自動マーケットメーカーとは【暗号資産市場の基礎知識】

自動マーケットメーカーとは【暗号資産市場の基礎知識】

ユニスワップ(Uniswap)は 2018年に立ち上げられると、自動マーケットメーカーシステムを活用することに成功した最初の分散型プラットフォームとなった。

自動マーケットメーカー(AMM)とは、すべての分散型取引所(DEX)を支えるプロトコルだ。簡単に言うと、中央集権型取引所や、それにまつわるマーケットメイキングのテクニックの必要性をなくす自律型トレーディングメカニズムである。

マーケットメーカーとは何か?

中央集権型取引所は、トレーダーの動きを監視し、取引注文が適切にマッチングされるようにする自動システムを提供する。

つまり、トレーダーA氏が3万4000ドルで1ビットコイン(BTC)の購入を決めた場合、取引所は、A氏が好むレートで1BTCを売ってくれるトレーダーB氏を確実に見つけられるようにする。

言い換えれば、中央集権型取引所とは、トレーダーのA氏とB氏の間の仲介業者のようなものだ。その役割は、プロセスをできる限りシームレスなものにして、ユーザーの買い注文と売り注文をすばやくマッチングすることにある。

取引所が即座に、買い注文や売り注文に適合する注文を見つけられない場合にはどうなるのだろうか?

 そのような場合には、その資産の流動性は低いと表現される。

トレーディングにおいて流動性とは、資産がどれほど簡単に売買できるかを表す。流動性が高い場合には、市場が活発で、その資産を売買するトレーダーが多くいるということになる。逆に流動性が低ければ、取引は不活発で、資産の売買はより困難だ。

流動性が低い場合には、スリッページ(価格の差)が発生しやすい。つまり、取引を実行した時点での資産価格が、取引完了前に大幅に動く。これは、暗号資産市場などのボラティリティの高い分野で多く起こることだ。

そのため取引所は、価格のズレを抑えるために、取引が即座に実行されるようにしなければならない。

中央集権型取引所は、流動的なトレーディングシステムを実現するために、プロのトレーダーや金融機関に頼り、トレーディングペアに流動性を提供してもらう。

流動性を提供する個人や組織は、個人トレーダーの注文にマッチするために、複数の買値・売値注文を作成する。これによって、取引所は、すべての取引においてカウンターパーティーが常に用意されるようにできる。

このようなシステムにおいては、流動性プロバイダーがマーケットメーカーの役割を果たす。つまり、マーケットメーキングとは、トレーディングペアに流動性を提供するのに必要なプロセスを具体化したものだ。

自動マーケットメーカーとは何か?

中央集権型取引所とは異なり、分散型取引所(DEX)は、暗号資産取引に関わるあらゆる仲介プロセスを排除しようとするものだ。注文マッチングシステムや(取引所がすべてのウォレット秘密鍵を保管する)カストディアルインフラには対応していない。

そのためDEXは、ユーザーがノンカストディアルウォレット(個人が秘密鍵をコントロールするウォレット)から直接取引を開始できるような自律性を促す。

さらにDEXは、注文マッチングシステムとオーダーブックを、AMMと呼ばれる自律プロトコルに置き換える。これらのプロトコルは、自己実行型コンピュータープログラムであるスマートコントラクトを使って、デジタル資産の価格を定義し、流動性を提供する。

ここでは、プロトコルが流動性をスマートコントラクトにプールするのだ。厳密に言うと、ユーザーはカウンターパーティーと取引をしているのではなく、スマートコントラクト内にロックされた流動性に対して取引を行う。このようなスマートコントラクトはしばしば、流動性プールと呼ばれる。

注目すべきは、伝統的取引所においては、裕福な個人や企業だけが流動性プロバイダーの役割を果たすことができるのに対して、AMMでは、スマートコントラクトにハードコーディングされた要件を満たしさえすれば、誰でも流動性プロバイダーになることができる点だ。

AMMには例えば、ユニスワップ、バランサー(Balancer)、カーブ(Curve)などがある。

AMMの仕組みは?

AMMについてまず最初に知っておくべき大切な点は2つある。

中央集権型取引所で通常見られるようなトレーディングペアは、AMMでは個々の「流動性プール」として存在する。例えば、イーサ(ETH)をテザー(USDT)と取引したい場合には、ETH/USDTの流動性プールを見つける必要がある。

専用のマーケットメーカーを使う代わりに、プールに両方の資産を預け入れることで、誰でもプールに流動性を提供することができる。例えば、ETH/USDTプールに流動性を提供したい場合には、事前に設定された特定の割合のETHとUSDTを預け入れる必要がある。

