Facebook「リブラ」は間違いなく警鐘を鳴らしている:欧州中銀幹部

欧州の中央銀行関係者によると、フェイスブック(Facebook)のリブラ(Libra)は国際決済市場のいくつかの問題を解決する可能性もあるが、規制当局が頭を悩ませるその他多くの問題を生み出しかねないという。

ドイツ連邦議会への2019年9月25日(現地時間)のコメントにて、欧州中央銀行(ECB)のブノワ・クーレ(Benoit Coeure)理事は「リブラによって、中央銀行と立法者に警鐘が鳴らされたのは疑いようもない」と述べ、かかる課題に対処しなければならないとした。

同氏は、ステーブルコイン(stablecoin)、特にフェイスブックの仮想通貨リブラは、現在金融から離れている世界中で17億の人々を繋げるのに役立つと同時に、国際的な支払いをより安く、より速く、より透明なものにすると付け加えた。

アクセスを改善し、国際的な支払いを促進することで、現在の市場構造における2つの主要な欠陥に対処することができる。

国際決済銀行(BIS)の決済・市場インフラ委員会(CPMI)委員長を務めるクーレ氏によると、フェイスブックの率いるコンソーシアムが後押しするリブラは、既存の巨大なユーザーベースに結び付き「真にグローバル」なものになるという。同氏は、ステーブルコインに関する主要国首脳会議(G7)作業グループの議長も務めている。

同氏は、ステーブルコインについて多くの懸念を呈した。マネーロンダリングやテロ資金に利用できるとし、消費者保護、データセキュリティ、ネットワークの安定性、競争、課税問題の可能性が言及された。

また、ステーブルコインが金融政策と金融の安定に深刻な影響を与えるとも指摘している。ステーブルコインは、通常ルート以外のマネーサプライに影響し得て、ペッグが約束通りとならなかったり信用が損なわれた際、金融システム全体に影響を与える可能性があるためだ。

国際決済銀行が同氏のコメントを要約した文書では「各国の通貨主権が侵害されるリスクがある」と記されている。

同氏は、既存の政策枠組みの中でリブラを規制するためにできることは多々あると考えているものの、新たなアプローチが必要だと語った。また、「国際的に整合性のとれた」方法で規則が適用されなければならないと述べ、これは世界中の機関が協働する程度について示唆している。

同氏は、ステーブルコインに関するG7作業グループによる勧告の提出は、2019年10月14~20日に予定されるIMF・世銀総会に間に合わせる旨を、コメントに残している。

同氏の発言は、リブラが一部で、特に欧州と中国において、敵意に直面していることを受けたものだが、このステーブルコインを歓迎しつつも厳格に監督するというバランスのとれたアプローチをめぐって合意が形成されつつあることを示している。

翻訳:新井朝子
編集:T.Minamoto
写真:ECB image via Shutterstock
原文:Libra Crypto Is ‘Undoubtedly’ a Wakeup Call for Central Banks, Says ECB Exec