
CoinDesk JAPANを運営するN.Avenueが2023年7月に開始した「N.Avenue club」は、Web3をリサーチ・推進する企業リーダーを中心とした、国内最大の法人会員制Web3ビジネスコミュニティである。
2月27日に開催された年に一度の「N.Avenue club Summit」では、「トランプ2.0とデジタル資産の新潮流 – 日本企業に求められるWeb3事業戦略」をテーマにした特別セッションやWeb3の社会実装に取り組む19社によるプレゼンテーションが行われた。
本記事では、AIやブロックチェーンを活用した教育サービスを手掛けるInstitution for a Global Society代表取締役会長 CEO 福原正大氏と前CoinDesk JAPAN編集長の佐藤茂氏、N.Avenue 代表取締役 CEOの神本侑季による対談と、自民党デジタル社会推進本部事務局次長 web3担当主査塩崎彰久衆議院議員が登壇した特別セッションの様子を紹介する。
「最高で合理的」なトランプ政権
第一部では、福原氏、佐藤氏、神本によるセッションが行われ、トランプ政権が暗号資産業界に与える影響や、日本でのステーブルコインやデジタル証券の可能性について議論された。

福原氏は、トランプ政権下での規制緩和によりWeb3技術と暗号資産市場の成長が見込まれると述べ、資産分散の効率性からブロックチェーンを最適な仕組みだと解説。世界最大の資産運用会社ブラックロックで要職を務めた経験もある福原氏は、「トランプ政権は最高」と称賛する元同僚の声を紹介。「(Web3技術や暗号資産に関して)ようやくまともな政権になった」と考える人が多いと説明し、彼らは未来に対して明るい絵を描いていると答えた。
佐藤氏は、日本でもステーブルコインやセキュリティトークンの拡大が進むとし、米議会がステーブルコイン法案を100日以内に協議すると決定したことなどに触れると、今年が「ステーブルコイン元年」となるだろうと指摘。地方と連携した取り組みなど、国内でのユースケース創出に期待を寄せた。
地方の教育格差解消を目指す「ONGAESHI」の取り組み
慶応大学特任教授も務める福原氏は、都会と地方の教育格差解消を目指すWeb3プロジェクト「ONGAESHI」に取り組んでいる。NFTを活用して学習講座を無償提供し、学習者の転職成功などによって講師やスポンサーに還元される仕組みで、トークンエコノミーを活用することで、本来的には「無償の公共財である教育」の新しい形を模索していると説明した。
ブロックチェーンで学習履歴やスキルを管理し、地方でもデジタル人材の育成ができる環境を整えることの重要性を示した。
「政策の一貫性」が日本の強み
第二部に登壇した自民党デジタル社会推進本部のWeb3担当主査を務める塩崎氏は、アメリカの政策を受けて揺れ動くWeb3市場の中で、「この3、4年は一喜一憂する人も多かっただろう」と述べたうえで、日本の強みは「政策の一貫性」にあると強調した。

「バランスよくやっていきたい」という日本の考え方を示し、Web3政策はこれからのデジタル社会を支えるエンジンとして機能すると解説。同じデジタル分野で活用が広がるAI領域とも「シナジーがある」と話し、物流業界などでのユースケース登場に期待を寄せた。
暗号資産の規制に関しては、この日の予算委員会でも質問したと前置きしたうえで、「規制の枠組みを見直すことは相当の大玉」になると述べ、総合課税から分離課税への移行など法整備を検討していると明かした。税制改革と規制の見直しはセットで考える必要があり、整合性を保ちながら進めていく重要性を強調。金融庁との調整や勉強会を進めており、「来年の法案提出を目指している」と述べた。
物流、医療、エンタメでのユースケース
また、Web3がもたらす可能性についても言及し、地域や社会でのユースケース拡大に期待を示した。例えば、ブロックチェーンを用いたDAO(分散型自律組織)やヘルスケア分野での処方箋、患者データのセキュリティ強化、さらにはエンターテインメント業界での応用など、ブロックチェーンの活用は拡大していると語り、「当たり前のように、ブロックチェーンがさまざまなサービスや製品の中に入っていく時代になっていく」と見通しを示した。

塩崎氏は最後に、ブロックチェーンやNFTを活用した各社の発表を受け、スタートアップから大企業まで民間との連携の必要性を再確認したと強調。党として企業からの政策提案を積極的に受け入れ、引き続き議論を続ける意向を示し、今後のデジタル社会の発展に向けた協力を呼びかけた。
この日参加した19社(一部掲載不可)による事業内容のプレゼンテーションは、追ってお伝えする。
発表事業者 | 発表事業者 |
株式会社北國銀行 | トヨタファイナンシャルサービス株式会社 |
BIPROGY株式会社 | 株式会社HashPort |
株式会社野村総合研究所 | 株式会社シーエーシー |
東急不動産ホールディングス株式会社 | スカパーJSAT株式会社 |
KPMGコンサルティング株式会社 | アクセンチュア株式会社 |
一般社団法人社会実装推進センター(JISSUI) | 株式会社リミックスポイント |
株式会社NTT Digital | 株式会社大和証券グループ本社 |
ケネディクス株式会社 |
|文・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|撮影:多田圭佑
※編集部より:本文を一部修正し、更新しました。3月10日18時16分