イーサの値上がり:「The Merge」が牽引?【コラム】

イーサの値上がり:「The Merge」が牽引?【コラム】

時価総額で世界2位の暗号資産(仮想通貨)イーサ(ETH)がここ1週間、45%値上がりしている。これは、投資できる他の資産の大半を凌ぐパフォーマンスである。この理由は、シンプルなものかもしれない。

トレーダーたちは、イーサリアムの開発者軍団が、長年にわたる超複雑なアップグレードの終わりに近づいていることで、強気になっている。

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影響力の強いポッドキャストを手がけ、暗号資産業界のオブザーバーであるナタニエル・ホイットモア(Nathaniel Whittemore)氏は、自身のポッドキャスト「The Breakdown」の最新エピソードでそのように主張した。

ツイッターやディスコード、暗号資産が議論されるその他の場所でも、大型アップグレード「The Merge(ザ・マージ)」が市場を牽引する可能性を認める動きが強まっている。

値上がりが始まったのは先週。イーサリアムの開発者ティム・ベイコ(Tim Beiko)氏が、公開開発者会議の場で、イーサリアムのセキュリティを確保するためのエネルギー負荷の高い「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」から、より環境に優しい「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」プロトコルへと移行する日を、9月19日と提案した後のことだった。

このアップグレードは、ホイットモア氏の言う通り、価格低迷の厳しい数カ月を経た暗号資産市場に「楽観主義の復活」を告げるものだ。さらに「The Merge」は、暗号資産テクノロジーがどのように世界を作り変えていくかについて、暗号資産のファンたちが他の人たちに語るストーリーの「ナラティブの空白」を埋めてくれる。

ナラティブの有用性

ナラティブは、共通の信条に沿って行動をまとめるのに便利だ。しかし、危険な幻想ともなり得る。例えば、破産申請をした暗号資産ヘッジファンド、スリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)の共同創業者スー・チュー(Su Zhu)氏の「スーパーサイクル」という考え。これは、直近の暗号資産の値上がりが、持続可能なものであるという主張であった。

この考えを根拠の1つとして、無数の企業がスリー・アローズに資金を提供したが、いくつかの取引の失敗と市況の悪化という壊滅的な現実に直面し、スリー・アローズは破綻することとなった。

イーサリアムについて楽観的になるのには、いくつかの理由がある。まず、「The Merge」は暗号資産の14年の歴史の中で、最も高度なアップグレード。ETHは環境負荷の少ないシステムへと移行し、最もよく使われるブロックチェーンの機能が改善されるのだ。暗号資産を好意的に伝えるニュースともなり得るだろう。

「The Merge」が価格を押し上げる構造的な理由も存在する。アップグレードによってイーサリアムが使われる方法に構造的変化が生じ、ネットワークに自らの資産をステーキングするトークン保有者が報われることになるのだ。

このシフトによって、ビットコインのようなデフレ的圧力が生み出され、イーサ保有者はさらに報われる可能性もある。この場合、現在「The Merge」を見越してイーサを購入している人たちは、トレーディングというよりは投資と考えているのかもしれない。

「『The Merge』が実施される時には、売り圧力はほぼゼロと言っていいだろう。ステーキングしている人は皆、資産がロックアップされており、stETH(ステーキングされたイーサ)を保有している人たちは皆、ペッグが回復するまで保有し続ける。ボイジャーやセルシウスに資産を預け入れていた人たちは、破産処理で5〜10年資産が自由にならない」と、暗号資産コメンテーターのEthereum Jesusはツイートした。

あらゆるナラティブに関して言えることだが、人々がそれを信じてトレーディングするのに、真実である必要はない。「The Merge」のニュースを受けて人々がイーサを買う可能性があるということが、多くの暗号資産価格の上昇を支えるフィードバックループの典型例であるという認識が広まっている。

それでも、リスクは高い

価格が吊り上がった後に、「叩き売り」が続かないことが望まれる。「The Merge」は、何年にも及ぶ努力と数え切れないほどのテストネット、ネットワークを改善させるだけでなく、時の試練を経て後世まで生き残るものにしようとする、ETHの支持者たちのコミットメントの集大成なのだ。

これは、人々が信じて投資することのできるストーリーだ。しかし、このアップグレードはそれでもリスクの高い投資であり、長期的な規制、技術面でのリスクもあることを認識することが大切だ。

ホイットマン氏はポッドキャストの冒頭で、暗号資産が「他のあらゆる資産クラスと同様に」、米連邦準備制度理事会(FRB)によるインフレや景気後退に対する取り組みといった広範なマクロ経済的要素にさらされていることについて議論した。

「暗号資産も影響を受けない訳にはいかない」とホイットモア氏は述べ、「真の強気相場」は、FRBが金融引き締め政策を終えない限り戻ってこないだろうと主張。しかし、とりあえず今のところ、暗号資産は新たなナラティブを手にしたようだ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Is the Ethereum ‘Merge’ Driving This Rally?

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