アバランチ告発報道をひも解く【オピニオン】

アバランチ(Avalanche)ブロッックチェーンとAVAXトークンを手がけるアバラボ(Ava Labs)が、非難の的となっている。同社が競合他社を攻撃するために、一連の集団訴訟を起こしたとする情報が公表されたのだ。

敵対的訴訟の疑い

告発サイト「クリプト・リークス(Crypto Leaks)」は8月26日、アバラボが暗号資産の専門法律事務所ロシェ・フリードマン(Roche Freedman)にトークンと株式で対価を支払って、敵対的訴訟を仕掛けさせたとする、長文のレポートを掲載した。

アバラボのCEO、エミン・グン・シラー(Emin Gün Sirer)氏は、この嫌疑は「断じて誤り」と主張している。

ロシェ・フリードマンの創設者カイル・ロシュ(Kyle Roche)氏が、ソラナ(Solana)やディフィニティ(Dfinity)などの競合レイヤー1ブロックチェーンに対して、「磁石」のように規制当局からの注目を集めさせ、アバランチの利害を守るために、アメリカの法システムを利用したと語る様子を内密に記録した一連の動画も投稿された。

ロシュ氏は動画の中で、アバラボやその創業者たちとの密接な関係や、アバランチに対して自らが経済的利害を持っていることなども語っている。

この告発の内容が真実だとしたら、アバラボにとっては非常に不利となるもので、暗号資産の世界にも、反競争的な行為が健在であることを示す証拠となる。しかし、この報道について、懐疑的にならざるを得ない理由もいくつか存在する。

現在、真実を追求する取り組みは、あらゆる関係者が何らかの真実を隠しているような水かけ論へと発展しており、このままでは、暗号資産の評判を貶めるだけだ。

問題の中核となっている、アバラボが法システムを武器として使ったという点は、第三者によって反証することのできないものであり、さらなる検証が必要だ。

偏りのある告発

しかし、レポートの中には、明らかなバイアスを示す部分もある。それを根拠にこの報道を中傷と考えるかは読み手次第だが、事実に関して、明らかな問題があることに変わりはない。

何が真実かを判断する時には、小さな事実が大切だ。私としては、クリプト・リークスの報道が、コーネル大学元教授のグン・シラー氏がすでに大学での教職を退いていた事実を反映するために更新されなければならなかったことは、重大だと考えている。

このことは、コンピューターサイエンティストのグン・シラー氏が、民間でのビジネスに専念するために大学を去る決断をした数カ月前に、公に発表されていたのだから。

更新された記事では、グン・シラー氏が問題を抱えて大学を去ったような書き方がされているが、これには根拠がない。クリプト・リークスでは、大学で終身在職権を得ることができず、「(ビットコインの生みの親)サトシ(・ナカモト)への嫉妬」に苦しみ、もしかしたら「社会病質者」の可能性もある人物として、グン・シラー氏を描いており、この点を軽視するべきではない。

一方で、芝居がかって大げささだからと言って、告発者を非難することもできない。しかし、隠し撮りの実際の映像よりも、間接的な証拠に頼ることで、この告発がその信憑性を弱めていることは確かだ。

例えば告発者は、ロシェ氏がリンクトイン(LinkedIn)のプロフィールページで、フロリダ在住であること(税金逃れのため?)や、アバラボがクライアントであることを記載していない点を、問題視している。

疑問点だらけの事態

裏心のある推論の例が積み重なると、それぞれが小さいものでも、疑念が湧いてくる。しかし、同じ理由で、アバラボ側の素早い反論にも懐疑的でなければならない。

その反論は、競合のブロックチェーンプロジェクト、ディフィニティがこの調査に資金提供している、という点にかかっている。(ロシェ・フリードマンは、「証券取引法違反」とインサイダートレーディングの罪で、ディフィニティに関連する組織に対し訴訟を起こしているのだ。)

ディフィニティとクリプト・リークスの間に関係があることを示唆する状況証拠は存在する。例えば、クリプト・リークスは過去に、ソラナとニューヨーク・タイムズ紙を相手に、ディフィニティを擁護する報道を複数行っていたのだが、両者の間で金銭の流れがはっきり証明されている訳ではない。

さらに今回の報道への反論の中で、アバラボも、グン・シラー氏も、ロシェ氏も、アバラボがロシェ氏の手がける「トークン化された訴訟」プラットフォームRyvalを支援していることを認めていないのだ。この事実は、アバラボがロシェ氏と関わっていたのは、プロジェクトの初期だけという主張と食い違っている。

Ryvalは、訴訟を暗号資産化するために作られたもので、訴訟の結果に投資することが可能になる。アバラボでは2020年に、同プラットフォームを支援することを発表していた。

こうして手元に残るのは、撮影者および入手経由不明の大いに編集された一連の動画のみ。その中でロシェ氏は、自らの仕事ぶりや同僚について大げさな主張を展開している。ロシェ氏は、ノルウェー出身のベンチャーキャピタリストで暗号資産起業家である男性によって、だまされ、「泥酔させられた」上での発言だったと、後に釈明している。

ロシェ氏もグン・シラー氏も、ロシェ氏の「提訴側としての行為」についてアバラボは何も知らなかったと語っている。かといって、彼らが認めているよりも両者が密接な関係を持っていた可能性は否定しきれない。

誰が得をするのか?

しかし、アバラボやロシェ氏が、バイナンスやコインベース、クラーケンなどの暗号資産取引所を計画通り提訴することに、どんなメリットがあるのか、という点も考えなければならない。

ロシェ氏の言葉が、雄弁に語っている。彼は「面白半分」に、そして内部情報を手に入れるために訴訟を起こしたのだ。これは軽率な発言によって、初めて明らかとなった事実だ。

ロシェ氏のキャリアは、これでおそらく終わりだろう。このような面倒な事態に関わったことで、評判はガタ落ちだ。だまされて会話に応じていたのだとしても、何日間にもわたって撮影されていた動画に登場する人物が自分ではないと、否定することはできないのだ。

そして、戦略の問題もある。アバラボは本当に、自社も同じようなトークンでのビジネスを展開しているというのに、競合を規制当局に証券取引法違反で取り調べさせることに、究極的にメリットがあると考えたのだろうか?

ディフィニティが競合に対する中傷に資金提供している可能性も含め、互いに墓穴を掘り合っているような状況だ。

もちろんこれまでに書いてきたことは、推測に基づいた推測だ。もちろん、弁護士は必ずしも、クライアントの利害を第一に優先する訳ではない。そしてもちろん、暗号資産プロジェクトは必ずしも、高潔さと名誉を保って行動する訳ではない。この下劣な一連の事態において、疑いの余地のない主張など1つもなさそうだ。

事態はまだ展開中であり、さらに多くの情報が明らかになっていくだろう。そのすべてを疑ってかかる必要がある。アバラボが弁護士に非倫理的に報酬を支払い、競合を攻撃させていたのが事実だとしたら、それは残念だ。

アバランチは、それを手がける自我の強い人たちをはるかに超えた大きなプロジェクトであり、どちらにしても成功していたかもしれないのだから。AVAXは19日、11%値下がり、その後大きく回復している。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:What to Make of the Avalanche Whistleblower Report