テレグラムのトークン、無名の取引所が最初に販売か

テレグラム(Telegram)が待望のブロックチェーンを今月か来月にローンチする際、新しいトークンにとって頼りになるマーケットプレイスは、ユーザー数4000にも満たない、生まれたばかりの取引所かもしれない。

少なくとも「ブラックムーンクリプト(Blackmoon Crypto)」はそう願っている。だが、マルタに登録された同取引所が優位に立っていることは間違いない。2018年前半にテレグラムが販売したトークンの投資家の3分の1以上と契約したと主張するカストディアンとの関係もその一因だ。

ブラックムーンのCEO、オレグ・セイダック(Oleg Seydak)氏はまた、スイスのカストディアン「グラムボールト(Gram Vault)」のCEOでもあり、両社は協力して彼らの大口投資家にトークンを販売するマーケットプレイスを提供する計画。

つまり、グラムに基づく先物に似た商品を販売していた数多くの取引所とは異なり、ブラックムーンはメインネットが稼働次第、正規のTON投資家から直接、本物のグラムを販売できる唯一の市場となると最高業務責任者のセルゲイ・バシン(Sergey Vasin)氏は述べた。

バシン氏は次のようにCoinDeskに語った。

「これまでにグラムの販売を発表していた取引所は、実際には複数のデリバティブを上場していた。我々は気にしない ── 最終的に、彼らはユーザーに約束したものを提供するために流動性を求めることになり、我々からプレミアム付きでグラムを買うことになるだろう」

両社のつながり

ブラックムーンにとっての、もう1つの大きなアドバンテージは、17億ドルのテレグラム・オープンネットワーク(TON)プロジェクトを支えるテレグラムとのつながり。

TONの開発・投資プロセスに詳しい情報筋によると、ブラックムーンは、テレグラムとブロックチェーンおよびトークンのインフラで協力している緩やかな企業ネットワークに属している。

TON開発者向けツールに取り組んでいるTONラボ(TON Labs)のCEO、アレクサンダー・フィラトフ(Alexander Filatov)氏は、グラムボールトは「多数の信頼できる国際的なパートナーと協力して、グラムのための市場初のカストディ・ソリューションに取り組んでいる」とCoinDeskに語った。

「TONラボは、このプロジェクトに技術サポートを提供している」

さらにセイダック氏は、テレグラムのバイスプレジデント、イリヤ・ペレコプスキ(Ilya Perekopsky)氏が共同創設したブラックムーン・ファイナンシャル・グループ(Blackmoon Financial Group)のCEOでもある。

しかし、ブラックムーンクリプトはテレグラムとの直接的な関係を否定した。

「ブラックムーンはイリア・ペレコプスキ氏あるいはテレグラムに雇用されている人物とは無関係」とセイダック氏はメールでCoinDeskに語った。

「我々はイリア氏と他のベンチャービジネスで提携しているが、私がブラックムーンの唯一の株主であり、ゼネラルマネージャーであることとは関係ない。ブラックムーンは2018年10月に設立された。イリア氏は参加していない。我々はテレグラムの新しいブロックチェーンについての、独自の技術統合戦略を開発した。その目標を達成するために、テレグラムのチームと提携する必要も計画も持っていない」

穏やかな始まり

キプロスに拠点を置く関連会社のブラックムーン・フィナンシャル・グループ(Blackmoon Financial Group)は2014年に設立され、レンディング・マーケットプレイスとしてスタートした。2017年、仮想通貨部門が設立され、3000万ドルのイニシャル・コイン・オファリング(ICO)で資金を調達した。

ブラックムーンはこれまで、シャオミ(Xiaomi)やリフト(Lyft)といった企業の株式をもとに、イーサリアム(Ethereum)トークンの発行と取り引きを行ってきた。もととなる株式はカストディアンのVasin sIDに保管されている。

このビジネスはあまりうまく行かなかった ── バシン氏によると、ユーザーは今、3800人ほどしかいない。しかし、グラムトークンが発行されると、メインネットがローンチしてから数日でその数は1万5000に跳ね上がるとバシン氏は期待している(TONネットワークは10月31日までにローンチ予定)。

「予測は、この情報が漏れた日の新規登録者数に基づいている」とバシン氏は、8月9日に同社の広報担当者がフライングして、グラムが予定より早く上場する計画に関するプレスリリースを発表したことに触れながら語った(ブラックムーンは9月10日、公式にその計画を発表した)。

バシン氏によると、ブラックムーンは、グラムの本当の流動性を求めて取引所を訪れる個人投資家と洗練されたアルゴリズム・トレーダーの両方をターゲットにしている。

十分な資金力

流動性は、グラムボールトから供給される。

「グラムボールトは、ディールの両ラウンドで6億ドル以上を投資したテレグラム・オープン・ネットワークの複数の大手投資家によるジョイントベンチャー」とブラックムーンの最高事業開発責任者、アルフレッド・オレゴ(Alfredo Orrego)氏は述べた。

さらに、そうしたクライアントのために、法令に準拠した機関投資家レベルのカストディ・ソリューションの必要性に端を発してグラムボールトは作られたと付け加えた。

オレゴ氏によると、グラムボールトの正式名称は「スイス・デジタル・グループ(Swiss Digital Group)」、イニシャル・トークン・セールに参加した投資家のみにサービスを提供している。カストディアンの取引所とのパートナーシップについて、同氏は以下のように説明した。

「グラムボールトのトレーディングデスクは、そのユーザーのためにグラムを取り引きするために、他の流動性プロバイダーとともにブラックムーンを利用する。ブラックムーンは、TONとの技術的統合とグラム上場のために必要なリソースを割り当てを行う」

バシン氏は、ブラックムーンに上場した後のトークン価格を迷いながらも、3ドルと予測した。テレグラムの2回のトークン販売において、投資家は1トークンあたり0.37ドルと1.33ドルを支払った。その後、非公認の流通市場では、1トークン4ドルもの値をつけた。

TONは10月31日までにローンチされる予定。9月6日にはTONブロックチェーン・ノードのコードが公開され、ローンチ前テストの最終段階を迎えた。

翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸
写真:Telegram logo image via Shutterstock
原文:Little-Known Exchange Claims It Will Be First to Sell Telegram’s TON Tokens