米国債やゴールドを購入している国はビットコイン債を購入するか

エルサルバドルの「ビットコイン債」は、国家財政の新時代を切り開くはずだった。だがプロジェクトは混乱しているようで、ビットコイン債を詳しく見ると、投資家にとってさほど良いものとは言えない。

ビットコイン(BTC)は、アメリカの通貨覇権への疑問から、国家のバランスシートにおける新たな資産クラスとなると言われてきた。しかし、各国は依然として米国債を信頼している。アメリカ主導のグローバル化に抗議しながらも、国家の資産としてゴールドではなく、米国債を選ぶ国さえある。

データによると、2008年以降、海外および国際的な投資家が保有する米国債の増加は、ゴールドを上回っている。2010年代中頃にはスローダウンしたものの、新型コロナウイルス感染拡大で加速した。

だが、ゴールドに関心を示す国もある。むしろ新型コロナウイルスで大きな打撃を受けた多くの国が積極的にゴールドを購入している。日本、タイ、インドでは2021年、ゴールドの保有量が2桁の伸びを示した。

エルサルバドルのブケレ大統領は、ビットコイン債は国際通貨基金(IMF)やドルに縛られない新たな財政手段となると述べた。また、火山の地熱を都市のエネルギーに利用する、野心的なプロジェクトも可能になるという。ビットコイン価格が今後5年で100万ドルまで上昇すれば、実現するだろう。

もう一つ、注意点がある。ビットコイン債はエルサルバドル政府ではなく、国営電力会社CELの子会社LaGeoが発行する。エルサルバドル政府は、技術的な問題に過ぎず、政府の債務であることに変わりはないとしている。

こうした複雑な背景とビットコイン価格の低迷で、ビットコイン債は他国にとっては魅力のないものになっている。データを見ると、各国はすでに保有しているもの、つまり利回りは低いが安全な米国債とゴールド以外は望んでいない現実がある。保有する米国債を売却すると昔から圧力をかけている中国でさえ、減らしているものの、健全な保有量を保っている。

ブケレ大統領の計画にメリットがないわけではない。

IMFはグローバルな高利貸しと昔から批判されている。計画がうまくいけば、ブケレ大統領はより有利な条件で資金を集めることができる。ビットコインで借金を賄うことは、途上国にとっては斬新な試みかもしれない。

しかし、国家は保守的な存在だ。特にアジアでは、官僚制度はプロセスに時間がかかり、アジア金融危機の記憶もまだ新しい。ドル破滅論者やアメリカでは分断が進んでいると考えている人がいるにもかかわらず、米国債は依然として需要があり、ゴールドでさえ、そのポジションを奪うことはできない。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:First Mover Asia: Why Japan, China and Other Regional Powers Are Still Putting Their Faith in T-Bills, Gold; Cryptos Climb Higher