話した。

「私の予想だが、認可されたセキュリティトークン取引所が信頼できる国で創設されるのは、今年の終わりか来年初め以降になるだろう。ただ、それまでには3〜5種類程度のトークンETPを準備したいと考えている」

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:Rashwan image courtesy of Amun
原文:Swiss Exchange to List XRP Exchange-Traded Investment Product