ビットコインが6万ドルを割り、さらなる反落のリスク──FTX破綻後で最悪の月
  • ビットコインは4月に16%以上下落し、2022年11月以来最悪の月になりそうだ。
  • Lednの最高投資責任者は、ビットコインは5万ドル台前半の水準まで下落する可能性があると述べた。
  • ブルームバーグ・インテリジェンスのETFアナリストは、香港の現物暗号資産ETFの発売は予想されていたほど悪くはなかったと指摘した。

香港の現物ETF(上場投資信託)の発売が不調だったように見えたことと、金利への懸念でビットコイン(BTC)が6万ドル(930万円、1ドル155円換算)を下回ったことは、4月30日火曜日にトレーダーに十分な売りの理由を与えた。暗号資産(仮想通貨)の調整を弱気相場と呼ぶ時が来たのかもしれない。

ビットコインは午後に5万9100ドルの安値をつけた。2月下旬以来の最安値となり、過去24時間で5%以上下落している。同じ期間のCoinDesk 20 Index(CD20)はさらに激しく、6%下落した。イーサリアム(ETH)とソラナ(SOL)の下落幅は7~8%。

ビットコインは、3月中旬に7万3000ドルを超える史上最高値を記録した時点から約20%下落している。

米にスタグフレーションの懸念

30日午前に発表された複数件の米経済指標がスタグフレーションを想起させ、成長の鈍化と価格圧力の加速を示したため、伝統的な市場も苦戦した。ナスダックはこの日2%、S&P500は1.6%下落した。

LMAX Groupの市場ストラテジスト、ジョエル・クルーガー(Joel Kruger)氏は30日のレポートで、アメリカの経済データがより強く、インフレが高まっていることを示した最近の経済指標により、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待が大幅に弱まり、それがデジタル資産市場の重しになっていると指摘した。

クルーガー氏は、「投資家がさらなる緩和を求めているにもかかわらず、FRBがより長期の政策見通しにおいてより高い金利を維持する方針に傾く必要があるという証拠が引き続き見られる」とし、「米ドルが全般的に人気を取り戻しており、この傾向が暗号資産にも波及しているのが見られる」と述べた。

FTX破綻以来で最悪の月

30日の下落により、ビットコインと暗号資産市場全体は、暗号資産取引所FTXが破綻した2022年11月以来で最悪の月間下落率を記録しようとしている。7カ月連続の上昇が止まる形になる。

協定世界時(UTC)で月末まであと数時間となった時点で、4月の下落幅はビットコインで16%以上、イーサリアムで18%以上となっている。より規模の小さい暗号資産はさらに深刻な調整に見舞われ、アルトコインの筆頭であるソラナ、ドージコイン(DOGE)、アバランチ(AVAX)は今月35%~40%下落した。

暗号資産市場全体の時価総額は18%近く下落し、2022年6月以来最大の下落を記録したことがトレーディングビュー(TradingView)のデータで示されている。

下落はまだ終わっていない可能性

暗号資産レンディング会社Lednの最高投資責任者(CIO)であるジョン・グローバー(John Glover)氏はビットコインについて、「5万ドル台前半の水準まで売り込まれると予想しており、これは買いのチャンスとなるはずだ」と述べた。

夏にあたる月には金利が低下するという季節的影響も価格下落を示唆しているとK33リサーチ(K33 Research)は指摘した。

K33リサーチのアナリスト、ヴェトル・ルンデ(Vetle Lunde)氏は、「5月の始めにビットコインを購入し、9月の最後に取引を終了する戦略を選択したトレーダーがいたとすると、過去5年間の累積リターンは-29%になる」とし、「一方、10月の始めに買い、4月の終わりに売ったトレーダーがいたとすると、1449%という巨額の収益を手にすることになるだろう」と述べた。

熱狂がないとされた香港ETF発売

香港で上場した現物のビットコインとイーサリアムのETFは取引初日を迎えたが、わずか1000万ドル(約15億5000万円)強の取引高という熱気のなさで、これらに注目していた市場参加者を驚かせることはできなかった。

しかし、ブルームバーグ・インテリジェンス(Bloomberg Intelligence)のシニアETFアナリスト、エリック・バルチュナス(Eric Balchunas)氏は、香港のETF市場はアメリカの市場規模と比べるとほんのわずかに過ぎないことを考えると、発売は第一印象よりも成功だったと指摘した。

「国ごとにそろえれば、数字は大きかった」とバルチュナス氏は述べた。

同氏はブルームバーグのデータを引用し、チャイナAMC(ChinaAMC)のビットコインETFだけでも最初の取引日で1億2300万ドル以上(190億6500万円)の資産を集め、過去3年間で6番目の規模のETFの発売となり、すでにETFの規模上位20%に入っていると述べた。

バルチュナス氏はまた、香港上場のETFは「良い時期」に登場し、最近減速しているアメリカの商品からの流出を相殺するのに役立つ可能性があると説明した。

|翻訳・編集:林理南
|画像:CoinDesk
|原文:Bitcoin Tumbles Below $60K, Risking Deeper Pullback as Crypto Markets Endure Worst Month Since FTX Crash