中国人民銀行、デジタル通貨責任者を任命──リブラとの違いを強調:報道

中国人民銀行(中央銀行)は、新しくデジタル通貨責任者を任命した。同責任者は、ローンチ間近のデジタル人民元には、ソーシャルメディア大手フェイスブックの仮想通貨「リブラ(Libra)」にはない機能を備えていると述べた。

上海証券報は2019年9月6日(現地時間)、中国人民銀行決済局の元次官の穆長春(Changchun Mu)氏がデジタル通貨研究所の責任者に就任したと報じた

上海証券報によると、穆氏は、中国人民銀行のデジタル通貨の詳細を最近発表し、同通貨は「価値という特性」を持つ電子決済ツールであり、デジタル通貨であると説明した。同通貨は、北京の本店から離れた秘密のオフィスで開発が進んでいるという。

「機能的特性は紙幣とまったく同じで、デジタルという形を取っているだけです」と、穆氏は述べた。

おそらく最も特筆すべきは、穆氏が中国人民銀行のデジタル通貨の技術的側面をいくつか説明し、フェイスブックのリブラと比較したことだろう。

中国人民銀行のデジタル人民元は、口座およびモバイルネットワーク、もしくはインターネット無しでもユーザー間の送金が可能だと、上海証券報は穆氏の発言を引用して報じている。ユーザーの携帯電話にウォレットが搭載されてさえいれば、相手の携帯電話に物理的に接触させることで、このデジタル通貨を相手に送金できる。おそらくこの機能は「ニア・フィールド・コミュニケーション(NFC)」によって実現される。

「たとえリブラでもこのようなことはできません」と穆氏は語っている。

上海証券報の報道によると、中国人民銀行のデジタル通貨はまた、使用に銀行口座を必要とせず「従来の銀行口座システムの管理から解放されている」と穆氏は述べている。また、システム利用時に自身のプライバシーを保護することも可能だとも同氏は示唆した。

しかし、このデジタル通貨は、法定通貨のように商業銀行を通じて提供される。商業銀行は中国人民銀行に口座を開設し、トークンをその価値と同額で購入しなければならない。その後ユーザーは、銀行または商業組織を通じてデジタル通貨向けのデジタルウォレットを開設することが可能になる。

上海証券報によると、穆氏はデジタル通貨開発の主な理由は、通貨主権と中国の法定通貨を保護するために「前もって準備する」ことにあるとしている。この発言は、中国人民銀行がリブラの出現がによって、デジタル通貨開発を性急に進めていることを示唆している可能性がある。

中国人民銀行の前総裁、周小川(Zhou Xiaochuan)氏は「リブラは、従来の国際事業、および決済システムに影響を及ぼす構想を発表した」と7月に発言している

そのため、中国は「十分な準備をし、中国元をより強い通貨にする」べきである、と周氏は述べた。

翻訳:山口晶子
編集:町田優太
写真:Yuan image via Shutterstock
原文:New Head of China’s Digital Currency Says It Beats Facebook Libra on Tech Features