ビットコイン、ESG懸念で機関投資家の参入が一時的に減速か

ビットコイン、ESG懸念で機関投資家の参入が一時的に減速か

テスラのイーロン・マスクCEOが注目の最前線に押し出したビットコイン(BTC)の環境負荷にまつわる懸念は、機関投資家の市場参入を鈍らせる可能性がある。しかし、アナリストや業界幹部らは、BTC市場が拡大する途中における今回の後退は一時的だとしている。

「暗号資産業界は再生可能エネルギーに取り組む必要がある。そうすれば、強気のトレンドを再開できるだろう」と、ブローカレッジ企業オアンダ(Oanda)のシニアマーケットアナリスト、エドワード・モヤ(Edward Moya)氏は語った。

電気自動車の購入におけるビットコインでの支払いの受け入れを停止するというマスク氏の方針転換は、大量のエネルギーを消費する暗号資産マイニングによる環境への悪影響を理由とするもので、デジタル資産市場には暗い影を落とした。

インフレヘッジとしてのビットコインに対する投資需要が、ここ1年でのビットコインの値上がりに寄与する最大のナラティブの1つだった。

しかし、そのトレンドは、機関投資家にとってもう1つの最重要事項であるESG(環境、社会、ガバナンスの頭文字を取った略語。環境に配慮した企業の取り組みを表す)へと急速にシフトした。

ブラックロック・フィンクCEOの書簡

約9兆ドルの資産を運用する世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)のラリー・フィンク(Larry Fink)CEOは今年、株主に宛てた年次書簡の中で、より優れたESGプロファイルを持つ投資には「持続可能性のプレミアム」があると述べた。

ビットコインマイニングは大量の電力を消費することは周知の事実だ。幅広く引用されている、ケンブリッジ大学オルタナティブ・ ファイナンス・センターによる研究では、ビットコインマイニングに使われるエネルギーは、オランダやUAE(アラブ首長国連邦)といった国々の消費量を超えていると推計されている。

ビットコインが抱えるESGの問題にマスク氏が注目を引き寄せたことで、機関投資家はビットコインに飛びつく前に、ESGへの対応をより迫られる可能性がある。

「ビットコインのエネルギー消費量」
(出典:ケンブリッジ大学オルタナティブ・ ファイナンス・センタービットコイン)

暗号資産の投資ファンドを運営する米グレイスケール・インベストメンツ(Grayscale Investments)のマイケル・ソンネンシャイン(Michael Sonnenshein)CEOは5月25日、米CoinDesk主催の「Consensus 2021」でパネルディスカッションに参加。環境面における懸念が「何らかの形で投資を抑止するもの」となったという話を投資家から聞いてはいないとしながらも、「この1つの分野に、突然多くの光が当たるようになった気がする」と述べた。

企業の財務戦略の一環としてのビットコイン購入を声高に提唱している、米ソフトウエア企業マイクロストラテジー(Microstrategy)のマイケル・セイラー(Michael Saylor)CEOは、マスク氏のツイートによって「ビットコインはメインストリームのメディアでの報道を独占した」と指摘。

「ビットコインの優れたストーリーがあることははっきりしたが、非常に複雑なストーリーだ」とセイラー氏は話した。

ビットコインの価格は5月、約3万8000ドルまで急落、2018年11月以来、月間の下げ幅としては最大となった。

「ビットコインの価格推移」
(出典:TradingView/CoinDesk)

ミレニアル世代の投資家を惹きつける

セイラー氏は今週、マスク氏と暗号資産マイナーとの会議を主催したと発表。ビットコインの環境面での課題を議論し、マイニング事業者のエネルギー消費に関するデータを集めるために「ビットコイン・マイニング協議会(Bitcoin Mining Council)」を結成した。

「データがあれば、機関投資家は参入の際に安心でき、思いとどまることはなくなる」とセイラー氏。「企業も他の機関投資家と同じ考えだと思う。ただ知識が欲しいのだ」

資産運用業界の600人を対象に行われた最近の調査によると、回答者の96%は今年、自らの会社がESGをさらに優先することを見込んでいることが分かった。

米証券取引委員会(SEC)のインターネット執行局(Office of Internet Enforcement)元局長、ジョン・リード・スターク(John Reed Stark)氏は、ビットコインのESG懸念は、間違いなく暗号資産への機関投資家による投資を冷え込ませると考えている。

「ESG関連の主張が大きな勢いを持つことには、力強い理由が存在している」と、スターク氏は語った。同氏は現在はデジタルコンプライアンスに特化した独立コンサルタントで、デューク大学法科大学院で教えている。「企業がミレニアル世代に訴えかけたければ、どれほど環境に優しいかを示すのが最善の策なのだ」

これまでのところ、様々な意見が入り乱れている。

ロイターによると、ブラックロックのフィンク氏は26日、年次株主総会においてビットコインに投資するかを聞かれると、「弊社は、暗号資産の進化を見守ってきた。それが意味するところ、インフラや規制状況などを検討中だ」と答えた。

ETF(上場投資信託)に特化した資産運用会社ウィズダムツリー(WisdomTree)のデジタル資産担当責任者、ジェイソン・ガスリー(Jason Guthrie)氏は、ビットコインのESGにまつわる懸念は、投資を考えている一部の人たち怖気付かせる可能性があると述べる。

環境負荷の低いアルトコインを探す動き

それでもデジタル資産投資を始めようと考える投資家は、イーサリアムブロックチェーンのネイティブ通貨イーサ(ETH)など、別の暗号資産に投資する可能性もある。

イーサリアムのブロックチェーンは現在、ビットコインと同じくエネルギー負荷の高い「プルーフ・オブ・ワーク」セキュリティーシステムを利用しているが、消費電力量が少なくなる「プルーフ・オブ・ステーク」へと移行する計画だ。

「参入しようと様子見をしていたが、この理由からイーサリアムの方に最初の投資を行う機関投資家たちが出てくるのは間違いない」とガスリー氏は語った。

暗号資産取引所FTXのサム・バンクマン-フライド(Sam Bankman-Fried)CEOは25日、「プルーフ・オブ・ワークを使っていても、カーボンオフセットを購入するのは法外に高いという訳ではない。我々は検討し続けてきた結果、FTXのエネルギー使用を相殺するためにカーボンオフセットの導入を決めた」

「ESGについては、多くのばかげた議論が起きてきたが、ある意味では健全な出来事だと思う。ESGがばかげているということではなく、議論がだ」と、バンクマン-フライド氏は話す。

バンクマン-フライド氏は今月、ブロックチェーン手数料として支払う1ドルごとに0.0026ドルを寄付すれば、必要なカーボンオフセットをまかなえるとツイートしている。

オアンダのアナリスト、モヤ氏は、暗号資産を支える機関投資家のマネーがあれば、ビットコイン業界は環境に優しい技術面での進歩を達成したり、投資家の懸念に応えるための方法を編み出すことができるかもしれないと話す。

ESGへの配慮は、ミレニアル世代などの若者世代にとって非常に重要であることから、大きなカギとなる。ビットコイン業界に変化を求める圧力は避けられないだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin ESG Concerns Might Slow Institutional Adoption, for Now

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