三菱UFJが出資の米チェイナリシス、全社の20%をレイオフ

マネーロンダリングの調査などを行う米チェイナリシス(Chainalysis)は11月21日(現地時間)、従業員の約20%にあたる39名を解雇した。同社は利益と商品の販売を優先する。

児童ポルノサイト摘発に貢献

今回の全社的な人員削減では、ほぼすべての部門で従業員が解雇されたと同社コミュニケーション担当ディレクター、マディー・ケネディー(Maddie Kennedy)氏は語った。研究開発部門で最も多くのスタッフが解雇され、従業員数は155名となった。

人員削減により、創業5年のチェイナリシスは「採算性が採れる道」を目指すとケネディ氏は述べた。同社はリソースを商品部門と市場開拓戦略にシフトする。

2018年のいわゆる「仮想通貨の冬」が終わり、市場の指標となるビットコイン価格が2019年に入って上昇を始めて以来、業界では最大級のレイオフとなった。仮想通貨決済企業サークル(Circle)は5月、全体の10%にあたる30名を、さらに最近ではイスラエルのスタートアップ企業コル(Colu)が、全体の30%にあたる13名を解雇した。

チェイナリシスの大規模な人員削減は、同社にとってポジティブに思える一連の発表に続いて行われた。

同社は違法行為の手掛かりを発見するために、公開されている仮想通貨データを調査する。そのような調査サービスの中でも最も良く知られているものの1つは、長年にわたって行われてきたアメリカ政府の仮想通貨関連の捜査に関わる調査だ。

米司法省は10月、チェイナリシスのソフトウエアを使って世界最大級の児童ポルノウェブサイトを摘発、数百人を逮捕し、23人の児童を救出した。

FinCENなど政府機関からスタッフを採用

チェイナリシスは11月15日、マンハッタンで初の業界カンファレンスを開催。その1週間前には、機関投資家向けに新しい仮想通貨データツールを発表した。また4月には、アクセル(Accel)三菱UFJフィナンシャル・グループの連結子会社である三菱UFJイノベーション・パートナーズが運営するファンドなどから3600万ドル(約39億円)を調達してシリーズBの資金調達ラウンドを終えた。

同社は、ジョナサン・レヴィン(Jonathan Levin)氏とマイケル・グロナガー(Michael Gronager) 氏が2014年に会社を設立して以来、これまでに合計で5360万ドル(約58億円)を調達してきた。そしてその資金を、この先も業務を続けるロンドンの研究開発拠点や採用などを、積極的な拡大計画に注ぎ込んできた。

6月に採用された金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)の元職員を含む政府機関の元職員や今月はじめに採用された3人の幹部クラスを含め、チェイナリシスは2月にシリーズBの資金調達ラウンドをスタートした時には、25以上のポジションで採用を進めていた。

同社によると、仮想通貨取引所から伝統的な銀行に至るまで、140を超える企業と20の政府が現在、チェイナリシスの製品を利用している。

しかし、市場の状況が素早い行動を必要としていたとケネディー氏は述べた。今回のレイオフは景気後退の可能性を含めた不測の事態を回避するための予防的措置とケネディー氏は述べた。

「我々は、事業の長期的な健全性にとって、今行動を取ることがベストと考えている」

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Chainalysis image via CoinDesk archives
原文:Blockchain Sleuthing Firm Chainalysis Slashes 20% of Workforce