ビットコイン頼み、経済封鎖に苦しむキューバの実情【コラム】

ビットコイン頼み、経済封鎖に苦しむキューバの実情【コラム】

私の名前はエリック・ガルシア・クルーズ。35歳のプログラマーだ。銀行口座もペイパルのアカウントもなく、マスターカードやビサのクレジットカードやデビッドカードも持っていない。これまでに、60を超える銀行や支払いプラットフォームに、利用を拒否されてきた。

なぜか?私がキューバで生まれで、今もキューバに暮らしているからだ。この国は1962年以来、アメリカによる禁輸措置の対象となっており、アメリカの企業や、アメリカの法律に準じて登記されている企業は、キューバとの取引を禁じられている。

この記事を読んでいる読者はおそらく、支払いのための幅広い金融ソリューションを利用できる国に住んでいるのだろう。銀行は、多くの人に預金してもらおうと、特典やより良い金利を用意しているのかもしれない。ペイパルやワイズ(Wise)などのグローバル金融サービスを利用して、アカウントを開設できる恵まれた環境にいるのかもしれない。

キューバ市民は、そんな特権を持っていない。ベンモ(Venmo)、ワイズ、ストライプ(Stripe)、レボリュート(Revolut)といったフィンテック企業は、キューバのスタートアップや市民を即座にブロックしてしまうのだ。

さらに困ったことに、海外に住むキューバ人が家族に送金するための最後の頼み綱であったウエスタンユニオンさえも、2020年11月、トランプ政権による経済制裁を受けてキューバへのドル送金を停止した。

キューバ企業も禁輸措置に深刻な影響を受けている。ペイパル、マスターカード、ビザなどのグローバルプラットフォームを通じて支払いを受け付けることができないからだ。

同時に、このような規制はすべて、キューバにおいて暗号資産(仮想通貨)が普及する肥沃な土壌を整えた。インターネットよりも前から存在していた禁輸措置を打ち破るのに、暗号資産ほど効果的なツールは、これまで登場したことがなかった。

キューバ市民はビザやマスターカードを持っていないかもしれないが、プリペイドバーチャルカードにビットコイン(BTC)で入金できるPayWithMoonがある。銀行は使えないが、ビットコインをパブリックなピアツーピア銀行として使っている。

インターネット支払いネットワークのストライプは、キューバ市民を受け入れてくれないが、ビットコインのライトニング・ネットワークを通じて一瞬で送金が可能だ。

暗号資産が唯一のオプション

キューバペソで暗号資産を購入できる暗号資産取引所は、キューバには存在しない。暗号資産を購入するには、ワッツアップかテレグラムのグループを介する必要があるのだ。

通常、買い手と売り手はメッセージで暗号資産の数と価格をやり取りし、信頼だけを頼りに取引を行う。買い手は銀行口座にキューバペソを送金し、売り手が約束通り、指定のウォレットにビットコインを送金するのを待つのだ。悲しいことに、詐欺が横行しており、買い手が何も受け取れないこともしばしばある。

それでもキューバ市民は、このようにするしかない。コインベースやバイナンスなどの暗号資産取引所は、禁輸措置に従う必要があるため、キューバのユーザーを即座にブロックしてしまうからだ。

企業も、支払いプラットフォームを使って、インターネットでの本の販売や、キューバでのシンプルな配送サービスを自動化することはできない。キューバ市民ではない海外在住の親戚、友人、ビジネスパートナーが、企業のオーナーを助けてくれない限りは。

ビットコインは、このような問題を解決している。

現時点では、キューバにある店舗は、ビットコインでの支払いを受けつけるのに個人用ウォレットを持つ必要がある。顧客にQRコードを提供して、支払いを受けつけるのだ。オープンノード(OpenNode)のようなビットコイン支払い自動化プラットフォームがキューバで利用可能であれば、地元企業はオンラインでも店頭でも、支払いを自動化することができる。しかし、禁輸措置のために、今のところそれは実現していない。

私は2019年、ビットコインに飛びつき、キューバ市民がビットコインネットワークを使って、高速かつ安価に資金のやり取りをできるようにする企業QvaPayを立ち上げた。現在、暗号資産が送金のための唯一の方法となっている4万8000人以上の顧客を抱えている。

私は、キューバ全土でビットコインを宣伝することに時間を費やしている。数人の友人とともに、暗号資産起業家、アーティスト、愛好家の初の集まり「Cuba es Bitcoin」を企画した。最初のイベントは、2月にハバナで行われた。

草の根の普及

私はキューバが、ある種のハイパービットコイン化(ビットコインが支配的な通貨へと移行すること)を経験すると予測している。これは、レストラン、携帯電話修理店、配達業者などでビットコインが受け入れられていることによって、すでに有機的かつシンプルに発生している現象だ。

支払いとしてビットコインを受け入れる企業はしばしば、暗号資産で預金したり、他の企業への支払いを暗号資産で行う。さらに、BitrefillやPayWithMoonといったプラットフォームを通じて、アメリカで物品を購入する。暗号資産をキューバペソへと換金し、国内での資材の購入に使うこともできる。

キューバ国内での暗号資産の普及度合いについて、公式データは存在しないが、日常的に暗号資産を使用するキューバ市民は2万人以上いると、私は見積もっている。どこかの時点でウォレットを持ったり、暗号資産を使ったことのある人は、20万人もいる。

私の立ち上げたQvaPayとBitremesasという2つの会社は、これまでに15万のウォレットに暗号資産を送っている。この数字は少なく見えるかもしれないが(暗号資産に投資したことがあるアメリカの成人の数は、最大4000万人)、キューバが抱える経済的困難を考慮すれば、成長の可能性は大きい。

暗号資産は、キューバ政府の目にも留まっている。キューバ中央銀行は8月、商業用取引に一部に暗号資産の利用を承認し、集金などの特定の金融行為を実行するために、暗号資産サービス提供業者へのライセンスを与えることも認めた。

企業がアメリカによる禁輸措置に従い、キューバ市民を排除しなければならないのは理解できる。しかしそれによって、ユーザーに経済的な力を与える支払いシステムを提供することができなくなってしまうのだ。

ありがたいことに、ビットコインはそのような法律の縛りを受けたり、地理的な制約を受けることはない。禁輸措置などお構いなしなのだ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:キューバの首都ハバナ(Kamira / Shutterstock.com)
|原文:You Would Understand Bitcoin if You Were Under Cuba’s Embargo

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