セキュリティトークンの時代を始める条件【オピニオン】

流動性があり、非公開で保有されている資産が数兆ドル、ブロックチェーン上で証券化されるのを待っている。数百万ドルのベンチャーキャピタルが、そこに乗っかろうとしている。なのになぜ、セキュリティトークンはいまだに盛んになっていないのだろうか?

2種類のトークン

トークンには2つの種類がある。ユーティリティトークンとセキュリティトークンだ。大半の人は、セキュリティトークンよりもユーティリティトークンに馴染みがある。ずっと一般的だからだ。(イーサリアム(ETH)やライトコイン(LTC)がその一例だ)

一方のセキュリティトークンは、資産、典型的には企業の所有権を表すもので、その資産の利益の一部に対する権利を保有者に与える。セキュリティトークンの方はあまり一般的ではない。

ユーティリティトークンは、カジノのチップのようなものだ。カジノ内では、プレーやディーラーへのチップのために通貨として使え、現金に戻すこともできる。カジノのチップの保有者は、カジノの所有権を持っている訳でもなければ、カジノの利益に対する権利も有してはいない。

一方のセキュリティトークンは、カジノの株式を所有しているようなものだ。カジノが儲ければ、トークン保有者は利益を得る。セキュリティトークン保有者は、収益や配当を通じて利益をもたらす可能性のあるものを所有しているのだ。ユーティリティトークンはエコシステム内で使われる。セキュリティトークンは、そのエコシステム内での所有権を与える。

2018年、多くの著名なユーティリティトークンの価値が暴落した時、暗号資産コミュニティはセキュリティトークンに集まってきた。民間市場、特に不動産市場に流動性をもたらす可能性に惹かれて、ベンチャーキャピタルがセキュリティトークンに注がれた。

その年、有名なベンチャーキャピタル企業のファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)とアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)が、暗号資産スタートアップのハーバー(Harbor)の、異例に大規模な2800万ドルのシードラウンドを主導した。ハーバーは、ブロックチェーン上で実世界の資産に所有権を与えることを約束する会社だ。

ハーバーの創業者は、Eメールが手紙に対して行ったことを、不動産市場に対しして行うと宣言した。それから3年が経ち、不動産市場には特に目立った変化はない。セキュリティトークンをメインストリームにしようとしたハーバーの取り組みの停滞は、セキュリティトークン業界全体で起こったことを反映している。大きな約束に、期待外れの結果だ。人々が、セキュリティトークンは失敗だと(誤って)結論づけるのも無理はない。

規制のハードルを超えて

ではなぜ、セキュリティトークンにはなかなか火がつかないのだろうか?

セキュリティトークンは、ユーティリティトークン(ビットコイン(BTC)やイーサなど)と比べて、米証券取引委員会(SEC)からより大きな規制上の監視を受けており、非適格投資家にパブリック・オファリングで売ったり、二次市場で取引するには、SECから完全に承認を受ける必要がある。規制上のハードルは、セキュリティトークンの成長や普及がパッとしない理由の1つである。

しかし、それも変化し始めている。SECは、セキュリティトークン・オファリングを認め始めているのだ。透明性と、規制上の明確さほど、金融商品を促進させるものはない。

SECは2019年7月、初めてレギュレーションAトークン・オファリング(ブロックスタック(Blockstack)の2300万ドルのオファリング)を認め、適格・非適格投資家の双方がすぐ取引できるトークンのセールに前例を作った。二次セールをめぐる明確性ももたらされた。

2020年7月には、アルカ・ラボ(Arca Labs)がセキュリティトークンの「ArCoin」の取引を開始。同トークンはSECに登録されたもので、アルカの米国債ファンド内のシェアを表している。

2020年9月には、SECがついに、暗号資産取引取引企業INXの8500万ドルのセキュリティトークン・オファリングを認可した。これは、SECが認めた史上初のセキュリティトークンIPOとなった。

SECは2021年4月には、エクソドス(Exodus)のレギュレーションAトークン・オファリングを認め、アメリカにある発行企業の株式を表す初のデジタル資産が誕生した。エクソドスはその後、6800人の個人投資家から、7500万ドルの資金を調達した。

セキュリティトークンは、アメリカだけで発生している訳ではない。5月には、シンガポールの銀行が、初のセキュリティ・トークン・オファリングを実施。年率0.6%の利息付きの1130万ドルのデジタル債券であった。

これらの動きは、比較的小規模に見えるかもしれないが、暗号資産業界にとっては、重要な変化を意味している。無法地帯から、完全な規制遵守へと進化したからだ。このような変化は、大規模なメインストリームでの普及の先触れとなる。

鍵はボラティリティ

これらの前向きな展開を考慮し、私はセキュリティトークンに対して非常に強気の見方を持つようになったが、それはセキュリティトークンが安定した利益をもたらすからではない。

暗号資産を人が支持する理由について、考えてみよう。その信じられないほどのボラティリティだ。1日に20%以上の変動も、珍しくはないほどだ。収入をもたらす安定した資産をトークン化しようとする過去の試みは、この根本的な真実を認めることができていなかった。

細分化という餌だけで、人々に投資を促すのに十分なほど魅力的だとしたら、不動産投資トラストはドージコイン(DOGE)と同じくらい人気になっているはずだ。

アスペンコインやrealTコインなど、初期のセキュリティトークンの問題点は、ドージコインのファンが愛してやまないような、大きなリターンの可能性を提供しなかったことだ。セキュリティトークン支持者たちは、安定したリターンを中核的価値提案として挙げるが、安定性は暗号資産の精神と矛盾するものだ。

抗し難いほど完璧に魅力的なセキュリティトークンとは、しっかりと規制を遵守し、高額のリターンの可能性を持った、定量化可能で検証可能な資産に裏づけられたものだ。なぜか?

SECの正当性と、暗号資産スタイルのリターンの魅力を組み合わせれば、ビットコインには少し手を出したが、無価値となるかもしれない、投機的なユーティリティトークンに投資するには臆病すぎる暗号資産に好奇心を持った保守的暗号資産投資家全員を、引き込むことができるだろう。

そんなコインが作られているだろうか?

皆がこの先の展開を待ち望んでいる。

ジェニン・ヨリオ(Janine Yorio)氏はRepublic Crypto – Strategic Assets & Initiativesのマネージングディレクター。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Security Tokens Are Back and This Time It’s Real