ロシアでビットコインのクジラ急増か【Krakenリサーチ】

ビットコインの大口投資家を示す「クジラ」の数が、2月28日に急増した。ウクライナ侵攻に対するロシアへの経済制裁の一環として、ロシアのSWIFT(国際銀行間通信協会)排除が報じられた直後での急上昇となった。

2月28日に6.5%増

クラーケンのリサーチチームである「クラーケン・インテリジェンス」は、ビットコインのクジラを1000BTC(約50億円)以上を持つアドレス、イーサリアムのクジラを1万ETH(約34億円)以上を持つアドレスと定義している。

ビットコインのクジラの数は2月は減少傾向にあり、一時は2020年5月以来の最低水準である2108アドレスまで落ち込んだ。しかし、2月の最終日である28日に2121アドレスから2259アドレスへと一気に6.5%も増えた。

(画像:ビットコインのクジラが水色、イーサリアムのクジラが紫色/Kraken Intelligence)

背景にあるのは、ウクライナ侵攻を受けたロシアへの経済制裁が考えられる。

2月27日、欧米諸国が、SWIFT(スウィフト)と呼ばれる国際的な決済ネットワークからロシアの特定の銀行を締め出す措置を実行することで合意したと発表。3月1日、ロシアのルーブル建ての暗号資産(仮想通貨)取引高が9カ月ぶりの高水準を記録した。

また、ウクライナへのビットコイン寄付も増え続けている。3月1日、世界各地からウクライナに対して送られた仮想通貨の寄付額が2000万ドルを突破した。

クジラの保有量は減少

対照的に、ビットコインのクジラが保有するビットコインの保有量は、2月28日に809万BTCから806万BTCに減少した。1000BTCを大きくは上回らない新興のクジラが急激に増える一方で、クジラの中でも巨額のBTCを持つ巨大クジラが一部を利益確定した可能性がある。

(水色はビットコインのクジラの保有量、紫色はイーサリアムのクジラの保有量)

2月最初の週は801万BTCから810万BTCへと増加し、それ以降は2月28日まで横ばいだった。

一方、イーサリアムのクジラには目立った動きは確認できない。イーサリアムのクジラの数は、2月に1164アドレスから1156アドレスへとわずかに減少。保有量は8120万ETHから8140万ETHとわずかに増えた。生き残ったクジラが蓄積を進めていると考えられる。

「有事の仮想通貨買い」の対象になるのはビットコインであることが、改めて証明されたと言えそうだ。


千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。

※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。


|編集・構成:佐藤茂
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