アメックスがKabbageを買収、アントG上場中止ほか──2020年のフィンテックニュース振り返り【海外編】

2020年のフィンテック業界で最大のニュースと言えば、中国アリババの金融子会社アントグループのIPO中止を思い浮かべる人が多いだろう。しかしそれ以外にも欧米を中心にさまざまな報道があり、振り返っておくべきトピックスは多い。2020年の海外におけるフィンテック関連ニュースを時系列で振り返る。

1月──Visaが金融サービスAPIで急成長の米Plaidを53億ドルで買収

米クレジットカード大手のVISAは1月13日、金融サービスAPIを開発しているユニコーン(時価総額が10億ドル以上の非上場企業)の米Plaid(プレイド)を、53億ドル(約5,500億円)で買収すると発表した。Plaidが提供しているのは、フィンテック企業が銀行APIを利用できるようにするサービスで、すでに多くのフィンテックサービスでPlaidのAPIが利用されている状況だった。

2月──フィンテック新興企業の資金調達、2019年は若干鈍化と判明

どの業界でも毎年話題になるのが、前年に業界のスタートアップ企業がどのくらいの資金調達を行ったのかということだ。米調査会社CBインサイツの2月の発表によれば、2019年にフィンテックスタートアップが行った資金調達の総額は339億ドル(約3兆5,000億円)となり、2018年より69億ドル(約7,100億円)ほど少ない結果となった。また、2019年に登場したフィンテックユニコーンは24社に上ったという。

6月──ブラジルでのFB系電子決済サービス、わずか1週間で当局が停止命令

SNS大手Facebookは6月、傘下のチャットアプリ「WhatsApp」における初の電子決済サービスをまずブラジルで開始したが、まずか1週間でブラジル当局によってサービス提供の中止が命じられるという騒動があった。電子決済市場をFacebookに牛耳られる可能性にブラジル側が危機感を抱き、中止を命じたものとみられる。こうした事例はほかの国でも起きる可能性があり、国際的に波紋を広げたニュースとなった。

7月──手数料無料の株取引アプリ「Robinhood」が英国進出を断念

手数料無料で投資が可能なアプリを展開する米Robinhood(ロビンフッド)。ミレニアル世代を中心にユーザー数を伸ばしているが、7月にイギリスでのサービスリリースを無期限延期することが報じられた。イギリスでの事業はRobinhoodのグローバル展開の足掛かりとなるはずだった。同社の公式コメントによれば、当面は米国事業に専念する方針であるという。

8月──アメックスがフィンテックユニコーンのKabbageを買収

クレジットカード大手のアメリカン・エクスプレス(アメックス)は8月17日、中小企業向けのレンディングサービスを提供するフィンテック企業の米Kabbage(キャベッジ)を買収すると発表した。Kabbageはフィンテック領域におけるユニコーンとして知られており、機械学習などを活用した独自アルゴリズムにより短時間で審査・融資を行うことを事業としている。

8月──フィンテック企業のバーロに、米監督庁が銀行免許

アメリカのモバイル銀行のスタートアップ企業であるVaro Money(バーロ・マネー)は8月、フィンテック企業として初めて米通貨監督庁から銀行免許の許可を受けた。これまでは既存の銀行と連携しながらユーザーからの預金に対応していたが、新たに銀行免許を取得したことで、自社で独自に普通預金やローンなどのサービスを展開できるようになった。

10月──アント競合の中国フィンテック企業・陸金所が上場

AI(人工知能)技術を活用した独自アルゴリズムで与信サービスを提供し、銀行への顧客紹介を収益源としている中国の陸金所(ルーファックス)が、10月30日にニューヨーク証券取引所に上場した。同社のCEO(最高経営責任者)は、上場を足掛かりに世界で事業展開を加速させることに意欲を示した。陸金所はアリババの金融子会社で同業のアントグループのライバルとされている。

11月──習国家主席の指示か アント・グループの上場が突然中止に

陸金所の上場に続いて、中国アリババ傘下の金融子会社アントグループも11月に上場するはずだったが、上場予定日の3日前にIPO(新規株式公開)が中止されることとなり、世界的に波紋を広げた。アリババ創業者のジャック・マー氏が金融当局を批判する発言をしたことがきっかけとなり、報道によれば、中国の習近平国家主席が上場中止の決断の下したという。中国共産党の強権性を改めて内外に示すニュースとなった。

すでに競合ひしめくフィンテック業界、さらに競争激化へ

フィンテックは有望市場と言われて久しく、すでに競合ひしめくサービスも多い。各国で誕生したサービスがどんどん世界展開していく中、さらに競争は激しさを増していきそうだ。

文:CoinDesk Japan編集部
編集:濱田 優
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