流動性プール内の資産の割合が可能な限り均衡を保つようにし、プールされた資産の価格における食い違いを無くすために、AMMは事前に設定された数学的方程式を利用する。

例えばユニスワップやその他多くのDeFi取引所プロトコルは、シンプルな「x*y=k」という方程式を使って、流動性プール内の特定の資産の間の数学的関係を設定している。

xは資産Aの価値、yは資産Bの価値を表し、kは一定である。

つまり、ユニスワップの流動性プールは、資産Aの価格と資産Bの価格を掛け合わせたものが、常に同じ数字になるような状態を維持しているのだ。

この仕組みを理解するために、ETH/USDTの流動性プールを例に取ろう。トレーダーがETHを購入した場合、USDTをプールに追加し、ETHを取り除く。これによって、プール内のETHの数は減る。そうなると、「x*y=k」の均衡を保つために、ETHの価格が上がることになる。

対照的に、USDTがプールに追加されたために、USDTの価格は下がる。USDTが購入されると、反対のことが起こる。プール内のETH価格が下がり、USDT価格は上がるのだ。

自動マーケットメーカーの方程式
出典:Vitalik Buterin/ethresear.ch

AMMで大口注文が出され、多くのトークンがプールから取り除かれたり、追加されたりすると、プール内の資産価格と、市場価格(複数の中央集権型取引所で取引されている価格)の間に目立った食い違いが生じる。

例えば、ETHの市場価格は3000ドルでも、別のトークンを取り除くために、誰かが多くのETHをプールに追加したために、プール内では2850ドルとなる可能性がある。

つまり、ETHはプール内では割安で取引されることになり、裁定取引のチャンスが生まれる。裁定取引とは、複数の取引所における資産価格の差異を見つけ、安いプラットフォームで購入し、高いプラットフォームで売却する戦略だ。

AMMの場合、流動性プールで割安で取引されている資産を見つけ、市場価格と並ぶまで資産を買い続ける経済的動機をトレーダーは持つことになる。

例えば、流動性プール内のETH価格が他の市場における価格よりも低い場合には、裁定取引トレーダーはプールでより安くETHを買って、外部の取引所でより高く売ることでチャンスを生かせる。各取引に伴って、プールされたETHの価格は徐々に回復し、標準的な市場価格に合うようになる。

ユニスワップの「x*y=k」は、AMMが現在利用する数学的方程式の1つに過ぎないということに留意して欲しい。例えばバランサーは、はるかに複雑な数学的関係を用いて、ユーザーが単独の流動性プールで最大8つのデジタル資産を組み合わせられるようにしている。

一方のカーブは、ステーブルコインや似たような資産をペアリングするのに適した方程式を採用している。

流動性プロバイダーの役割

前述の通り、AMMが適切に機能するには流動性が必要だ。十分な資産を持たないプールはスリッページを生じやすい。スリッページを抑えるために、AMMはユーザーに対して、流動性プールにデジタル資産を預け入れ、他のユーザーがそれに対して取引できるようにすることを勧めている。

インセンティブとして、プロトコルは流動性プロバイダー(LP)に、プール上で実行された取引に対する手数料の一部を報酬として与えている。つまり、あなたが預け入れた資産がプール内の流動性の1%に当たる場合には、プールが獲得した取引手数料の1%に当たるLPトークンを受け取ることができる。

流動性プロバイダーがプールから出て行きたい場合には、LPトークンを換金し、割り当てられた取引手数料を受け取ることができる。

さらにAMMは、LPやトレーダーに対してガバナンストークンも発行する。名前の通り、ガバナンストークンは保有者に、AMMプロコトルのガバナンスや開発に関連する問題に対しての投票権を与える。

イールドファーミングのチャンス

前述のインセンティブに加えて、LPは収益を増大させることを約束するイールドファーミングのチャンスを活かすこともできる。この恩恵を受けるために必要なのは、流動性プールに適切な割合のデジタル資産を預け入れることだけだ。

預け入れが確認されたら、AMMプロコトルがあなたにLPトークンを送る。場合によっては、このトークンを別の貸付プロコトルに預け入れ、つまり「ステーキング」して、さらに利子収入を獲得することもできる。 

こうして、分散型金融(DeFi)プロトコルのコンポーザビリティあるいは相互運用性を活用して収益を最大化することができる。しかし、当初の流動性プールから資産を引き出すには、流動性プロバイダートークンを換金する必要があることに注意しよう。

変動損失とは?

流動性プールにまつわるリスクの1つは、変動損失だ。これは、プール内の資産の価格が変動した時に起こる。プールされた資産の価格が、資産を預け入れた時の価格から低下した場合には、LPは自動的に損失を出す。

価格の差異が大きければ大きいほど、損失も大きくなる。変動損失は一般的に、ボラティリティの高いデジタル資産を含むプールに影響を与える。

しかし、この損失は変動するものだ。価格割合が元に戻る可能性があるからだ。損失が確定するのは、価格が回復する前にLPがプールした資産を引き出した時だけだ。

さらに、取引手数料とLPトークンのステーキングから得られる収益は時に、そのような損失をカバーすることもある。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:What Is an Automated Market Maker?

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