電通と博報堂がタッグ、avexも参入──“ジャパンコンテンツ”のDX化で業界規模を拡大

音楽や書籍、ゲーム、広告、ニュース記事などの著作権を守りながら、国内のメディアコンテンツの流通をさらに広げるための大規模なブロックチェーンプラットフォーム構想がある。

博報堂、朝日新聞社、小学館の関連会社など国内7社が今年初めに立ち上げた「ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(Japan Contents Blockchain Initiative:JCBI)」だ。

この構想に、ブロックチェーン技術を使った独自の取り組みを進めてきた電通と、エイベックス・グループのエイベックス・テクノロジーズが加入した。JCBIが8日、明らかにした。

コンテンツの著作権情報を管理するプラットフォームを共同運営して、同構想に参画する企業が新たなエコシステムでそれぞれのコンテンツを安全に流通できれば、日本のコンテンツ全体の流通規模をさらに拡大することができる。

電通はコンテンツのマネタイズ、エイベックスは著作権管理

電通が入る東京・汐留のビル(Shutterstock)

新たに同コンソーシアムに加入した電通は今年1月に、「n次流通プロジェクト」と呼ぶ共同研究をスタートさせ、ブロックチェーンを利用してコンテンツをマネタイズさせる新たな方法を探ってきた。この共同研究には、角川アスキー総合研究所や、デジタル広告のプラットフォームを手がけるVOYAGE GROUP、朝日新聞が参加している。

一方、エイベックス・テクノロジーは、ブロックチェーンと人工知能(AI)を活用した著作権の管理システムの開発を行っている。実証実験では、独自に開発したデジタルコンテンツの権利記録と分配を行うブロックチェーンシステム「A trust(エートラスト)」を利用している。楽曲をAIで特定し、ブロックチェーンを使うことで、権利者に還元できる透明性のある仕組みの開発を進めている。

JCBIには今回、電通とエイベックスの他に電通国際情報サービスが加わり、会員企業数は11社になった。電通国際は今年1月、ブロックチェーンを活用して農産品の生産履歴と取引状況を可視化する農業データプラットフォームの「SMAGt」を開発している。

Withコロナで加速する「Society 5.0」

写真:Shutterstock

政府は、IoT(モノのインターネット)で人とモノがつながり、人工知能(AI)で必要な情報を必要な時に提供でき、ロボットと自動運転技術などが少子高齢化や地方の過疎の課題を克服できる新たな社会づくりを進めている。

新型コロナウイルスが人と経済の活動を抑制するなか、日本における社会全体のデジタル化が加速し、いわゆる「Society 5.0」の実現に向けた多くの取り組みが行われている。

例えば、日立製作所やKDDI、積水ハウスなどの国内18社は、業界の垣根を越えた企業間のデータ連携を推進するコンソーシアムの「NEXTCHAIN(ネクスチェーン)を創設している。

NEXCHAINは今後、1、2年で会員企業を数百社に増やし、不動産や金融、電力・ガス、運輸、通信業界などでブロックチェーンを活用したデータ連携基盤の活用を促していく。

Society 5.0は、狩猟(1.0)、農耕(2.0)、工業(3.0)、情報(4.0)に次ぐ、ネット(サイバー空間)とリアル(現実空間)を高度に融合させて、経済の成長と社会的課題の解決を両立させる社会のこと。

文:佐藤茂
写真:JCBIの加入企業(同コンソーシアムの発表文から)