LINEがNFTの海外事業を計画──米国、韓国に新会社「LINE NEXT」設立

LINEが、世界的な需要の拡大を続けるNFTの海外事業に乗り出す。

LINEは12月16日、NFTのグローバル事業の開発を進めるため、アメリカと韓国にそれぞれ新会社を設立したと発表。韓国で立ち上げたLINE NEXT Corporationは、NFTのグローバルプラットフォームの事業戦略を練り、アメリカのLINE NEXT Inc.が同プラットフォームの運営を行っていく。

NFT(ノン・ファンジブル・トークン=非代替性トークン):ブロックチェーン上で発行される代替不可能なデジタルトークンで、アートやイラスト、写真、アニメ、ゲーム、動画などのコンテンツの固有性を証明することができる。NFTを利用した事業は世界的に拡大している。

国内で約8900万人が利用するメッセージアプリ「LINE」を基盤に、LINEはこれまでにEコマースや株取引、決済、マンガ・音楽配信などのサービスを追加し、「LINE」のスーパーアプリ化を進めてきた。また、同社は独自のブロックチェーンである「LINE Blockchain」と、ウォレットの「LINE BITMAX Wallet」を開発し、ブロックチェーンを基盤技術とする暗号資産(仮想通貨)取引サービスと、NFT事業の拡大を図っている。

LINE NEXTは、海外の企業やクリエイターが簡単にNFTマーケットやサービスを開発し、ユーザーがNFTを取引できるエコシステムを築いていく。LINE NEXTの最高経営責任者(CEO)には、LINEでフィンテック部門とアプリ開発を主導してきた高 永受(コ ヨンス)氏が務める。

日本で開始したLINE NFT

LINEは国内では今年、NFTの取引(二次流通)ができるマーケットプレイス「LINE NFTβ(ベータ)版」の運営を開始した。2022年春をめどに、NFTの販売と取引を総合的に行える正式版のLINE NFTをローンチする計画だ。

LINEのベータ版では、人気アイドルの「週末ヒロイン ももいろクローバーZ」や、ゲームソフトなど幅広いデジタルコンテンツを保有するスクウェア・エニックス(スクエニ)が手がけたNFTが二次取引(二次流通)され、注目を集めた。

日本でもNFTの販売量が増加傾向にあるなか、LINEは子会社のLVCを通じて、コンテンツを保有する企業がNFTを販売でき、ユーザーがNFTを自由に取引できる一気通貫したマーケットプレイス「LINE NFT」の開発を進める。

グローバル市場に君臨するOpenSea

LINE NEXTの高CEOは、「NFT は、コンテンツ、ゲーム、ソーシャル、コマースなど、あらゆる領域でデジタル変革を起こし、ユーザー体験を革新する技術インフラだ」と述べた上で、「LINEがアジアで革新的なテックカンパニーとして成功した経験をもとに、韓国ではグローバルNFTプラットフォームの戦略企画を、米国では様々なグローバルパートナー企業とともに NFTエコシステムと NFTのグローバルにおける大衆化を実現するサービスをリードしていく」とコメントしている。

LINEがNFTのグローバル市場で事業を拡大させる上で、世界最大規模のマーケットプレイスであるOpenSea(オープンシー)の存在は無視できない。また、米暗号資産取引サービス最大手のCoinbase(コインベース)も、NFTのマーケットプレイス事業を開始する計画を明らかにしている。

OpenSeaは世界的に人気を集めているマーケットプレイスで、今年7月に実施した1億ドル(約114億円)の調達ラウンドでは、同社の評価額は15億ドルに達している。米ニュースメディアの「The Information」が11月に報じた記事によると、OpenSeaが計画している新たな資金調達ラウンドで、複数の投資家が同社の評価額を100億ドル(約1.14兆円)と試算する可能性があるという。

OpenSeaでNFTの取引を行う場合、ユーザーは通常、デジタルウォレットを利用する必要があり、米コンセンシス(ConsenSys)が開発したウォレットの「MetaMask(メタマスク)」が多く利用されている。

一方、LINEが国内で展開しているNFTマーケットプレイスでは、「LINE」アプリを利用するユーザーは、アプリ内のウォレット「LINE BITMAX Wallet」機能を無料で追加すれば、LINE NFT上でNFTの取引に参加することができる。

アジアには、韓国のKポップや日本のアニメなど、世界を魅了するコンテンツが数多くある。また、NFTマーケットプレイスを運営する多くの企業は、事業拡大を進める上で、北米市場を戦略的エリアに位置づけている。LINE NEXTは今後、アジアコンテンツをいかに欧米市場に繋ぎ込んでいくのだろうか。

|テキスト・編集:佐藤茂
|トップ画像:LINEの発表文より